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三十三話「リッツの目的」

 あれから、僕だけ噴水公園に残され青宮たち三人はそれぞれ職場へ走り、適当に理由をでっちあげて二週間ほどの休みをもらったようだ。元々あまり仕事をバリバリこなす街ではないようで、空森がうまい言い訳が思いつかず直球で「二週間ほど休みください!」と言ったら「いいよー」と返ってきたそうな。すげぇな、色んな意味で。


「休みとれたぞ、リッツ」

「おー。んじゃそっちにシェラ向かわせるから、転移魔法できてくれ」


 またもや僕たちは一様に首をかしげた。一体何なんだ、本当に。リッツは何を考えている?

 噴水公園で待っていると伝えると、「わかった」とだけ返ってきて通信が切れた。しばらく待っていると、目の前にシェラが現れる。僕がスフルと契約してぶっ倒れ、起きたときのような無防備な恰好ではなく、いつも通りのとんがり帽子にローブだった。あのゆたかな胸が見えないのは少し残念。


「じゃ、行くぞ」


 シェラの転移魔法で、僕たちはあっという間にリッツの城へ……と、思ったらどうも違うっぽい。城は城でも、リッツの城じゃないみたいだ。リッツの城は全体的に白色でお姫様の住むような城だけど、ここは何だか全体的に赤色だ。天井は高く扉もでっかくて見た目だけで重厚感がある。ここ、どこだ?


「よくきてくれたな」

「歓迎しよう」


 リッツの声の次に聞こえたのは、少しかすれた甘い声。所謂イケボってヤツだ。振り向いて、僕だけ動きが止まる。僕の傍にいたスフルが、嬉しそうに笑った。見えていない相手に、駆け寄る、


「こいつ、二代目紅の魔王のバリナリュオイ」

「気軽にバリって呼んでもらって構わない」


 リッツが肩をのせて笑いあっている相手は――金髪でツンツン髪。目つきの悪い……初代勇者そのものだった。


 スフルが「ミゼー」と嬉しそうに駆け寄るが、その目にスフルは映っていない。それでも、スフルは嬉しそうに初代勇者の周りをちょこまかしている。僕は、一人冷や汗をかいていた。獣人の少女に「お母さんが魔族に捕まったから助けて」は魔王と遭遇フラグ。無事にフラグ回収しちゃったよ、僕。


 空森と葛城は初代勇者……今はバリか。バリの姿とその目つきの鋭さにビビッているし、青宮は僕の動きがかたまったのを見て何か考えるように口元に手をあてる。


「よろしく、お願いします。バリ」

「あ、敬語とかいらん。気軽に行こうぜ」


 わっはっはと豪快に笑って見せるが、僕はそれどころじゃない。リッツの目的がわからなかった。どうして僕たちをバリのところに連れてきたんだ? なぜ僕たち(・・・)である必要があった? リッツは一体、何をさせようって言うんだ――。


 僕たちを転移させたシェラは、どこかへ行ってしまった。前西には行ったことがないから行けないって言ってたのに……。西の国にくる用事か何かがあったのか?


 その日は、豪華な夕食が振る舞われた。メイドさんたちは突然やってきた僕たちに訝し気な視線を送るが、バリやリッツがくるとすぐに笑顔に戻る。その切り替えの早さ、分けてほしい。


「たくさん食えよ。うまいぞ、ここの食事は」

「そうそう、遠慮すんなよ」

「何でお前が言うんだよ」

「いいじゃん」


 バリとりッツは実に仲良さげだ。二人は友人なのか? そう言えば、月に一度魔王を集めて食事する会談があるとか前リッツが言ってたな。


 僕はトイレに行くと行って食事会から抜け出し、スフルを呼ぶ。


「なぁ、バリって初代勇者だよな?」

「そうだよ。言ったじゃない、君が巻き込まれるまでは大人しくしててあげるって」

「はぁ? 聞いてないぞ、そんなこと」

「聞いてない君が悪い。あの幻獣魔王、君たちに何かさせるつもりみたいだね」


 クスクスと、スフルが意地の悪い笑みを浮かべる。くそう、五歳児のくせに生意気でムカつく……。そしてやっぱりリッツは僕たちに何かさせるつもりなのか。一体何なんだよ……訳わからん。

 トイレから戻った後、僕は食欲がないと言ってさっさと与えられた部屋にこもった。

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