凡人の修練
13
暗い夜道を歩くこと数分、俺は自分の家の前に立っていた。
家に電気が灯っていることから、クオンと紅依奈は、もう帰宅しているらしい。
ドアを開けると紅依奈が急いで玄関まで来て出迎えてくれた。
「ちゃんと買い物してきたよ」
と言いながらレシートを渡してくる。ざっと見たところ頼んでいたものが購入されているようなので財布から五千円札を出し紅依奈に渡す。
紅依奈が実際の購入額との差額を渡そうとしてくるのでそれを断ると少し面倒くさそうな顔をしたが、不毛な押し付け合いは意味がないと思ったのかポッケにしまったようだ。
すると紅依奈がレシートのある項目を指さして問いかけてくる。
「いわれたとおりに買ってきたけど、こんな大量の小麦粉何に使うの?」
紅依奈の純粋な質問に少し格好つけて答える。
「救うんだよ・・・世界を・・・」
しかし紅依奈は言っている意味を理解できていないようだ。
紅依奈は話題を変えようと
「夕ご飯はどうする?」
と尋ねてくるので、
「今日は外で食べようかなって思ってる」
と答えると、紅依奈は驚いた表情を浮かべ、
「これからまたどこか行くの?」
と聞いてくる。
「小麦粉を実際に使ってみようかなと、思ってな。」
「私もついてっていい?」
などと言ってくるので、「別に構わないけど」と適当にあしらうと「ちょっと着替えてくるから待ってて」といって玄関を出て自分の家に戻っていった。
紅依奈が自分の家に戻った後、俺はリビングに向かった。
するとそこには、ソファーに横になってテレビゲームをしているクオンがいた。
するとドアを開けた音に気づいたのかこちらを向き一言「おかえりー」と叫んだあとテレビに向き直る。
「なぁ・・クオンさすがに緊張感無さ過ぎないか?」
俺が呆れて口にした言葉に対し、
「まあ夜中は襲ってこないだろ。」
と更にのんきなことを言っていた。
まあひとまずいいやとあきらめ
「この前の戦いで使った銃貸してくれ」
と頼むと、二つ返事で「いいよー」と言ってこちらに投げてくる。
それを受け取った俺は、クオンを一人きりで留守番させるのに一抹の不安を感じながらリビングを後にした。
着替え終わった紅依奈と合流した後俺は、近くの河原に向かった。
河原に着くとすぐ紅依奈が先ほどの疑問に対する答えを求めてきたので、得意げに答える。
「前の戦いで俺は両腕を失っただろ。あれは敵に切断されわけじゃなくて、この銃に吸収されたんだよ。」
俺が銃を指さしながら説明すると紅依奈が食い気味に「それで、それで」と言ってくるのでこちらも少し楽しくなりノリノリで説明を続ける。
「つまりこの大量の小麦粉を使う理由は二つ。一つ目は、前みたいに腕がなくなってもこれだけたくさんの細かい粒があればすぐに回復できる。二つ目はこれを空中に散布したら俺の腕を吸収せずともエネルギー弾が打てるかどうか試すためだ。」
紅依奈は得心したようで近くにある岩に腰掛け「ここで見てるから―」と言っている。
俺は、紅依奈と距離を取ると小麦粉の袋を無造作に開け中身を空中にぶちまける。
すかさず銃を持っているほうの手を頭上にあげてトリガーを引く。
すると上空にエネルギー弾が放たれた後、銃が落下してきて頭に当たる。
銃が落ちてきた時点で、結果はわかっているが手の痛みがなおさらにそれが現実だと告げていた。
しかし手を見るとなくなっているのは手首から先だけであり、実験は成功と言える。
もっと効率的に小麦粉を散布できる装置を作れば、いずれは腕を失わずに済むだろう。
小麦粉の袋を開けて手首を近づけることによって手を再生させる。
この欠損と再生を繰り返すこと数十袋、もう小麦粉が切れたので帰宅するため紅依奈に声をかけようとすると彼女が何かをメモ帳にメモしているのに気づく。
「何してんの」
というシンプルな質問に紅依奈は、メモ帳をこちらに見せてきて
「技名を考えてたんだよ。やっぱりこういうのには必要でしょ」
こういう中二的考えには惹かれないわけでもないなどと思いながらも
「帰ろう。何食べてく?」
と先輩風を吹かせてみる。




