第8話「手紙」
私はその日を、にこにこ幸せな気分で終えることができた。
全部福川くんのおかげ。
クラスの子に避けられたり、距離を置かれたりした時に、福川くんは「一緒に食べない?」と言ってくれた。
クラスでただ一人、私と向き合ってくれた。
すごくうれしかった。
このまま孤独におちいりかけそうなところを、救ってくれたのが福川くんだったから。
私は、一方的というか、固定的な見方しかしない女子と違って、面白い変わった見方をする男子と楽しい
ランチを過ごした。
人生最高とまではいかなかったけど、福川くんに頼るのも、たまにはいいかな。
私は、鼻歌をご機嫌に歌いながら家に帰ることができた。
しばらく歩くと、家の前の坂にさしかかった。
いつもなら、まるで山にのぼる時みたいになって足取りが重いんだけど、今日はそんな坂さえ山じゃなくて丘をのぼるような気分になれた。
坂の上に、私の家がある。
家の前について、私は「ただいま」と言った。
いつもの習慣なんだ。
まあ、家にはだれも待っていないけどね。
うちは、両親が共働き。
私が高校から帰る時間には、ふたりともいない。
あーあ、お腹すいたな。
おやつ食べたいなって思ったけど、先に二階の自分の部屋に行こうかな。
やりたいことが思いついたから。
二階に上がり、自分の机についた。
机の横から便せんを取り出す。
福川くんに、手紙が書きたかったんだ。
でも、すぐには出さない。
何枚も、何枚も書き溜めて、ちょうどいい、「潮時」って時にだすんだ。