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打ち上げ2


 クラスでの打ち上げが終わると、最初から? 予定されていたらしい晃輔たちの家での二次会が始まった。


「いや~、やっぱり晃輔たちの家って広いよなー」

「ねー贅沢。晃輔のくせに」


 晃輔たちの家に入るなり昌平と希実が口々にそう告げるので、思いっ切り晃輔の顔が引きった。


「お前等な……」

「めちゃくちゃ言いたい放題言ってるな」


 昌平と希実、晃輔のやり取りを見ていた高絋は苦笑いをする。


「高絋からもなんか言ってくれ」

「いや……まぁ、前来た時も思ったけど本当に広いよな……確かに贅沢かも」

「お前もかよ……」


 高絋が味方してくれると思っていたら、まさかの昌平たち側に回ったため、晃輔は思いっ切りため息を溢した。

 すると、その様子を面白そうに眺めていた石見は小さく笑った。


「ふふ、本当に藤崎くんの周りって賑やかだね」

「……賑やかっていうのか……あれ」

「そうじゃない?」

「ただ、うるさいだけだろ」


 晃輔は疲れたように呟いた。



***



 晃輔たちの家で二次会を始めてしばらくすると、突然土井が静かに口を開いた。


「藤崎くんって実は結構遊び慣れてる?」

「……は?」


 いきなりとんでもない方向からの質問に、晃輔は思わず間抜けな声を漏らした。


「そうなの? 晃輔?」


 ななは驚いた表情で晃輔にそう尋ねる。


「おい、待て落ち着け。目が怖いんだよ……」


 土井が突然変な事を言ったために、ななの目が非常に怖くなっているのだ。


「いきなり何だよ? というか、俺のどこをどう見たら遊び慣れてるように見えるんだ」


 晃輔が尋ねると、土井は晃輔をじっと見つめて静かに告げる。


「う〜ん……カラオケの時、なんか遊び慣れてるなーって……なんとなく」

「なんとなく」

「ふふ、藍子らしいね」


 筋乃はそう言って苦笑いするが、突然妙なことに巻き込まれた晃輔はどう反応していいか分からなくなる。


「ね」

「うん」


 希実と石見も同意見なのか、二人揃って頷いている。


「というか、土井も何でそんな誤解を招きそうな発言をするんだよ」

「面白いから……?」

「勘弁してくれ……」


 晃輔は思いっ切りため息をついて頭を抱えた。

 土井はいつもこんな感じなのだろうか、と晃輔がそんなことを考えてると頭痛がしてくるので考えることを放棄する。


「藍子」


 土井をジト目で見つめるなな。

 すると、石見は土井に近づき、ななと晃輔の方を交互にちらちらと見て、告げた。


「うん、ごめんねなな。誰も藤崎くんのこととらないから。ね、落ち着いて。ほら、藍子も謝って」

「な!?」

「ごめんなな。別に藤崎くん取りたいわけじゃないから安心して」

「なぁっ!?」


 もはや悲鳴みたいな声を上げて、ななは瞬間湯沸かし器のように顔を赤くすると、思いっ切り三人を睨んだ。 


「ど、ど、どうして急に晃輔のこと、とるとかとらないとか、そういう話になるのよ!」


 しかし、顔を赤くした状態のななはいつもの様な怖さや凄みは無く、むしろ顔を赤くして必死に抵抗するななの姿が可愛らしく見えたのか、希実たちは口に手を添えてクスクスと笑っている。


