EX04 異世界0日 灰魔術師入門その4
「では、次は私の番ね」
魔族界の杉○彩こと、ヤーシャさんがスクリと立ち上がる。
「次は内気法ですね!」
ウカさんの時よりヤる気があるように見えるのは気のせいだ。
着崩したドレスから見える軟体餅の谷間を凝視しているようにみえるのは真剣に話を聞こうとしているだけだ。
ちっくしょう。あと少し下にずれたら先っぽが見えそうなんだが……。
「ゴホン」
ウカさんが咳払いをする。風邪ですか?
「ウフフ。さあ、それじゃあ今度は体内の魔力を操作する方法よ」
ヤーシャさんが全てをお見通しな女の目をしながら、俺の視線には言及せずに説明を始める。
どこまでも小悪魔、いや大悪魔な、子猫ちゃん、いや子狐ちゃんだぜい。
「といっても、若君は体内魔力の操作は自然とできるようだし、コツさえ教えればすぐにできるわ」
そうなの?
「エドは、初対面の時に卓を出してみせたでしょう?」
師匠が口を挟んでいるのは、この仮想現実世界『箱庭』で初めてセドリック師匠に会った時のことを言っているのだ。
その時俺はなんとなく師匠の真似をして、この世界に卓袱台を作ってみたのである。自分の夢の世界だからできるかなっと思って。ラリホー。
「それは貴方が内気法、つまり魔力操作の優れた才があるという証です。魔導師の素質もあると言っていい」
「魔導師?」
「魔導師は魔術研究に携わる者、全般を表しますが、この場合は新魔術の開発者としての素質があるということです」
「んー、魔術師っていうのは誰でも鍛えればその……魔導師? 的な、魔術の開発ってできるんじゃないんですか?」
なんか俺の考えていたイメージだと、鍋をグルグルして怪しげな術を作れるのが魔術師っていうか、魔女ってイメージなんだけど。
「誰でもできるわけではありません。積道であれ、黒魔術であれ、神聖魔術であれ、発現行使するだけでも適正は必要ですが、新しい術理の開発は実際問題として優れた魔力把握が必要です。今までとは違う理を作り出すのですから、理屈や筋道を追うだけではどうにもならない壁というものがあります」
「先程、魔力と魔粒子が見れるようになったのは積道師としての行使の適性がある左証です。魔力視認の優れた『目』を持っていることが積道師としての最低条件。しかしそれは魔導師としての適正とは少し違います。本来現方の存在である我ら人類種が新しい術理起こすには『境界』を超える認知力、または『境界』を超える理解力が必要です」
ふーん、新しい魔術ねぇ。別に興味ないかな。楽できるなら他人様の創ったスキルにフリーライドしてもなんの矜持も刺激されないよ。ユトリな現代っ子だからさ。
「で、具体的にはどういう修行をするんです?」
ウカさんの外気法は導引という体操で外部魔素を体内に取り込む修行法を教えてもらった。
内気法の導引も基本的には同じのような気がするが。
「そうねぇ」
と、ヤーシャさんが自分の顎先に指先を当てて考えこむ。ほっそりとした指が瑞々しい果実のような輪郭をさらに美しく見せる。
うーん、あざとい程自分をよく魅せる仕草をご存知のお姉さんである。
すっかりボカぁ虜だな。
「若君は把握操作はできるようだから、それをより具体的に、明確にって言うのかしらその水準に持っていくのか、それとも自然に呼吸するようにできるのか、やってみないとわからないわね」
「具体的か、自然に、ですか?」
言われたこっちもわかんないです。
「つまりね。今のなんとなくできる体内魔力の操作を、人がするように技術として極めるか、私達魔族がしているように理屈云々を超えて使役できるようになるか、どちらの方向に進むのがいいか、ちょっと今の段階ではわからないということよ」
「はぁ、でもそれってどちらにせよ凄いことなんでしょ?」
「もちろんよ。人としての頂点を極めるか、魔族と変わらぬ存在となるか、どちらにせよ歴史に名を残す魔術師となれるでしょうね」
「お前は我が主の後継者なのだから、当然求められるべき実力がある」
飴のヤーシャさん、鞭のウカさんか。
「でね」
とヤーシャさんが艶やかな中にも可愛らしさを含ませて俺の注意を引く。
「若君の場合は内気法の導引をとばして、とにかく体内錬成の精度と強度を上げる修行をしようと思うの」
「いいんですか、それ?」
なんとなく日本人の感覚として、修行のシの字から順番にやっていかないとダメなような気がするが。ヤーシャさんは西洋的な考えなのかしら。けしからん体しているからそうかもしれん。
「エドの場合は、自然とできていますからね。魔力耐性値によって阻害されている外気法と違い、教えなくとも正誤の判断はつくはずです。外気法の導引は教えるわけですから、それを基に自分にあった内気法の導引を起きている時にでも作っていけばいいでしょう」
セドリック師匠のアドバイスにヤーシャさんが頷く。
「せっかく『箱庭』の世界にいるんだから、私がつきっきりで指導してあげるわ」
おう! つきっきりっすか。ヤーシャさんが言うとつきっきりという言葉もエロく聞こえるな。
「私達、だ」
ウカさんの渋い声のお陰でその度に、下半身に集中しだした血流が全身に散っていく。嬉しいやら哀しいやら。いや哀しいやら嬉しいやら。
「それじゃあさっそくイクわよ」
イッてください!




