ご褒美の約束
夜ご飯のハンバーグ作りでは、成形などをななやあおいにも手伝ってもらったお陰で、いつもよりも早く作り終わることができた。
良い感じに焼き上がったハンバーグをお皿に移し、そこに茹でた人参とブロッコリーを添える。
仕上げに、肉汁を使って作ったソースをかけて完成となる。
完成したハンバーグを食卓に持っていくと、ななとあおいが協力してよそったご飯と味噌汁が綺麗に並べられていた。
晃輔が持ってきたハンバーグを見て、ななとあおいの2人は同時に、美味しそ〜う!とそんなことを言っていた。
あおいが両親に送るためにスマホで写真を撮ると、手を合わせ、食事を始める際の挨拶をして作ったご飯を美味しく頂いた。
晃輔はハンバーグを美味しそうに食べるななとあおいの様子を見て嬉しくなり、また今度もっと美味しいのを作ってみよう、と小さく意気込んだりもした。
ご飯を食べ終わってあおいが家に帰ると、ななが先にお風呂に入り、晃輔はその後にお風呂に入った。
晃輔が風呂から上がると、珍しくなながリビングで勉強をしていた。
「勉強?」
晃輔がななの近くに座り尋ねると、ななは驚いた表情で晃輔を見つめた。
「そうよ。え、ええ……と……」
ななは晃輔を見るなり、何故か頬を赤らめて視線を右往左往させ始めた。
「……なな?」
「い、いや、なんでも無いです!」
「何で敬語?」
「お願いだから、なんでもないからこっちを見ないでください」
「えぇ……」
晃輔はななの態度に首を傾げたが、本人は言う気が無さそうなので無理に聞くことはしない。
ほんのりと顔を赤らめたななは、自分を落ち着かせるために一度大きく深呼吸をする。
「もうすぐテストでしょ?だからそのためによ。前みたいに遅い時間まで勉強して、無理して体調崩したらまた晃輔に迷惑かけちゃうし……」
「……」
「何よ?また私に体調崩してほしいの?」
そう言いながら、ななは若干不機嫌そうになり、ジトッという視線を晃輔に向ける。
何故突然そんなことを言われるのかは分からないため、晃輔は困惑する。
「……そんなに横抱きをご所望なのか?」
「えっ!?いや、そういう訳じゃ無いから…………まぁ、あれはあれで……結構……」
「ん?ごめん、最後の方なんて言ったか聞き取れなかったんだけど……」
「う、うるさい!」
最初の方は聞き取れたのだが、最後の方はごにょごにょとしていて聞き取れなかったため、晃輔がそう尋ねると何故かななに睨まれた。
「えぇ……」
晃輔にペースを乱されまくったななは、気を取り直して晃輔に尋ねる。
「ところで、晃輔は勉強しなくても良いの?」
「ん?するぞ。この後も少しやるつもり」
「なら、一緒にやりましょう。さっきの続きね。晃輔が分からない所教えてあげるわ」
「おっ、それは助かる。そしたら、ちょっと待っててくれ、持ってくるから」
そう言って、晃輔が自室に勉強道具を取りに行き、リビングに戻ってくる。
すると、さっきまで無かったはずのコップに、いつの間にかココアが淹れてあった。
「いつの間に……」
「ふふ、どうぞ」
「サンキュ」
晃輔は淹れてもらったココアを一口飲むと、口の中にその甘さが広がっていった。
「甘いな」
「そうね。でも、ココアを飲むと大脳皮質を刺激する働きがあるらしくて、集中力や記憶力を高める事が出来るのよ」
「よく知ってるな。流石学年1位だな」
「ふふ。ありがと」
晃輔がそう告げると、ななは嬉しそうな表情でコップに口をつけた。
淹れたてでまだ少し熱いため、ななはふーふーしながら、少しずつココアを飲んでいる。
晃輔がその光景を微笑ましく見ていると、晃輔に見られていることに気付いたななは、ほんのりと頬を赤らめて、晃輔に尋ねる。
「何どうしたの?」
「いや、ココア淹れられる様になったんだな―って、ちょっと感動した」
「……晃輔の中で、私ってどういうイメージなのよ……」
「リアル家事音痴」
「…………教えないわよ」
「すいませんでした」
ななにジト目で見られた晃輔は思いっ切り頭を下げた。
「全く……ほら、始めるわよ。あんまり遅くなると、あおいがうるさいし」
「あはは……そうかもな」
***
2人だけでの勉強会が始まりしばらくすると、疲れて集中力が切れてきた晃輔は休憩がてら、ななに尋ねてみた。
「そういうや、ななは今回も1位を狙うって言ってたっけ」
「狙う、じゃなくて、1位を獲るのよ。絶対に」
ななは自信たっぷりにそう告げるので、晃輔はスゲえな、と感心したように声を漏らした。
「晃輔は?晃輔はどうするの?」
「俺?俺はまぁ前回と同じぐらいか、できればそれより上の順位を目指すつもりだよ」
「もっと上の順位目指さないの?晃輔なら出来ると思うけど?」
ななにそう尋ねられた晃輔は小さく苦笑いした。
「う〜ん、頑張れば出来るかもしれないけど、あんまり目標が高すぎるっていうのもな。なんかモチベーションというか、やる気の問題がな」
晃輔がそう告げると、それを聞いていたなながにま〜っと笑った。
「ふ〜ん」
ななは、まるで悪戯を考えている子供ような表情している。
悪戯を考えている時のあおいの表情と重なり、あっこれ何か企んでるな、と晃輔は思った。
「そしたら、やる気出させてあげようか?」
「……やる気?」
「そう。やる気」
「やる気って?まさか、また勝負とか……」
「流石に今回はしないわよ」
全く私のこと何だと思ってるのよ、とななは何処か呆れた表情で晃輔を見る。
がななはすぐに楽しそうな表情に切り変わった。
「そうね……晃輔が15位以内に入ったら膝枕してあげる」
「はい?」
晃輔は思ってもみなかった方向からの発言に、思わず間抜けな声を漏らした。
「まぁ、ご褒美になるか分からないけどね」
とななは愉しそうに笑う。
「嫌ならやめとくけど?」
どこまで本気か分からないななの発言に、晃輔は慎重に言葉を選んだ。
「……そ、そしたら取れたらしてもらう」
晃輔がそう告げると、自分の頬が内側から熱くなっていくのを感じた。
あまりに自分が欲求に素直なため、恥ずかしさのあまりななを直視することが出来なくなってしまった。
「!……そ、そう。わかったわ……」
どうやら半分は冗談で晃輔にご褒美の提案をしていたらしく、ななは晃輔に負けず劣らず顔を真っ
赤にさせていた。
「……おう」
「そしたら、約束ね」
そう告げるななは、頬を染めてはにかみながら晃輔を見つめていた。