「違うの?」

「違うでしょ!!」


 こてんと首を傾げた土井が尋ねると、ななは思いっ切り叫んだ。

 ななたちのやり取りを見ていた高絋と順哉は、呆れた表情になってななたちを見つめる。


「すげぇな……」

「……ツッコミどころ満載なんだけど……」


 高絋と順哉は口々にそう言う。


「「ねぇー!」」


 高絋たちがそう告げると、希実と石見は顔を見合わせて同時に声を上げる。


「ちょっと! 梨香子、希実!」

「ぷ、大変だな」

「昌平うるさい」

「いや、だって……めちゃくちゃおもしろッ……! ……ねぇ晃輔さんや、照れ隠しに人の足踏むの止めない?」

「照れてない」

「お、足踏んだのは認めたな」

「追い出すぞ」

「うわーこわーい」


 晃輔は完全にふざけている昌平にため息をつくと、希実の方を見て告げた。


「……希実、ちょっとこいつに首輪つけておいてくれないか」

「えー!! ……どんなのが良いかなー?」

「のぞみさん!?」


 晃輔の提案にスマホを開いてノリノリで首輪を探し始める希実に、昌平は悲鳴を上げる。


「晃輔、家になんか良いのある?」

「有るわけないだろ……」


 晃輔は盛大にため息をつくと、隣で固まっている泰地に気付いた。


「……」

「どうした泰地」

「え、あっいや……晃輔も大変だなって……」

「……頼む。泰地まで高絋たちや昌平そっち側に行かないでくれ」


 泰地までそちらにいかれると、とうとう晃輔の味方がいなくなりそうだ。

 ここは晃輔とななのホームのはずなのに、泰地が昌平たち側に回ると、完全にアウェーな気分になる。


「わ、悪い……そ、それで、どうなんだ晃輔」

「どうって……」

「そうだよ、それだよ。しょうちゃんの首輪じゃなくて」

「のん……」

「希実はちょっと黙ってて」


 おふざけを入れてくる希実に、ななは間髪入れずにツッコむ。


「めっちゃ脱線したよね」

「「誰のせいだと!?」」


 楽しそうに告げる石見に、晃輔とななは思わず叫んでしまった。


「ほんと息ぴったり」


 そう呟いた土井を無視して、晃輔は軽く深呼吸して自分を落ち着かせると、小さくため息をついた。


「……昔、あおいとよく遊びに行ってたからな……」

『へえ~』

「なぁ、わざわざ言う事か、これ」

「うん! だってなな」


 希実はななの方を振り返ってそう告げる。


「何がだってよ?」


 希実のそれにななが顔を歪ませていると、筋乃が晃輔の方をじっと見つめてきた。


「ねぇ、藤崎くん。昔はあおいちゃんと遊んでたんでしょ? 今は……ななとは遊ばないの?」

「はい?」


 突然そんな事を言われ、晃輔から変な声が出る。


「ちょっと絢音!?」

「ほら見て、こんな可愛い子と一緒に住んでるのに遊んであげないなんて……」

「梨香子も何言ってるの!?」


 ななは顔を真っ赤にさせながらそう叫んだ。


「せっかく一緒に住んでるんだし……ね〜?」


 石見に続いて希実までそんなことを言い出した。

 希実はにやにやと晃輔を見てくる。

 晃輔はなんとなくだが、その笑顔に背筋が冷たくなった気がした。


『………………』


 突然急変した女子たちのテンションに、全くついて行けない男子たちは、困ったように笑いその成り行きを見守っている。


「なので、ななと遊んであげてない晃輔に罰ゲームを与えるべきだと思いまーす!」

「………………は?」

「「賛成!」」


 突然のぶっ飛び意見に晃輔が反対意見を述べる暇も無く、石見と筋乃は賛成の声を上げた。

 女子たちの暴走をななに止めてもらおうとしたが、頼みの綱であるななはあたふたしていて役に立ちそうにない。


「のん、具体的に何するんだ?」

「……何でお前まで乗り気なの?」


 隣で何故か乗り気な昌平に軽くツッコむと、希実はう〜ん、と唸り声を上げる。


 あれはろくな事考えてないな、と晃輔がそんなことを思っていると、希実は晃輔を見てニヤりとする。


「そしたら、いつも良く頑張っているななの頭を、優しく撫でてあげて」


 語尾にハートマークでも付いていそうな勢いでとんでもない事を口にした希実に、晃輔とななは同時に声を上げる。


「はい!?」

「希実!?」

「なるほど」

「そう来たか」


 高絋と順哉は呆れた表情を隠そうとせず、苦笑いをしている。


「なぁ……俺の意見は?」

「諦めろ。みんなの顔を見てみろ。もう戻れないぞ」

「えぇ……」


 周りを見てみると、女子たちの目はキラキラしていて何故か非常に怖く、逆に男子たちは大変だな、と哀れんだ視線を晃輔にぶつけて来た。

 逃げ場が無いことは確実だった。

 ななの方に視線を向けると、ななはほんのりと顔をあからめて、上目遣いで晃輔を見つめている。


「晃輔は……いや?」

「い、いやじゃないけど……」


 期待と不安が入り混じったような声に、晃輔は心臓がどきりと跳ねる。

 逃げ場が無いことは明白なので、晃輔は諦めて一度大きく深呼吸をする。


 覚悟を決めると静かにななの頭に手を置いて優しく撫でた。


「本当に良く頑張ったな。お疲れ様」


 晃輔がななの頭を撫でると、ななはこれでもかというぐらいに耳まで真っ赤にさせた。

 最初は少し緊張気味のななだったが、晃輔に頭を撫でられてから、へにゃりと瞳を細めた。

 その幼馴染の見たことない表情に、ななに負けないぐらい顔を赤らめた晃輔は思わずななから目を逸らした。


「どうしたの? 晃輔」

「な、何でもない」


 しばらくななの頭を撫でていると、石見がパンッと手を叩いて終了の合図を告げた。


「はい終了。ちょっと二人の世界に入らないでよ、私たちもいるんだから」

「「〜〜〜!!」」

「周りのお砂糖被害も考えてね」


 希実にそう言われて周りを見ると、何故か全員顔を赤くして晃輔とななを見つめていた。


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