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カートに入れるだけで世界を変える ~異世界通販で文明侵略~  作者: レモンティー


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20/29

第二十話:場を和ませる甘酒

「次の手だ」

「茶は広がった」

リオナが指で机を叩く。

「甘味も回っている」

もう一度。

「だが――」

一拍置く。

「冬が来る」

外は冷え始めていた。

吐く息が白い。


客足も、わずかに鈍る。

「甘いものは……冷えるな」

誰かが言った。

その一言。

リオナは逃さなかった。

「温かくて、甘いもの」

帳簿に新しい欄を書く。

「必要だ」

「それで?」

俺が聞く。

リオナは短く答えた。

「甘酒」

「……酒?」

猫人が反応する。

「飲めるのか?」

「酔わない」

「意味あるのか?」

(その発想は危険だ)


白い液体。

湯気。

ほんのり甘い香り。

「……地味だな」

正直な感想。

猫人が飲む。

一口。

「……あれ?」

もう一口。

「……あれ?」

三口目。

「……なんか、いい。ほっとする。」


犬人も飲む。

「温かい」

「甘い」

「軽い」

短いが正確。

人間の客。

「……優しい味だな」

その一言。

広がるのは――

爆発ではない。

じわじわと。


「これ、朝にいいな」

「冷えたあとに欲しい」

「胃にやさしい」

(方向が違うな)

リオナがまとめる。

「茶はない」

そして――

「“間”だ」

「間?」

俺が聞く。

「食事と食事の間」

「甘味と甘味の間」

「人と人の間」

(また抽象的なことを……)

だが、現実は動く。

貴族の屋敷。

甘味の席。

その前に――

「まずは一杯」

甘酒が出る。

「体が温まるな」

「これから食べるのにいい」


そして食後。

「もう一杯」

「落ち着く」

「重くならない」

(デザート後の締めになってる)


茶は“リセット”。

甘酒は――

「緩める」

リオナが言う。

「緊張を落とす」

「場を柔らかくする」

(確かに……空気が変わる)

さらに――

「酒が苦手な者にもいい」

一人が言う。

それは大きかった。

これまでの宴。

酒が中心。

だが――

飲めない者は常に端にいた。

そこに甘酒。

「同じ席にいられる」

空気が変わる。

「……これは強いな」

俺が呟く。

リオナは頷く。

「争わない商品だ」

甘味は競う。

茶は支える。

甘酒は――場を和ませる。


数日後。

「甘酒を箱で欲しい」

貴族が言う。

贈答用。

冬の定番。

「体にいいらしい」

「温まる」

「優しい」

理由はいくつもつく。

だが本質は一つ。

「ちょうどいい」

爆発しない。

だが、消えない。

「……強いな」

俺はまた呟く。

リオナが帳簿を閉じる。

「三つ揃った」

「攻めの甘味」

「維持の茶」

「調和の甘酒」

「完璧だ」


猫人が叫ぶ。

「これ全部頼んだらどうなる!?」

「やめろ」

遅かった。

プリン。

シュー。

茶。

甘酒。

数分後。

「……もう無理」

机に突っ伏す猫人。

犬人が一言。

「順番が違う」


夜。

店の灯りが落ちる。

外は寒い。

だが――

店の中は温かい。

甘味で笑い、

茶で整え、

甘酒で緩む。

人が居つく。

「……居場所になってるな」

俺が言う。

リオナは静かに頷く。

「それが一番強い」

窓の外。

冬の街。

その中で――

湯気の立つ甘酒が、

静かに広がっていく。

流行ではない。

習慣でもない。

もっと柔らかい何か。

「文化、か」

小さく呟く。

甘く、

温かく、

そして――

長く続くもの。

商売は、

また一段、深くなっていた。

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