表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カートに入れるだけで世界を変える ~異世界通販で文明侵略~  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/31

第八話:値段という刃

翌朝。

町の空気は――変わっていた。

「安い……?」

「昨日より、半分以下だぞ?」

「しかも味は同じだ…うまい……。」

ざわめき。

困惑。

そして――

群がる。

石畳の広場。

昨日と同じ場所。

だが今日は、違う。

「泡の酒、一杯――銅貨三枚!」

その一言で、すべてが決まった。

(始めたか)

俺は離れた場所から様子を見る。

昨日の半額以下。

ほぼ原価無視。

だが――問題ない。

「うおおお! 安すぎる!」

「並べ! 急げ!」

「売り切れるぞ!」

人が、雪崩れる。


一方――

別の通り。

酒造ギルドの店。

「……どういうことだ」

樽の前。

客がいない。

一人も。

「昨日までは……」

店主の額に汗が浮かぶ。

「なんで誰も来ねぇ……!」

理由は単純だ。

高い。

遅い。

そして――

弱い。

「くそっ……!」

拳が樽に叩きつけられる。


昼。

ギルド本部。

「報告しろ」

低い声。

長机の前に並ぶ男たち。

「……売上、七割減です」

「こちらは八割……」

「ほぼ壊滅です」

空気が重い。

中央に座る男――ギルド長が、ゆっくりと口を開く。

「価格は?」

「銅貨三枚です」

「……狂ってるな」

通常の酒の、五分の一以下。

「利益は出ているのか?」

「不明です。ただ――」

一人が言う。

「供給が止まりません」

沈黙。

「在庫は?」

「無尽蔵です」

(あり得ない)

その一言が、誰の頭にも浮かんでいた。

酒は“時間”で作るものだ。

だが奴は――

「時間を無視している」

ギルド長が呟く。

「……化け物か」


夕方。

路地裏。

「やりすぎじゃないか……?」

行商人が顔を青くする。

「この値段、利益出てるのか?」

「出てるよ」

即答。

「嘘だろ……」

「コストが違う」

それだけだ。

この世界と、俺の世界。

構造が違う。

「問題はそこじゃない」

俺は言う。

「問題は――向こうがどう動くかだ」

その時。

影が差す。

「動くに決まってるだろ」

振り返る。

昨日の三人。

だが今日は――数が違う。

十人。

いや、それ以上。

「交渉は終わりだ」

中央の男が言う。

「今日で終わらせる」

(早いな)

だが、想定内だ。

「店を壊すのか?」

「それだけじゃ足りねぇ」

一歩、踏み込む。

「お前ごと消す」

(なるほど)

完全排除。

合理的だ。

「……そうか」

俺はため息をつく。

「じゃあ――試してみろ」

瞬間。

男たちが動く。

だが――

「っ!?」

先頭の男が、止まる。

足が、動かない。

いや――

「なんだこれ……!?」

地面。

粘る液体。

「酒……?」

違う。

「ただの酒じゃない」

俺は言う。

「“使い方”の問題だ」

高濃度アルコール。

揮発。

引火。

「やめろ――」

誰かが気づいた瞬間。

俺は、火打ち石を鳴らした。

――パチン。

一瞬の静寂。

そして――

――ボッ!!

炎が、走る。

「うわああああ!?」

路地を舐めるように燃え広がる。

逃げ場を塞ぐように。

「くそっ……!」

男たちが後退する。

(殺しはしない)

だが――

「近づくなってことだ」

炎の向こうで言う。

静かに。

はっきりと。

「次は、容赦しない」

沈黙。

燃える音だけが響く。

やがて――

男たちは、引いた。


夜。

町の上空。

煙が、わずかに漂う。

「……完全に戦争だな」

行商人が呟く。

「そうだな」

俺は頷く。

そして、画面を開く。

新しい項目。

【蒸留酒】

【高濃度アルコール】

【燃料用途】

(……広がるな)

酒は、飲むだけじゃない。

使える。

いくらでも。

「次は――」

俺は笑う。

「市場ごと、奪う」

飲料。

医療。

保存。

燃料。

すべてに入り込む。

「もう“酒”の話じゃない」

この瞬間。

戦いは次の段階へ進む。

古い酒造は知らない。

自分たちが相手にしているのが――

ただの競合ではないことを。

夜の街。

灯りの中で。

革命が、静かに進んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