第七章:風の牙と金色の姫騎士と/02
ガラリと引き戸を開けて、ウェインは勝手知ったる顔で教室に足を踏み入れる。
歩きながら見渡すと、どうやら風牙は先に来ていたらしく、既に席に着いていた。戸を開けて入ってきたウェインたちの方をチラリと風牙は横目で見ると、すぐに気まずそうな様子で目を逸らすのだが……しかし、意を決してガタッと立ち上がると。
「……二人とも、この間は世話掛けちまったな」
ズンズンと大股でウェインの目の前まで近づけば、少し目を逸らしつつも……そう言って二人に礼を言う。
「この間? ……ああ、あの時のことかよ」
「気にすることはない、私もウェインも勝手に首を突っ込んだだけのことだ」
「それでも、世話掛けちまったのは事実だ。借りが出来ちまったが……でも容赦するつもりはねえ。週末の決闘……首洗って待っていやがれ」
逸らしていた目を真っ直ぐに向けて、ウェインの顔を見上げながら言う風牙。
それにウェインもニヤリとして「望むところだ」と、闘志剥き出しの笑みで返す中……すぐ後ろでフレイアはきょとんと不思議そうに首を傾げていて。
「えっと、何かあったんですか?」
と小声でフィーネに問うと、フィーネもまた小声で「ちょっとな」と囁き返す。
「お前の居ないところで色々あったんだが……とりあえず、奴の根っこが存外に真っ直ぐなことが分かった、とだけ言っておこう」
「……?」
言葉の意味がよく分からず、まだ不思議そうな顔をしているフレイア。この場の四人の中で一人だけ事情を知らないのだから、まあこういう反応なのも当然といえば当然なのだが。
――――と、そうこうしている内に予鈴のチャイムが鳴り響き。
「……はい、おはようございます。お話はその辺りにして、皆さん席に着いてくださいね」
フィーネたちのすぐ後ろから教室に入ってきた青年、担任教師のエイジ・モルガーナにそう促されたところで……ひとまず、この場は解散となるのだった。




