みんなで勉強会
「晃輔、週末、みんなが家で勉強会したいって言ってるんだけどいい?」
夕食後、リビングのソファで寛いでいる晃輔に、隣に座るななが思い出したように尋ねてきた。
「週末?」
「うん」
「因みに……?」
「?……勿論希実たちだけど」
「……」
「晃輔?」
「……希実か」
「え、そ、そうだけど……どうしたの?」
突然、ため息をついて頭を抱えた晃輔に、ななは驚いた表情を浮かべた。
「いや、何でもない」
ななと約束をしてから晃輔は今回のテストは集中して勉強するという事で、休み時間を使い勉強をしていた。
そしたら、それを見ていた泰地や昌平たちが一緒に勉強してもいいかと尋ねてきたのだ。
晃輔はとしては、泰地たちならうるさくないので了承したのだ。
すると、どうやら希実の耳にも勉強会の情報が入ったらしく、希実が晃輔に皆で勉強会をしたいと提案をしてきたのだ。
「ねぇねぇ!そしたら晃輔の家で勉強会するのは?」
「ダメ」
「えー!何で!?」
「お前が居ると勉強会じゃなくてゲーム大会になるだろ」
「うん!!」
「うん、じゃあねぇ」
いたずらっぽく笑う希実に、晃輔はたまらず突っ込んだ。
「のん、今回は諦めよう。晃輔が嫌だって言うなら流石に無理だし」
「はーい……晃輔のケチ」
そう言って、希実はぷくっと顔を膨らませた。
希実は、愛する彼氏である昌平の言う事は素直に聞くので、昌平に任せておけば希実の暴走はある程度収まる。
時々希実の暴走に加担することもあるが。
晃輔そう言われ、不満そうに顔を膨らませた希実は、晃輔にジトッという視線をぶつけて来た。
「意気地なし」
去り際にそんな悪口を言って、希実はななたちがいる所へ去って行った。
どうやら、希実はその時にななの所に行って頼み込んだらしい。
そして、希実に泣き付かれたななは断り切れなかったらしい。
「まぁ丹代くんたちも来るんでしょ?」
「そうだな」
「晃輔、丹代くんに教えてあげれば?」
「別にあいつに教える必要無いと思うぞ。あいつはやる気さえあれば出来るから」
昌平はやれば出来るけどやらないタイプなので程々の成績。
真面目にやれば、容易に晃輔の成績を追い越すだろう。
泰地は、基本的に何でもそつなくこなすタイプで、成績は晃輔よりも高い。
高絋や順哉は普通に勉強が出来るため、必ずトップ10の中に入っている。
晃輔以外、全員がスポーツと容姿に秀でているだけではなく、勉強まで出来るのだから驚きである。
「改めて思うけど、本当に凄いメンバーに囲まれたな」
「そうね。でもそんな凄いメンバーに囲まれたのは、晃輔が凄いからじゃない?」
「……俺は別に、皆みたいにスポーツも勉強も凄くはないんだが」
晃輔は皆みたく容姿に秀でいる訳ではなく、かと言ってスポーツや勉強が出来るか、と言われれば別に可も無く不可も無い。
「卑屈ね……」
「悪かったな。でも、確かにみんな凄いし……何よりみんな良いやつばっかなんだよなー」
「なら良かったじゃない」
「ああ。ほんと良い人たちに恵まれたよ。俺には勿体ないくらいだ」
「ふふ、じゃあそれは晃輔が引き寄せたのね」
「え?」
「だって、類は友を呼ぶって言うでしょ?晃輔が良い人だから、みんな引き寄せられるように晃輔のところに来るのよ」
「俺の何処が……」
「そうやってすぐ卑下しない。晃輔がみんなを良い人だって言うように、みんなも晃輔の人柄を好んで、良い人だって知った上で接してるわけなんだから。晃輔がそんなに卑屈になってたら、みんなのそれを否定することになるのよ。晃輔もみんなと一緒で良い人なんだからだから、晃輔はもっと自信を持って。いい?」
膝に掛けてあったブランケットが落ちている事にも気付かずに、ななは晃輔の顔をしっかりと見据えてそう告げた。
「……ああ、分かった。善処する」
「……良くないけど、まぁ良いでしょう」
晃輔がそう告げると、ななは真剣な表情から一変させて、にこっと微笑んだ。
その笑みに晃輔の心臓がどきりと跳ね、ななを直視出来なくなってしまった。
また、晃輔と同じくななも顔を真っ赤にさせて晃輔の顔を直視出来なくなっていた事に、晃輔は気付いていなかった。
***
『お邪魔しまーす』
週末、約束通りにやってきた昌平たちは十時頃に家にやってきて、声を揃えて玄関から廊下にあがってきた。
「いらっしゃい」
「なな!おはよー!」
