25:国境の町 後編
いつの間にか眠ってしまったようだ。
目を開けると、周りは薄暗くなってきていた。
そういえば、何で魔法という言葉が大丈夫になったのだろうか。
あの過去も今しっかりと受け止められた。これは、嬉しかったと同時に、悲しかった。自分が、人を、この手で、殺してしまったのだから。それを、認識したのだから。
私はゆっくりと立ち上がり、大通りを見た。
さっきよりも人が増えている。夕食の買い物をする女性がほとんどだった。
大通りに出て、国境の壁が見えるほうに進む。
露天の数も増えているようだった。所狭しと並んでいる。
今ごろサザンカたちは心配しているだろうな。どうやって戻ろうかな。
暗くなり始めた道は、真赤に染まっていた。人の影になっている部分は、真黒くなっている。
私の影を見てみた。
遠くまで伸びるそれは、周りから全てを飲む込んだかのように真黒だった。
影踏み、という遊びを突然思い出す。
鬼というものに扮した人に影を踏まれたら、自分が鬼というものになるのだ。鬼、とは何だったか忘れてしまったが。
私の影は、通り過ぎる人に踏まれている。何度も何度も踏まれている。
別の人の影がかぶる事も良くある。そうなると、境目が曖昧になる。私の影が曖昧になっている。
「ラン」
誰かが私の名前を呼んだ。誰かが私の影を踏んでいる。私は鬼になったの?
「オ、ニ?」
気持ちをそのまま言葉にする。
影を踏んでいる相手は、困ったかのように近づいてきた。
「ラン、迎えに来たよ」
顔を上げる。黒いさらさらの髪の毛、茶色い瞳。私が見ても、美しいと思う顔立ち。
「サザンカ?」
その相手は、私の問に答えるように首を縦に振る。
「大丈夫?」
心配させてしまった。私、誰かと約束をしたはずなのにな。
私が頷くと、相手はにっこりと微笑んだ。
「ラベンダとかシロツメさんとか、勿論、菫さんも大犬さんも、皆心配してるよ」
そうだ。ラベンダだったな、約束したのは。
「宿を取ってあるから、そこに行こう。皆、そこにいるから」
私は抱きついた。
宿に戻った。
夕食を食べた。
何かを話した。
謝られた。
そして、寝た。




