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ダイバージェンス・フィーネ  作者: 黒陽 光
Chapter-02『金色の姫騎士』
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第四章:ダブルデート・アタック!/01

 第四章:ダブルデート・アタック!



 それから数日後、待ち遠しかった週末がやってきて。

「こんな感じで、良いのかしら……?」

 遂にやって来たダブルデート、もとい四人揃ってのお出かけの当日。フレイアは自室の大きな姿見の前でくるくると身体を回し、改めて身だしなみをチェックしている真っ最中だった。

 お出かけの日だから、服装は当然いつものブレザー制服じゃなくオシャレした私服の格好。涼しげな水色のオフショルダー・キャミソールの上から水色の薄手のアウターを羽織り、下はふわりとした真っ白いロングスカートといった感じの組み合わせだ。

 最近は気温も上がってきたから、これぐらい薄くて涼しそうな格好でも良いかも知れない。

 まして相手はあの三人だ。特に風牙は気心の知れた仲だし、そう神経質になって気にすることでもない……と思いつつも、何故だかフレイアは姿見の前で何度も確認してしまう。

(私ったら、何を意識しているんでしょう)

 そうして三回目ぐらいの身だしなみ確認をしながら、フレイアは自分の行動を不思議に思いつつ……ひとしきり服装チェックを終えると、やっとこさ部屋を出ることにした。

 小振りなハンドバッグを片手に、洒落たハイヒールを履いて部屋を出るフレイア。

 知っての通り、彼女も学生寮暮らしだ。部屋番号は212号室、ウェインたちとは同じ階で、二人の203号室とはちょっと離れた位置にある。

 ドアを閉じ、キー代わりの端末――学生証代わりの携帯端末でカチッと鍵を閉めれば、待ち合わせ場所の一階エントランスに向かって歩き出す。

 コツコツと靴音を立てて階段を歩き、階段を降りて学生寮の一階へ。

 この時間、平日なら登校する生徒で溢れているエントランスも、しかし休日の今日は人影もまばらな感じ。どうやらフレイアが一番乗りのようで、他の三人の姿は見当たらなかった。

「少し、張り切り過ぎたのでしょうか……」

 左手首に巻いた、細い腕時計――明らかにお高いハイブランド物の刻む時刻をチラリと見てひとりごちながら、フレイアは残る三人がやって来るのを待つことにした。

 エントランスの壁際に小さく背中を預けて、待つことしばらく。

「おーうフレイア、おはようさん。なんだよエラく早いじゃん、てっきり俺っちが一番乗りだと思ったのに」

 手を振りながらやって来た風牙が、呑気な声で声を掛けてきた。

「はい、おはようございます。昨日は楽しみであまり眠れなかったもので……ふふっ♪」

「あらあらまあまあ、フレイアも意外とそういう子供っぽいとこあるんだな」

 微笑んで迎えた彼女にそう言う風牙の出で立ちも、当たり前だが私服の格好だ。

 とはいえ、フレイアほど気合いの入った格好というわけではない。

 風牙の格好は上はパーカーとTシャツに下はジーンズ、履くのは慣れたスニーカーといったラフな感じ。これから楽しいデートに出掛けるというよりも、気心知れた友達と遊びに行くといった雰囲気だ。

 ……まあ、そもそもの話としてダブルデートなんて言っているのはフィーネだけだから、別にこれでも間違いじゃないのだが。

「っつーかアイツらまだ来てねえの? もうそろそろ待ち合わせの時間じゃんかよ」

 そんな格好で現れた風牙は、エントランスの壁掛け時計を見て呆れっぽく言う。

 彼の言う通り、もうじき待ち合わせの時刻だ。

 しかし残るウェインとフィーネが現れる気配はなく、確かにどうしたのだろう……とフレイアも不思議に思って首を傾げる。

 …………と、待ち合わせ時間になって十秒ほど過ぎた頃。

「あーやっと来やがった……おーい、遅せえぞ二人とも!」

 やっとこさ現れた二人を見つけた風牙が、駆けてくる二人に呼びかけた。

「――――悪りい悪りい、ちょいと準備に手間取っちまったんだ」

「うむ、土壇場でウェインが急に忘れ物なんて言い出してな……すまんな二人とも」

「お、おいフィーネ……それは言うなって」

「だが事実だろう?」

 フレイアたちの元まで駆けてきて、詫びるウェインと横でうむうむと頷くフィーネ。

 そんな二人も、言うまでもないが今日は私服の格好だ。

 とはいえ、二人とも以前のお出かけ――風牙との決闘前に行ったあの時とそう違う格好じゃない。

 ウェインはグレーのカッターシャツと黒のスーツジャケットに下はジーンズ、フィーネは袖を折った深紅のジャケットにグレーのキャミソール、下は灰色のスカートと黒のニーハイソックスと焦げ茶のブーツといった感じだ。

 無論、ウェインの懐には白い短剣――ファルシオンが収まり、フィーネの首元には銀のペンダント……ジークルーネが揺れている。

 それは出迎えた二人とて同じことで、風牙は左手首に細い金のブレスレットを着けていて、そしてフレイアは――左中指に、赤い宝石の付いた指輪を着けていた。

 ――――例え休日の楽しいお出かけの時でも、魔導士は己が相棒たるナイトメイルは決して肌身離さない。

 やはり二人もまた、根っこの部分は魔導士のそれに相違ないようだった。

「ふふっ……♪」

 直球で暴露するフィーネと、それにたじたじな様子のウェイン。

 目の前で交わされる、そんな二人のやり取りを楽しそうに眺めながら……フレイアはくすっと微笑むと。

「では、全員揃いましたし参りましょうか。道案内は……風牙、任せましたよ?」

 と言うと、四人揃ったところで学生寮を出ることにした。

 ――――今日は待ちに待った休日、二人と二人のダブルデート……もとい、四人揃ってのお出かけだ。

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