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「あら、おかえりなさい。随分早かったのね。もう少しゆっくりしていても良かったのに」
宿へ戻ると、メルダは受付の先にある広間の暖炉に火をつけようと準備をしている所だった。
「手伝うよ。悪いな、忙しいのに抜けてしまって」
よいしょ、とメルダの横にしゃがむとぽいぽいと暖炉に薪を投げ込む。
「・・・どこに行ってたのか、聞いても大丈夫?」
メルダはおそるおそるカインに問いかける。
「ん?ああ。実はな、勇者に呼ばれてて城に行ってきたんだ」
「グレンのところに!?」
メルダはそれを聞いて、朝行き先を聞けばよかったと後悔する。
聞いてたら一緒に行ったのに・・・。
ていうか、なんで言ってくれなかったのよ。
横で俯くメルダを見て、カインはメルダが思っている事をなんとなく悟った。
「悪いな。俺だけこいって話だったからさ」
「そう・・・なの」
「会いたかったか?」
「・・・・別に」
言葉とは裏腹に、メルダはとても残念そうにしている。
カインはそんなメルダを横目で見ながら、まだ自分には気持ちがない事を自覚する。
まだまだ勇者にはかなわねえな。
もっと努力しないと。
いつかメルダの心の中が俺でいっぱいになるように。
「・・・俺、もっとがんばるからさ」
「ん?」
突然何を?とメルダは顔を上げてカインを見る。カインはメルダをじっと見つめていた。その瞳がとても情熱的に見えて、メルダはどきっとする。
「な・・・何?」
「・・・・いや、なんでもない」
そう言うと、暖炉を向いて火をつけた。
暖炉の中の火が赤く燃える。
カインの心の中もまた、暖炉の火の様に赤く燃えていた。