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勇者酒場 〜おっさん元勇者と封印の巫女〜  作者: 古太十三
第一章 勇者酒場

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12/23

12・意趣返し

(ふん。逃げてもどうせ捕まる…暗部を舐めすぎだ)


逃げられるものなら、逃げ続けて欲しいものだが、逃げても教団が存在する限り封印教団暗部に一生追われる。

そして、大抵は見つかり、連れ戻される。

連れ戻された後のことは…あまり考えたくない。


優秀な巫女なら隠蔽の封印術を用いて潜伏できるかもしれないが、それを見つけ出すのもまた優秀な猟犬たちであり、今まで逃げられた者はほぼいないという。


過去の記録にも、数人逃げた勇者や巫女がいたと記載がある。

教団としては大層な醜聞なので、限られた教団員しか知り得ない重要秘匿事項ではあるが…。


しかし、逃げ出すことが許されていないのは勇者と巫女だけである。


一般教団員もさることながら、聖騎士や巫女候補の時点でも教団から抜けることは可能だ。


聖騎士、巫女候補、あとは研究者などは秘匿事項を知り得ていることも多いため、かなり面倒な制約や契約が必要で、なかなか認められないが、改宗や棄教を認めないほど封印教団はカルト教団ではなかった。


昔は秘匿している封印術の流出を恐れ、彼らの退団は一切認められなかった。


しかし、人の口には戸は立てられない…長い年月の中で徐々に封印術は流出してしまい、今ではよほど神髄と言われる封印術を学んだ者以外は退団が認められている。


度合いにもよって、もちろん制約や契約は変わるが…流石に現役の勇者と巫女は認められないようだ。


そもそも、退団できないならウィリアムは今、ここにいない。

まぁ、ウィリアムは色々と規格外で特別であるのだが…。


ある日、退団を申し出たウィリアム。

どんな説得にも頑なに首を横に振るばかりだ。

遂に教団上層部はウィリアムの退団を認める決定を下す。


しかし、元勇者ウィリアムの退団を認めない一部の反対強硬派が、退団するくらいならとウィリアムを暗殺しようとしたことがある。


ウィリアム暗殺未遂事件である。


その時は暗殺に来た連中をボコボコにし、次来たら命令した者を含め必ず全員殺すと脅しつけ帰している。


殺すのも、退団の意思を翻意させるのも無理であると判断した反対強硬派は、本人も大人しくしているようだし、これ以上ちょっかいをかけて本当に殺されるのも嫌なので、無視することに決めたようだ。


その後、ウィリアムはいつの間にか教団から姿を消し、今に至る。

もちろん教団の上層部はウィリアムの所在を把握していたが、ウィリアムとの契約を不承不承守り、これまで表向きは、無干渉を貫いていたようだ。


閑話休題。そういった教団の内情を少なからず知るウィリアムは、彼らが逃げたことに全く驚かない。

予想の範囲内であったからだ。


もちろん、アイリーンはそんな事情は知らされていないのだろう。

真面目で敬虔な少女だ。逆になぜ逃げ出したのか、理由さえ思いつかないのだろう。

道理であのように言い淀むわけだ。


「で、教団は俺になにか用があるってわけだな?」


「はい。先生…特別顧問マクスウェル様から、ウィリアム様を訪ね、教団本部にお連れしろとの指令を受けて参りました」


アイリーンもいつもの調子が戻ったのか、スラスラと答える


それを聞いたウィリアムも考える。

教団には何も申告していないが、当然この居場所は押さえられているはずだった。

たまに教団暗部らしい人物も店に来ていたので、おそらく監視だったのだろう。


(フン…そいつらに書状を持たせたからって、その場で破り捨てるし、例え読んだところで本部なんか絶対に行きやしねぇ。偉そうな教団員が来ても殴り帰しちまう。嬢ちゃんを派遣したのは正解ってやつか…。ジジイめ、俺の性格がよくわかってやがる。忌々しい。)


アイリーンの師匠…マクスウェルに手玉に取られているようで気に入らないウィリアム。


さすがに、この男でも女子供は邪険に扱わない。

ましてや殴り帰すことなんて当然しない。

アイリーンに対しても、最初こそ追い返そうとしていたが、結局、話は聞いている。


そのことを知るマクスウェルが先手を打ってきているのだ。


「それで、今の状況はどんなもんなんだ?」


既に大体の状況予測は済んでいるウィリアムだが、一応擦り合わせのためにアイリーンに聞いてみる。


「【封印体】の解放は5日前に発生しており、おそらくですが、完全覚醒までにはまだしばらくの猶予があるとのことです。しかし、今回の収容違反自体が予測困難な事態とのことで…外れる可能性もあると…」


最後は自信なさげに話すアイリーン。

だがウィリアムは軽く頷く。

自らの予測とほぼ同じであったからだ。

今回は予測できなかった異常事態である。


だが、しっかりと緊急用術式が発動し、完全覚醒を遅らせているのだろう。

さすがソフィアの封印術式である。

さらに、隠蔽の術が発動し、【封印体】を隠している。

こちらは徐々に効果は弱まっていくが、しばらくは大丈夫だろう。


向かっている先も大凡(おおよそ)の見当がつく。

今頃、教団も捕捉しているはずだ。


「猶予はあるが、のんびりもしてられないってことか。しゃあねぇ…明日、本部に向かうぞ」


ウィリアムは、さも当然のように答える。

どのような用件があるのかは大体予測がつくし、アイリーンを受け入れた時点で既に否応はない。

昨夜からウィリアムの腹はもう決まっている。


あのジジイ…マクスウェルはおそらく、ウィリアムがゴネると思っているだろう。

あのジジイへの意趣返しにもなるかと、二つ返事で引き受けたのである。


その後、出発の詳しい段取りなどを話し合い、その日の午前が過ぎていった。


(しかし、本部か…何年ぶりだ?…)


ウィリアムはグラスを拭きながら、過去に思いを馳せる。

ここまで読んで頂きありがとうございます!

もし少しでも「続きが気になる!」「面白いかな?」と思って頂けたら、下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援頂けたら今後の励みになります。

ブックマークも嬉しいです。

よろしくお願いします!


次回からは、ウィリアム過去編です。

気付いた方もいらっしゃるかもですが、scp好きです。

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