晃輔がキッチンで昼ご飯の仕込み中ためななが出迎えると、希実が廊下に上がるなり勢いよくななに抱き着いてきた。
「ちょっと!危ないでしょ!」
「ごめん!可愛くて、つい」
「いやー。美少女同士の馴れ合いっていいなー。眼福」
「「「何言ってんの?」」」
おじさんみたいなことを言う昌平に、男子3人は声を揃えて突っ込んだ。
「ほんとに何言ってんだ」
そう言って、エプロン姿の晃輔がキッチンから出てくる。
「お、晃輔」
「今日はよろしくな」
「おう」
「悪いな晃輔。大勢で押しかけて。迷惑じゃないか?」
「それを決めるのはこれからの行いによるかな」
泰地たちとの会話に一区切りついた所を見計らって、石見や筋乃が持っていた紙袋を晃輔に手渡した。
「藤崎くん」
「これ、つまらない物だけど。今日はよろしくお願いします」
そう言って、石見たち(バカップルを除く)は丁寧に頭を下げた。
律儀に手土産を持ってきてくれる辺り、やっぱり育ちが良いんだな、と思った。
「おう。よろしくな」
「そろそろ真面目に勉強しましょうか」
全員がリビングに入り、適当に4対6でバラけて座ると、ななが真面目な表情でそう告げた。
「それで、希実は今回何が分からないの?」
「ええと、ぜ、ぜんぶだけど……なな、何か言葉にトゲが無い?」
「そんな事無いわよ……それにしても、全部って……」
ななは顔を引きつらせながらそう告げた。
「のんは、まぁ勉強全般苦手だからな。今まで奇跡的に赤点神回避してるし」
「……もういっそ見捨てたら?」
「え!?」
希実はこれでもかというぐらい目を見開いて、信じられないものを見るような表情で晃輔を見る。
「さ、流石にそんなことはしないけど、あんまり時間が無いから真面目にやってほしいかな」
「……はい」
ななはにこりと微笑んたが、その目が全く笑っていなかったため、希実は素直に頷くことしかできなかった。
真面目に勉強をしていると時間が過ぎるのがあっという間で、ふとして時計を見上げると、丁度お昼を過ぎぐらいだった。
石見、筋乃、土井たちは普通にテストで高得点が取れるので心配する必要は無いのだが、問題は希実の方だった。
途中、試しに口頭試問で希実の実力を測ると、中々悲惨な結果で、隣に座るななが頭を抱えていた。
結局、夏休みを楽しみにしている希実に赤点を取らせないようにするため、残り全員で希実に勉強を教える事となった。
幸い、論外の希実を除き、それぞれ得意な教科が異なるため、各々が得意の教科を希実に教えることができた。
「つ、疲れたーお腹減ったー」
そう言って希実は、腹ペコをアピールするかのように自分のお腹をさすった。
「そうね。ちょうどいい時間だし。お昼にしましょうか」
「そうだな……そしたら用意するから机の物片付けてくれ」
晃輔はそう言うと、料理を用意するためキッチンに向かった。
『はーい!』
キッチンに向かった晃輔を追い掛けるように、ななもキッチンに向かう。
「私も運ぶの手伝うわ」
「サンキュ」
今回は合計10人分の食事を作るということで、こんなに大人数に料理を振る舞うのは晃輔にとっても初めてであった。
仕込みなどが大変ではあったが、同時に楽しくもあった。
「あの2人を見てるとさー、やっぱり新婚夫婦みたいだよね!」
希実はキッチンに立つ晃輔とななを見て、2人に聞こえるように呟いた。
「「!?」」
晃輔とななは同時に顔を赤くし、ななは持っていた皿を落としそうになっていた。
「ねぇ?そう思わない?」
「「凄くわかる」」
即答する石見と土井に筋乃は苦笑いをしている。
「みんなは?どう思う?」
「思わなくもないけど、いや、むしろめちゃくちゃそう思うけど……吉橋も石見もあんまり騒いでると晃輔に昼ご飯抜きにされるぞ」
「高絋と順哉も抜きでいいか?」
「すみませんでした」
「いや、何で俺まで!?」
言いたい放題言う高絋たちに、晃輔から容赦のない言葉が投げかけられる。
「ところで、今日のメニューは?」
「チキンとパプリカのハーブグリル」
泰地の問いに晃輔がそう答えると、筋乃がすかさず突っ込んだ。
「ねぇここ普通の家だよね?」
「何で高校生がそんなの作れるんだよ」
「やっぱり晃輔ってちょっと変だよね」
「希実にだけは言われたくないと思うわ」
盛り付け終わった料理を運びながら、ななは呆れたようにそう告げる。
「…………練習すれば作れるんだけどな……」
キッチンで盛り付け中の晃輔はひとりそう呟いた。




