26:国境
ランの目がきらきらしている。昨日との違いがほんの少しだけ恐い。
それに僕にはこれを見てもそこまでの感慨は無かった。
目の前にあるのは、ただの壁だ。
だがランは違うようで、口がずっと動いている。
凄い、綺麗、初めて、うわー、本当だ、白い、隙間が無い、高い、大きい。
そんな事を呟いているようだった。
「ラベンダ、準備はいい?」
サザンカに言われる。勿論、準備はできている。
もしも僕が王子だと知られたら、多分王宮に連れて行かれるだろう。
多分、といったのは、今の王の力を持ってすれば、僕の事はすぐに捕まえる事が出来るはずだからだ。それなのに、捕まっていない。
捕まえる気が無いのか、それとも僕は生簀の中の魚に過ぎないのか。
後者でないことを祈ろう。
「大丈夫。準備はできている」
そう言う。
「それでは、行きますか」
シロツメさんの言葉で、皆が動き出す。
壁沿いにしばらく進むと、アーチ状にくり貫かれた部分が見えてきた。
あそこが関所だ。警備員が何人かいるようだ。
帽子を目深にかぶる。
そのまま関所を通る。
何事も無く、国境を通り抜けた。
ブルベリ国側のラフレシアも、サザンカが言った通りあまり変わらなかった。
「何も無かったわね」
サザンカが呆けたように言った。
僕も拍子抜けだった。声さえ掛けられなかったのは、警備が甘いという事なのかもしれない。
「なになに、何か起こるはずだったの?」
ランがサザンカに詰め寄る。
実は、ランには僕が王から追われているであろう事を伝えていない。余計な心配はかけない方がいいと思ったからだ。
「何でもないわ。ただの噂話よ」
そう言うとサザンカは適当な事を喋り始める。
「ランがいなかった時に聞いたんだけど、どうやら窃盗団がこの町にいるらしいの。それで、その窃盗団というのが六人組なの」
「なんだ、そういうことか」
ランは納得したようで、町の景色を見ることに興味が移ったようだった。




