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第2話 民友党本部

 私は、この日民友党の本部を訪れていた。

 民友党。

 野党第一党にして、元与党。山田有房内閣の時の解散総選挙で平和党に敗れて以来完全に万年野党化が進んでいた。政権交代を目標に掲げているもののその後の総選挙においては110~130議席の間をずっとうろちょろしている状態だ。現在は平和党259議席に対して128議席となっている。

 しかし、現在のある程度の勢力を保っているため力になると私は信じている。先ほど万年野党といったが、本人たちには政権交代をする気迫はある。何とかして政権交代をしようと、反対のための反対政策をやめ、対案主義、政策実案能力を高めることだけを現在党として進めている。党の代表や執行部はそういった政策能力、質疑能力などの総合評価でのエリートだけがなれるという実力主義の政党となっていた。まるで受験のように常に同じ政党内でも他者を蹴落とそうと日夜勉強しているのが今の民友党だ。


 「失礼します」


 私はSPを連れて民友党の本部の入り口に駐車する。


 「お待ちしておりました森本委員長。こちらです」


 党の職員の女性に出迎えられて案内される。民友党本部の1階の受付を過ぎて奥にあるエレベーターに乗り込む。そのまま3回へとたどり着き突き当りにある会議室と書かれた看板がある部屋の扉を女性がノックする。ノックして中から返事があったのか確認をした後、扉を開ける。


 「森本委員長、この部屋にて玉城代表がお待ちしております」


 私は、部屋の中に入る。部屋の奥には1人の男性が座っていた。49歳。身長は189センチ。顔の方もなかなかのイケメンであり細い体つきをしている。

 彼こそが民友党代表玉城勇四郎だ。現在の実力主義民友党を作り出した張本人にしてもっともエリートである人だ。


 「森本委員長。わざわざお疲れ様です。どうぞこちらに座ってください」


 私は彼に言うとおりに席に座る。


 「すみません。わざわざ時間を作ってもらってお会いしてくださり」


 私は丁重に挨拶をする。


 「そんなことありません。こちらこそあなたにはお会いしたいと思っていました。何せ、あなたは現在の社会党の中で最も優秀であり現実主義者ですから。あなたは本来は社会党の方針を転換したいと思いなのでしょう。しかし、党内からの反発や社会からの急な政策転換によるイメージダウンを考えた上でなかなか実行することができない。それにお困りの上、社会党の党勢衰退をどうにかしたいと思っている、そんなとこでしょうか?」


 「」


 あいた口が開かなかった。玉城代表の前で失礼であったがすべてを見透かされていて驚いた。さすがはエリート。そして、野党第一党とはいえ200人近くの国会議員の頂点に立つもの、人の感情や思いなど内面に気づくその鋭さを備えていると思った。


 「無言ということは私の推察は正しいということみたいですね」


 その言葉を聞いて現実に戻される。私の方からも素直に話をした方がいいようだ。


 「ええ、さすが玉城代表。お察しの通りですよ。伝統ある政党というのは面倒くさいものですね。その伝統がすべての足を引っ張っているのですから」


 「そうですね。私達の民友党も結党して何年でしたっけ……社会党さんには及ばないものの社会党、平和党、そうでしたあと最古の政党大衆党がありましたに続いて一応4番目に古い歴史を持つ政党ですけど時折伝統というものが足を引っ張ることがありますよ。私がこの党を改革した時も保守派がかなり抵抗しました」


 玉城代表が党を改革した時のことを思い出しながら話していてどこか目が昔の方へと飛んでいた。そう、玉城代表が民友党を改革する時にかなり揉めたことは有名だ。マスコミが好きそうな話題でもあり毎日のように取り上げられていた。与党平和党よりも民友党の方が注目を浴びていたという時期ではないか。ただ、あまりに面白おかしく取り上げられていたため政党支持率を落とすといった出来事もあった。これには民友党は怒った。真面目に議論をしているのに何で面白おかしくするのだということを。マスコミが屑であると玉城代表がまだ代表選挙の時幹事長として戦っているときに思いっきり正面から言い放った。マスコミはその発言を毎日のように報道したが、国民はそのようなマスコミの態度に飽き飽きとしていた。勝ったのは玉城代表だった。このあたりの話は私がするよりも玉城代表から直接してもらった方がいいと思う。

 さて、だいぶ話題がずれた。そろそろ元の話に戻らなくてはいけない。


 「先ほど玉木代表が言っていたように私は社会党の党勢の停滞を何としてもここで止めたいと思っています。そこで野党共闘しませんか? もちろん政策の合意もしますし、一部の選挙区だけでいいですから」


 私はずばり本題を言う。

 玉木代表は私の提案に対してそれほど驚いたような反応はなかった。ただただ厳しい表情だけをしていた。

 しばらく部屋の中は静かだった。私は玉木代表の反応が出てくるまで話し始めることはできなかったし、玉木代表のほうもずっと口を開けなかった。


 「……」


 「……」


 沈黙。ただ沈黙が続く。


 「……」


 「……」


 沈黙はまだまだ続く。

 え、えぇーっとそろそろ何か言ってもらわないと困るのですが……ただ、私からその言葉を発するわけにはいかない。今回の私は頼みに来た側だ。だから、相手を怒らせるわけにはいかない。まあ、これぐらいのことで玉木代表が怒るとは思わないが印象を悪くはしたくない。


 「決めました」


 玉木代表が重く閉じていた口を開いて最初にそう言う。続きの言葉を私は期待した。ぜひとも社会党と協力をします。そういう言葉を期待していた。

 しかし、現実は甘くはなかった。


 「すみませんが、この件については民友党は関わるつもりはありません。やはり選挙で協力するとしたらそれなりの大義名分が必要です。それはつまり政策の合意です。私自身としては森本委員長とだけなら政策協力を結んで選挙協力をするのはいいのですが、ほかの社会党議員の方々は頭が固い。政策の合意が見込めないと思いますので断らせていただきます」


 「」


 断られてしまった。もともと望みは薄かったとしても最初玉木代表が私に対してかなり高めの評価をしていたため期待してしまっていた。しかし、それは私への評価であって社会党への評価ではなかった。だから断られたのだと今になって思い知らされる。

 絶句だ。

 何も言えなかった。しばらく呆然としていた。これからどうすればいいのか考えないといけなかった。また一からやり直しである。

 しかし、少しすると立ち直る。いや、立ち直らざる負えない。今いるのは玉木代表がいる民友党本部の代表室。まずはそこから出ないといけない。玉木代表に対して最低限度のマナー挨拶をしてからでないといけない。呆然としていた状況を何とか乗り越える。


 「すみません。無理な要求をしてしまって。とりあえず今日は貴重な話ができて本当によかったと思っております」


 私は一礼をして民友党の本部から出た。

 ただ、何も私の頭の中ではいい策が思い浮かばないまま……

 その日はこれだけで終わってしまった。

 告示まであと2日。どうにかできないだろうか。

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