第五章:SWORD BREAKER/02
『オラァァァァッ!!』
『さあ、見せてみな……おめえさんの実力ってのをよ』
ほぼ同時に飛び出した二騎が、真っ向勝負でぶつかり合う。
壁掛けテレビに映るそんな二人の戦いの様子を、食堂の壁にもたれ掛かりながら……フィーネはじっと見つめていた。
「……始まりましたね、お二人の試合」
そんな彼女の隣にやって来たフレイアが、同じ壁掛けテレビを見上げながら呟く。
フィーネはうむ、と目を逸らさずに頷いて。
「この勝負の行方を、お前はどう思う?」
と、隣に立つ彼女に問うてみる。
問われたフレイアは「んー……」と少しだけ思案した後、
「……ナイトメイルとしてのスペック、単純な強さでいえば、間違いなくファルシオンの方がソードブレイカーを圧倒しているでしょう」
そう、冷静な彼女らしい視点での分析を語ってくれる。
「互いに近距離戦型ではありますが、ファルシオンには背中の翼による機動力と防御能力、なにより例の破壊光線……ファルシオンブラスターがあります。隙は大きいですが、大きな切り札ですね」
「使いどころが問題だな」
「ええ。でも能力的には間違いなくウェインさんが優勢です」
「ふむ……」
「ですが……相手が相手です。この試合がどう転ぶかは、正直言って未知数ですね」
フレイアらしい、本当に冷静で的確な分析だ。
確かに単純にナイトメイルの強さだけで言ったら、ファルシオンの方が圧倒的にソードブレイカーより勝っているのは事実だ。
得意の空中戦……はあの閉所では生かしづらいだろうが、しかしプラーナウィングを盾にすれば防御も十分だし、何よりも……彼にはファルシオンブラスターという切り札がある。
そういう意味では、ウェインに分がある戦いだ。
だが……ミシェルの怖さはあの底知れなさだ。
ここまで楽に勝ち上がってきた男だ。ミシェルの魔導士としての実力は恐らくウェインと互角、あるいはそれ以上な可能性だってある。
それをフレイアも見抜いているからこそ、どう転ぶか分からないと言ったのだろう。
〈……読めませんね、この戦いの行く末は〉
そんな二人の会話の最中、そう言うのはフィーネが首から下げた銀色のペンダント――ジークルーネだ。
〈ボクもそう思うな。ソードブレイカーはとにかく頑丈だからねー、いくらファルシオンでも苦戦するんじゃないかな?〉
と、続けて聞こえてくるのは朗らかな少女の声。
フレイアが左中指に嵌めた、赤い宝石の指輪から聞こえてくるそれは……デュランダルの声だ。
低く落ち着いたジークルーネの声と、少女のような甲高いデュランダルの声。
二人のナイトメイルの女声が聞こえる中、フィーネたちはじっと戦況を見守る。
「ルーネ、お前はどう思う?」
〈……今のところは互角、ですね〉
「デュランダル、貴女はどう感じますか?」
〈うーん……開けたところならともかく、あんな場所だからねー。環境っていう要素に関しては、ウェインくんとファルシオンの方が不利だけど〉
「そこは、上手く立ち回れていますね」
〈だね、やっぱり強いよ彼は〉
〈当然です、ファルシオン兄様も一緒ですから〉
〈あはは、そうだねー〉
「……しかし、ブラスターを撃つほどの隙は見せてくれんか」
ナイトメイル二騎が話す中、フィーネは腕組みをしたままひとりごちる。
呟きながら、フィーネはチラリと隣のフレイアの顔を横目に見ると。
「一応訊いておくが、お前ならばミシェル・ヴィンセントに勝てるのだな?」
そう、確認じみたことを彼女に問う。
するとフレイアは「はい」と即答して、
「ミシェルさんはかなりの強敵ですが、状況を整えれば必ず」
〈現に何度もボクらは勝ってるからね、ソードブレイカーには絶対に負けないよ〉
デュランダルと一緒にそう、力強く断言してみせた。
それを聞いたフィーネはそうかと小さく頷き、
「ならば、安心だ」
と、肩の力を抜いたような仕草をする。
それにフレイアが「どうしてですか?」と問えば、フィーネは「簡単なことだ」と言い。
「お前が勝てる相手……ならば、ウェインは必ず勝つさ」
そう、いつもの自信たっぷりな声と表情で答えてみせた。
……それと同時に、フィーネは心の中で彼に語り掛ける。
(ウェイン、必ず勝て。そして見極めてみせろ……奴がどういう男なのかを、お前のその拳でな)
壁掛けテレビが映し出す、彼の戦いを見守りながら……フィーネは胸の中でそう、呟いていた。




