凡人の晩餐1
その後俺たちは、夕食に何を食べるかについて討論した。
今の討論の構図を簡単に説明するとこうなる。
お子様プレートを食べたいので、和洋中すべてがあるマルチなファミレスに行きたい紅依奈
この時間帯に、お子様料理を食べるゴスロリ風の私服を着た女子と一緒にいるところを見られたくないので、イタリアンファミレスに行きたい俺。
勝敗 紅依奈の勝利
勝因「さっき何食べてくって聞いたじゃん。」
負けを認めた俺はファミレスのほうに歩きだし、その右斜め後ろを紅依奈がついてくる。
年下幼馴染みとの関係性と言うのは、公平であっても平等ではない。
幼馴染という条件下では、当たり前だが両者ともに幼いころに出会う。しかしまだ分別がついていない「幼い頃」であろうとも、相手が年下であった場合「お兄ちゃんであること」が求められる。
この「お兄ちゃんであること」は、年下の規範になることや年下を庇護することなどを求められる。
赤子の時からの「世界は自分中心だ」と思っている幻想を、周りよりも早く壊されることになる。それは、幼ければ幼いほど理不尽さを感じることとなる。
一見デメリットだけのように見えるこのルール付けは、年上にもメリットがある。
(念のために行っておくがここでのメリットとは感情的な話で早めに社会のルールが学べるなどという話ではない。)
年上のメリットそれは、幼い頃から信者が手に入ることである。
自分が「お兄ちゃんあること」を遵守している限り、目標や理想像として見られることができるのだ。つまりこちらは、幼ければ幼いほど愉悦感に浸ることができる。
公平と称したのは、このメリットとデメリットが双方に同じ量があるからだ。
しかしこの関係性は成長するとともに、勉学・運動・性格などの様々な要因で崩壊する。
けれども俺たちの関係性は、壊れず熟し腐ってしまった。
俺は、親からの過度の期待に応えるためすべてを満点以上でこなしてきた。
紅依奈は、親に俺を見本にするように言われたうえに、一人では達成困難な事例を全て俺に助けられてしまった。
そしてこの関係性は、二人を腐らせた。
俺は正しさの化け物になり母親を失い、紅依奈は俺の妄信者となりストーカーとなった。
今の状況もそうだ。もし俺が、「何食べてく?」のような選択肢譲渡の言葉発していなくても最終的にはクイナの好きなほうを選ぶし、おれが本当に拒否したら紅依奈も諦めて従うだろう。
ファミレスは、意外にも混雑しておらず、すぐに席に案内された。
席に着くなり店員を呼んだ紅依奈は、お子様ランチとオムライスそしてドリンクバーを頼んだ。
店員は、注文を繰り返した後「かしこまりましたー」と言って去っていった。
すぐさま紅依奈が、
「メロンソーダでいいよね」と聞いてくる。
紅依奈は、俺の返事を聞かずドリンクコーナーに移動し俺用のメロンソーダと自分用のアイスコーヒーを持ってくると席に着いた。
紅依奈は、恰好つけてブラックコーヒーを飲むけどやっぱり飲めませんでしたというルーティーンを披露した後、先ほど河原で使用していたメモ帳を出した。
「昨日のショッピングモールについて調べてみたんだけど、どのニュース記事を写真も私たちが映ってないの、それにネットに出回っている素人が撮影した動画でも移ってないんだよ。」
紅依奈が開いたメモ帳にはいくつか新聞の切り抜きが貼ってあるが確かに敵である白騎士の姿しか映ってない。
原因は、容易に想像がつく。
「多分クオンが俺たちにも認識を阻害する魔法をかけたんだろ。よかったよ、事件の重要参考人として警察に連れていかれなくて。」
すると紅依奈は、人差し指を立て横に振るジェスチャーをする。
「そういうことじゃなくて・・・これを利用できないかって話だよ。」
言葉の真意を理解できていない俺に対して紅依奈はさらに続けた。
「この魔法をちょうどいい感じに調節してもらって、敵と戦うところを配信するんだよ。
ヒーローが世界を救う配信、名付けて・・・・・【Hero Live】」
紅依奈は、その言葉を今世紀最大のドヤ顔と音なしの指パッチンで派手に飾り付けた。




