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ダイバージェンス・フィーネ  作者: 黒陽 光
Chapter-02『金色の姫騎士』
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第四章:ダブルデート・アタック!/03

 そうして訪れた先は――――遊園地だった。

 以前にも訪れた市街エリアの港湾部、あの水族館からほど近い場所にある大きな遊園地だ。

 実はここに来たいと言い出したのはフレイアで、どうやら遊園地というものを一度も体験したことがないらしい。だから折角なら……というフレイアたっての希望で、今日の目的地はここに決まったのだ。

「す、すごいです……! すごく、すごいですっ!」

「いやもう完全に語彙力(ごいりょく)消えてんじゃん……おーいフレイア?」

「そう言うな風牙、仕方あるまい。なにせ初めてのことなのだからな」

「今日の主役のリクエストなんだからよ。早速こんだけ喜んでるなら、来た甲斐があったってもんだぜ」

「? 何を言っているウェイン、今日はあの二人と私たちとのダブルデートだろう?」

「んなこと言ってるのはお前だけだって……」

「まーまー良いじゃないの、フィーネちゃんが言い出したら聞かない性格なの、お前が一番知ってんだろー?」

「いやなあ風牙よ、そもそもお前らは……」

「細かいことは気にするな。それより――行くぞフレイア、今日は目いっぱい楽しむとしよう!」

「はいっ♪」

 入場ゲートから入れば、そこはもう別世界。

 煌びやかな照明に、あちこちから聞こえてくる賑やかな声。いくつものアトラクションが出迎えるそこは、日常とはかけ離れた非日常のテーマパーク。

 そんな遊園地の景色は、フレイアにとって初めて見るものばかり。

 刺激的で賑やかな、初体験の景色に目を輝かせるフレイア。そんな彼女や他二人をフィーネはあっちこっちに連れ回していく。

 まず真っ先に向かったのは、園内でもとびきり目立つ大型の絶叫型アトラクション。

 つまり……ジェットコースターだ。

「はははっ! いいぞ楽しいじゃないか! それもっと飛ばせ―っ!」

「ふわっと身体が軽くなる感じがたまりませんねっ! ふふふっ……楽しいです、とっても!」

「分かるぞフレイア! ……それに引き換え、この二人ときたら」

「――――うおおおおおお!?」

「ぎゃあああああっ!? ちょっやめっ……降ろしてぇーっ!?」

「無理無理無理無理! 俺こういうの駄目だってのにぃぃぃっ!?」

「俺っちもぉぉぉぉぉーっ!! ぎゃああああああああ!?」

「…………この調子だものな」

 昇っては降りての急降下を繰り返しながら、右に左に急旋回しつつ、時にぐるりと縦に一回転ループなんかも交えながら……ジェットコースターはレールの上を走り抜けていく。

 そんなスリル満点のコースターをフィーネとフレイアは割と平気そうな様子で、実に楽しそうにはしゃいでいたが。しかしウェインと風牙の男二人組はというと……こんな風に涙目でビビり散らかす始末。どうやら二人とも絶叫アトラクションの類は大の苦手らしい。

 と、そんな具合にまず最初にジェットコースターを存分に楽しんだ後……次に向かう先はまた定番のコーヒーカップだ。

「うおおおおお回せ回せええええええ!」

「おい風牙この野郎……! 回し過ぎだっての!」

「いかん、これは……流石の私でも酔うぞ……」

「や、やりすぎですよ風牙……っ」

「ふはははは! いつもより大目に回しておりまあああああす!」

「いい加減にしやがれこの野郎……うっぷ」

「待てウェイン! 気をしっかり持て……っ!」

 だが主導権を風牙に握らせてしまったのがマズかったのか、皆で座ったカップの真ん中にあるハンドルをガッと両手で鷲掴みにした風牙が……ぐるんぐるんと馬鹿みたいな勢いでコーヒーカップを回しまくる。

