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三十二話「お仕事探し」

「ふぅ」


 僕はよろよろとベンチに座って一息つく。ぐでーっと全体重をベンチにかけてだらしなく座る。そんな僕を見て、青宮たち三人が苦笑いを浮かべていた。


「で、木崎は迷子の間どうしてたんだ?」

「迷子じゃないし。色々あってリッツの城に泊まったよ」


 嘘は言っていない。僕は確かにリッツの城に泊まった。一晩だけだけど。サネのことは話さないほうがいいだろう。母親に裏切られた、なんてこと僕たちの間ではタブーの話題だ。おまけに、サネが金髪碧眼美女だと知ったら空森が怒り狂いそうだしな。内心くくく、と笑う。


「それより葛城の職場見た後でいいから、お前も仕事探せよ」

「俺たちそれぞれ職場の寮で世話になってるから泊めてやれねーし」

「まぁ、ここは仕事が色々あるから一日探して回れば見つかるだろ」

「わかった。にしても食欲失せそうな街だな、ここ」


 どこもかしも青色一色なのだ。こんなとこにいたらまともに食事がとれそうにない。青宮の働いているパン屋さんも、空森が働いている喫茶店も青一色だったし。あんな中で食事するのはちょっと……なぁ。

 僕の言葉に、三人が気の毒そうな目をした。そしてポン、と肩を優しく叩かれる。


「木崎、ここは食べ物も青一色なんだぜ?」

「俺たちはもう慣れたけど……まぁ、慣れないうちは……な」

「ファイト!」


 なん……だと。まさか食べ物まで青一色? そんなバカなことがあるもんか。大体着色料でも使わない限り青一色になんて……。そうでした、ここは異世界でした。日本にない青色の食べ物があってもおかしくないよな、うん。マジかよぉ……勘弁してくれよ、青一色の食べ物なんて、食べれるか? 僕。青宮の働いてるパン屋さんでは挨拶しかしてないからな。肝心のパン見てなかった。


「ちなみに水は透明だから安心しろ! 食欲が失せた時は水を見て心を落ち着かせるのがコツな」


 どんなコツだよ。食事するコツとかいらねーよ……。


「んじゃそろそろ俺の職場へ、ゴー!」


 僕のげんなりした様子に苦笑してる三人はさっさと歩いて行ってしまい、僕だけ一人後ろのほうをのろのろと歩く。荷物は重いし、街は青いし、何だかなぁ……。


「へーい、ここ俺の職場だ」


 外壁が青一色なこと以外は、普通の会社だった。しかも結構でかい。こんなところに就職できたのか、葛城すげぇなオイ。


「何の仕事?」

「事務」

「へー。可愛いOLさんとかいたか?」

「それがよぉー……あんまり若い子いねぇの」


 露骨にガッカリした様子を見せる葛城に思わず苦笑いする。恐らく葛城は事務イコール若いOLさんがいる! と思ってここに決めたんだろうな。空森と見事に目的がかぶってて笑える。


「じゃ、次仕事掲示板見に行くか」


 青宮の言葉に、首をかしげる。何だ、仕事掲示板って。しばらく歩くと、大きな掲示板がどんと置かれている。雨対策なのか、屋根付きで。そこには様々な紙が貼ってある。近づいてみると、どうやら全部求人広告のようだ。こんな掲示板があるのか、便利なもんだなー。感心していると、ふと一つの紙が目にとまった。そこには「図書館でゆったり働きませんか?」の文字が。


「僕、ここに決めた!」


 ビシッと図書館の求人広告の紙を指さす僕を、三人が呆れたように見た。


「あ、そう言えば」


 図書館に求人広告の紙を持って向かう途中、リッツの言葉を思いだして青宮たちに伝える。空森と葛城はシェラに会えると喜び、青宮は頼み事って何だ……? と首をかしげていたけど、とりあえず連絡取ろう。


 僕は水晶玉を取りだし、リッツに呼びかける。すぐに返事がきて、リッツの姿が水晶玉に映しだされる。


「無事青の街について青宮たちとも合流したよ」

「そか。んじゃ、前シェラが言った約束を果たしてもらおうかな」

「え?」


 リッツはニコニコ笑っている。僕たちはポカーンと口を開けて茫然とする。覚えてたのか、あの約束。

 仕事ナシの僕以外の三人に、リッツは長い休みを取るように言って、休みが取れたらまた連絡してくれとだけ言って、通信は切れた。


 何なんだ……? 僕たちは一様に首をかしげた。

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