凡人の邂逅
「そうゆうことか」
ルージュは、納得したようだが、少し残念そうな表情を浮かべている。
「クオンがこの世界から去る時、《また迷惑をかけることになるかもしれないから、その時は頼む》って言ったのよ。
だから、もう一度クオンに会えると期待してたのに……」
彼女は、ハァーァとわざわざ聞こえる音量でため息を吐く。
そんな彼女に少しばかり憤りを感じているところに、先ほどから後ろに立っていた黄色い鎧の男—アスフィルが隣ある椅子に座り話しかけてきた。
「いやーすまん。すまん。
エリは、クオンのことが大好きだったから、ちょっと期待しちゃってたんだよ。
それでそれで?
この異世界に何をしにきたんだ?」
エリ?あぁエリュテイア・フォン・ルージュだから’’エリ’’なのか……
それにしてもこのアスフィルという男は、ルージュや後ろの青い奴—アスールに比べて好意的だ。
こいつとならちゃんとした交渉ができるだろう。
「この世界には二つの目的があってやってきたんだ。
一つ目はこの娘を回復させること」
俺は説明をしながら紡葉を包んでいたマントをめくる。
紡葉の顔が露わになった瞬間場の空気が凍りつく。
「これは……」
先ほどまで軽快なリズムで会話していたアスフィルも思わず言葉を詰まらせる。
当然だ彼女の顔は、ルージュと瓜二つなのだ。
「彼女の名前は、大鷲紡葉って言うんだ。
昏睡状態になってしまい、俺たちの世界の医療じゃ施しようがなくて、異世界で治療してもらおうと…」
その話を聞いたルージュは、いやに上機嫌な様子で、
「なるほどね〜。だから私がいる世界にきたのか♪
まぁいいわ私に任せて」
「エリは、クオンに頼られて嬉しいんだよ。
それで?二つ目の目的は?」
アスフィルがうまく話を本筋に戻してくれたので、俺はそのまま話を続ける。
「強くなるために……」
そう呟いた俺の声は少し震えていたかもしれない……
俺は拳を強く握り覚悟を決める。
「——俺に……
俺に剣を教えて欲しいんだ」
俺の中には、これから待つであろう苛烈な修行への少しばかりの恐怖と、前回いつ行ったか覚えていないほど久しぶりに心から人に頼んだことへの羞恥の感情の二つがあった。
俺の願いを聞いたアスフィルが、後ろの青いコートを着た男に打診する。
「アスール頼めるか?」
「まぁ。クオンには借りがあるからな…
ついてこい」
「意外とノリノリじゃんか。アスール」
アスフィルが茶々を入れても彼は至って冷静に対応する。
「そんなんじゃねえよ。
クオンに借りを返すためには何かしないと行けないと思ってたんだ。
ついてこい、陵魔」
そういいながらコートを翻し、食堂を出て行こうとするので、慌ててついていく。
後ろからは、
「この子は私に任せてー」
とルージュの叫ぶ声が聞こえた。




