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カートに入れるだけで世界を変える ~異世界通販で文明侵略~  作者: レモンティー


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第一話:死んだ先で、買える世界

「……あれ?」

目を開けたとき、そこは病室じゃなかった。

白い。

ただただ白い空間。

ついさっきまで、俺はベッドの上にいたはずだ。

高熱、酸素マスク、苦しい呼吸。

――新型コロナウィルス。

25歳。

まだ何も成し遂げていない人生だった。

「ようやく起きましたね」

声がした。

振り向くと、そこにいたのは――女神だった。

金色の髪。

透き通るような肌。

人間じゃないと一目で分かる存在感。

「あなたは亡くなりました」

さらっと言われた。

「……マジで?」

「ええ。非常にあっさりと」

あっさりって言うなよ。

「ですが安心してください。あなたには転生の権利が与えられます」

テンプレきた。

でも、実感が追いつかない。

「……異世界ってやつ?」

「そうです。剣と魔法の世界です」

うん、テンプレだ。

だが問題は――

「俺、戦えないけど」

「大丈夫です。スキルを一つ授けます」

きた。

ここが分かれ道だ。

チートか、ハズレか。

女神は少しだけ微笑んで、こう言った。

「あなたには――“通販スキル”を授けます」

「……通販?」

思わず聞き返した。

「はい。あなたのいた世界の商品を、この世界で購入できる能力です」

「〇mazon的な?」

「概念としては近いですね」

……いや待て。

それ、めちゃくちゃ強くないか?

「つまり、食料も?」

「買えます」

「酒も?」

「買えます」

「薬も?」

「買えます」

「武器は?」

「買えます。ただし、存在していたものに限ります」

脳内で何かが弾けた。

これ――

戦闘系よりやばくないか?

「ただし制限があります」

ですよね。

「この世界の通貨を使って購入します。また、最初は資金がほとんどありません」

現実的だ。

だが逆に言えば――

稼げば、無限に強くなる。

「……やる」

俺は即答した。

女神は満足そうに頷く。

「では、良い人生を」

その瞬間、視界が歪んだ。

次に目を開けたとき。

俺は、土の上に寝ていた。

空は青く、

空気はやけに澄んでいる。

「……ここが、異世界か」

身体を起こす。

服はボロい。

周囲は森。

完全に詰みスタートだ。

「……で、どうやって使うんだ?」

その瞬間。

視界の端に、見慣れたUIが浮かんだ。

【ようこそ】

「……〇mazon?」

思わず声に出た。

ここは森の中だ。

スマホもない。

電波もない。

なのに、画面ははっきりと浮かんでいる。

「なんだこれ……」

恐る恐る、指を伸ばす。

画面は普通に反応した。

「検索……できる?」

試しに打ち込む。

【水】

検索。

一瞬で、一覧が出た。

ペットボトル。

ミネラルウォーター。

箱売り。

ペットボトル。

浄水器。

ウォーターサーバー。

完全に、見覚えのあるラインナップ。

値段も表示されている。

――この世界の通貨で。

「……マジかよ」

喉が乾いていた。

異世界に飛ばされてまともな水すら確保できていない。

ポケットを探る

千円札が1枚入っていた

「……買えるのか?」

半信半疑で、一つ選ぶ。

【天然水 2L × 6本】

カートに入れる。

そして――

【購入する】

指で押した。

投入口が表示されたので入金してみた。


次の瞬間。

目の前の空間が歪んだ。

「……え?」

空気が揺れる。

そして。

ドン、と音を立てて箱が落ちた。

「うわっ!?」

後ずさる。

そこにあったのは――

見慣れた段ボール。

ガムテープ。

印刷されたラベル。

完全に、“現代の荷物”だった。

「……届いた?」

震える手で開ける。

中には、ペットボトル。

冷たい。

結露している。

「……本物だ」

一本取り出して、飲む。

「うまっ……!」

涙が出そうになる。

安全な水。

それだけで、こんなに違うのか。

「……これ、やばいな」

周囲を見渡す。

ここは異世界。

つまり――

現代の物資が、ほぼ存在しない世界。

「ってことは」

もう一度、画面を見る。

【食品】

【工具】

【医薬品】

【日用品】

なんでもある。

「……無双できるじゃん」


「おい、何してる」

声がした。

振り向くと、村の男が立っている。

「さっきの音、何だ?」

「いや……ちょっと」

俺は箱を隠す。

だが遅かった。

「それ……どこから出した」

鋭い目。

完全に怪しまれている。

「商人か?」

「まあ……そんな感じです」

嘘ではない。

多分。

男は近づいてくる。

「中身、見せろ」

「……分かりました」

観念して箱を開ける。

男は中を覗き――

固まった。

「……なんだこれは」

「水です」

「水?」

一本手に取りキャップを外して渡す。。

「透明な容器……密封……?」

恐る恐る、飲む。

そして。

「……なんだこれ」

目を見開いた。

「腐ってない……どころか、うまい……!」

ざわっと空気が変わる。

「どこで手に入れた!」

「仕入れです」

「どこから!?」

「……遠くから」

間違ってはいない。

男はしばらく黙り――

低く言った。

「売ってくれ?」

(来たな)

俺は内心で笑う。

「もちろん」

「いくらだ」

「……そうですね」

一瞬考える。

現代では安い。

だがこの世界では――

価値が違う。

「銀貨一枚で一本」

男が息を呑む。

高い。

だが。

「……すべて買う」

即答だった。

(成立)

俺は静かに頷く。


その夜。

俺は一人で笑っていた。

「水でこれか……」

画面を開く。

【医薬品】

風邪薬。

消毒液。

抗生物質。

(これ持ち込んだら……)

革命だ。

【工具】

鉄より強い素材。

精密な機械。

(工業も変わる)

【食品】

保存食。

調味料。

(食文化も支配できる)

「……やばすぎる」

これはただの便利スキルじゃない。

“文明そのもの”を持ち込める力だ。

「制限は……?」

画面を確認する。

【残高:0円】

「……あ?」

一瞬、止まる。


その時。

新しい表示が浮かんだ。

【異世界資産を円換算しますか?】

「……なるほど」

銀貨を一枚、手に取る。

それを画面に近づけると――

光に変わって、消えた。

【+1000円】

「はは……」

思わず笑う。

「完全に理解した」

この世界の価値を、

現代の価値に変換する。

そしてその逆も。

「つまり――」

俺は空を見上げる。

「全部、繋がった」

異世界と現代。

物流すら超えて。

「これは商売じゃないな」

小さく呟く。

「侵略だ」

――

カートに入れるだけで、

世界は変わる。

そして俺は――

その入口に立っている。

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