 回る勢いはもうとんでもなくて、周りの景色がマトモに見えないほど。遠心力でカップの外に吹っ飛ばされてしまうんじゃないかってぐらいの勢いだ。

 そんな風にコーヒーカップで風牙に散々振り回された後、今度はお口直しがてらにフィーネが射的のアトラクションに皆を連れていく。

「よおし命中! 見たかフィーネ!」

「……ふむ、こんなものか」

「全弾命中かよ……なーにが射撃は苦手だよ、俺より絶対上手いじゃねえか……」

「えっと風牙、これで良いんですよね?」

「おうおうバッチリじゃん。後はフレイアの好きなように撃ってみろよ」

「クレー射撃ならやったことはあるんですけど、コルク銃で上手くできるでしょうか――えいっ」

「わぁお、ド真ん中だぜ。こりゃあ俺っちもうかうかしてらんねえな……おい勝負だウェイン!」

「……上等だ、受けてやろうじゃねえか!」

「負けた方が今日のランチ奢りだ、手ェ抜くんじゃねえぞ!?」

「バーカ、そんぐらいじゃつまんねえよ。奢るんなら全員分だ!」

「オーケィ乗ったぁぁっ!!」

「…………本当に馬鹿だなお前たちは、相変わらずというか何というか」

 なんて風に、ひとしきり射的で腕を競い合って遊びつくした後。突然始まったウェインと風牙の奢りを賭けた勝負が終わった頃……射的場を離れて園内をぶらぶらと歩いている最中のことだった。

「フィーネさん、あそこは何でしょうか?」

 と、フレイアが園内のとあるアトラクションを指差した。

「あれは……どうやらお化け屋敷のようだな」

「お化け屋敷……?」

「中に色んな仕掛けがあってな、それを使って驚かせる……ホラー系と言ったら分かるか?」

「へえ! 面白そうですねっ!」

「行ってみたいか?」

「はいっ!」

 フレイアが興味を持ったのは、どうやらお化け屋敷のようだった。

 お化け屋敷、言うまでもないがどっきりホラー系のアトラクションだ。これも遊園地では定番中の定番なのだが、どうやら話を聞いて更に興味を持ったらしい。子供みたいに目をきらきらさせながら、フレイアはフィーネに連れられてそのお化け屋敷に向かっていく。

 ――――のだが、男二人組は青い顔をして突っ立ったまま。

「……え? マジで行くの?」

「行くみたいだぜ……」

「な、なあウェイン……お前もさ、そういうこと?」

「でなきゃもう行ってるだろうが……」

「だ、だよなあ……外で待ってようかな俺っち」

「馬鹿言ってんじゃねえ、今に俺とお前も引きずり込まれるぞ……」

「――――何をしているお前ら、早く行くぞ?」

「風牙っ、ウェインさんっ! こっちですよこっちーっ!」

「う、うわあああああホントに呼ばれたああああ」

「覚悟決めるっきゃねえだろこりゃあ……勘弁してくれ」

「ヒエエ俺っちああいうのマジで苦手なんだよお」

「いいから行くぞウェイン」

「風牙もっ、早く行きましょうっ♪」

 油の切れた機械みたく、ギギギと首を動かして互いに見合ったウェインと風牙。己の運命を悟った二人の顔は、もう限りなく海色に近いブルーといった具合に青ざめている。

 が、そんな二人をフィーネとフレイアは容赦なくお化け屋敷の中に引きずり込んでいく。

 もう真っ青な顔の男二人を引きずりながら、入場ゲートを潜ってお化け屋敷の中へ。

 この手のアトラクションだから当然だが、内側はかなり暗い。辛うじて通路や互いの顔が分かる程度の明るさしかなくて、そのせいか余計に恐怖感を煽ってくる。

 そんなお化け屋敷の中を、フィーネとウェインが先頭を歩き、その後をフレイアと風牙が続く形で進んでいく。

 無論タダで済むはずもなく、入って間もなく屋敷の仕掛けが全力で四人を驚かせてきて――――。

「ぬわぉぁっ!?」

「そう焦るなウェイン、ただの作り物だ」

「作り物の方が怖ええんだよ逆に!?」

「なんだ、怖いのか?」

「わ、悪りいかよ!?」

「こんな作り物より、本物のDビーストの方がよっぽど怖いと思うがな……変なウェインだ」

「だからこういうのは作り物の方が怖ええんだよっ! っつーかフィーネお前、俺がこういうの駄目なの分かってんだろ!?」

「ふふっ、そうだったな。すまんすまん、怖いなら私の腕に掴まっていろ」

「わ、わーったよ……」

「……こういう時はびっくりするぐらい素直だからな、お前は」

「しっ、仕方ねえだろぉっ!? 怖ええモンは怖ええんだからよ!?」

「分かった分かった、そう大袈裟に怖がるな。私に掴まっていれば大丈夫だから、な?」

「ったく、後で覚えてやがれ――――ほわああああ!?」

 バタンと起きる仕掛けやら、背中から突然ふわあっと吹いてくる冷たくて気味の悪い風だとか、はたまた至近距離で急にドンと響く爆音だとか。バラエティ豊かな仕掛けが驚かせてくる中を歩いていく。

 そんなお化け屋敷の中で、らしくもなくビビり散らかすウェインと対照的にフィーネはケロッとしている。驚いている様子は欠片もなくて、むしろ次にどんな仕掛けが来るのやら……と楽しんでいるぐらいだ。

 と、その横でビビり倒して震えるウェインを見かねたフィーネが言うと、ウェインは仕方なしといった風に彼女の腕にしがみついてくる。

 ――――実を言うと、ウェインはこういうビックリ系のホラーな仕掛けが大の苦手だ。

 勿論フィーネも分かってはいたが、でも敢えて連れ込んでみたのだ。こんな風なウェインの反応、普段じゃ中々お目に掛かれない。それだけにフィーネはお化け屋敷の仕掛けと一緒に……腕にしがみついてくる彼の子供っぽい反応も楽しんでいた。

 ……と、そんな二人の後ろから付いてくるフレイアたちの方はというと。

「うぎゃあああああああ!?」

「わっ、びっくりしました……センサーで反応しているのでしょうか? よく出来ていますね」

「ひいいいいいいいい!?」

「ふふっ、何かと思えばただの風ですか。ひんやりしていて気持ちいいですね……って、風牙?」

「あばばばばばばばば」

「そ、そんなに怖いんですか……?」

「正直もう気絶しそう」

「困りましたね……えっと、でしたら手でも握りましょうか?」

「うん真面目にその方が良いんじゃねえかなあばばばばば」

「分かりました、これで……どうですか?」

「あ、あー……少しは落ち着いた気があばばばば」

「とりあえず大丈夫みたいです……ね?」

 こっちもこっちで前を行くフィーネたちと似たようなもので、白目を剥いてビビり倒す風牙と、驚かせてくる仕掛けに興味津々な様子のフレイアといった感じだ。

 とはいえ、ビビり度合いでいえばこっちの方が深刻らしい。

 自己申告の通り、今にも泡を吹いて気絶しそうなレベルで風牙は怖がっている。そんな彼を流石にフレイアも見かねて、震えまくっている彼の手をぎゅっと握ってやると……どうやら少しは安心したのか、ビビりはすれども気絶しない程度に風牙の震えは収まってくれた。

「でも風牙ったら、意外と子供っぽいところもあるんですね。ふふっ……♪」

 そのまま彼の手を引いて、更にお化け屋敷の奥へと歩いていくフレイア。

 驚きすぎて今にも気絶しそうな風牙の手を引きながら歩く彼女は、なんだかとっても楽しそうで……だからか顔に浮かぶのは、見たこともないぐらいのとびっきりの笑顔。

 そんなフレイアの様子を、先を歩いていたフィーネはチラリと振り返って見ると。

「…………」

 浮かぶ笑顔に隠した真意を、きっと本人ですら無自覚な意味を……ただ静かに、悟るのだった。

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