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魔導旅記〜魔法を極めるために旅をする〜  作者: 哉瀬
エールヘッジ王国〜エリャグル山郷編〜
20/30

〜とある夢〜

ここでちょっとレンジスたちは野生に還します。2話ほどしたら野生のレンジスたちを捕まえます。物語にも影響を与える話なので、どうかお付き合いください。

 さて、僕らは迷子になっていた。

 なぜかって?

 単純に道を間違えたからだ。

 前にあの街に行ったことはあるとは言ったが、道を完全に覚えていたわけではない。

 ただ単に拾われて、連れて行かれた先があの街だっただけなのだ。ただ、聖霊と繋がりのあるエルフも定住している土地なので、アルファに聞いてみたところ、

「知りません」

 と一蹴された。なんで聖霊王が知らないんだよそんな街を。エルフと友好的じゃないのかと言ったら

「私は世界を管理するためにずっと執務に勤しんでいただけです」

 とか言ってきた。もしかして...

 なんだかんだ言っている間にさらに迷ってきた。巷で噂になっていたのだが、ここら辺の森は一度迷うと二度と出られないと聞く。

 ...

 ......

 .........

 ............

 ...............

 もしかしなくとも僕ら、詰んだ?





 森に迷って一ヶ月。

 僕らは野生の力に目覚めた。

 ...なんてバカな話は置いておいて。

 一ヶ月でみんなの頭が狂ってしまった。

 特にルナとサクラ、フラスとフェリス、リエルが酷い。

 もはや何の言語を話しているのか理解できない。

 先の5人となら理解できるようだ。新しい言語文明を創造しないでもらいたい。

 リエルが野生に還っているのが意外だった。もう少し耐えるのかと思ったが、そうでもなかったようだ。

 全員が動物魔物をうまく解体できるようになったのは予想外の収穫だった。

 しかし現実はそうは行かない。

 オルンたち、おとなしい組もだんだんと普段の行動に異常性が出始めてきている。

 そして唯一まともだったリーフェも野性味を帯びてきた。

 ミリスは僕と並んで彼らを見つめている。

「...こうしてみてみると、哀れですね」

「やめたげてよ。母親に言う言葉じゃない...」

 リーフェはなんとか正気を保っているものの、前述の通り野性味を帯びてきている。

 いつもの天使や聖母みたいな雰囲気はこの森に迷ったことによってどこか飛んでいってしまったようだ。

 だがしかし。僕はちゃんと見失っていないようだ。

 万事よし。と言うわけにも行かないんだよなぁ...

 こいつら、どうやって目を覚まさせたらいいんだろうか...

 と言うかそもそもどうやってここの森から出よう....

 課題は山積みだった。



















 その日の夜、レンジスはとても懐かしい夢を見た。






















 ー某国某所ー



「神へ祈っているのかい?信心深くて、我々には到底真似できないよ」

「神は正しく祈っているものは見捨てはしません。それに、あなたも神に祈っている真っ最中ではありませんか」

 女はそう言う。

「ははは、流石は聖女様(・・・)ですね。我らが聖女様の信心深さは神々も喜んでいることでしょう。」

「いえいえ。まだまだです。この国にはまだ困っている人がたくさんいる。その人たちのためにも、私は毎日の神々への祈りは続けないといけないのです」

 聖女、エルナはそう言う。対して声をかけているのは聖女お付きの勇者、勇爵家長女のアーシャである。

 この国の勇者というのは常日頃から聖女の護衛として、降り注ぐ悪から聖女をそばで守り抜くというものである。

 代々勇爵家は聖女の護衛を務めている。

 そして勇爵家は国の危機の時に、国王の元で帝剣を振るう。それが、勇爵家の使命。勇爵家の義務なのだから。

 勇爵家、ランベルク勇爵、その長女であるアーシャ・ル・ランベルク。彼女は双子の妹である。長男のカルア・ル・ランベルクは放蕩勇者と言われている。誰もが、長男に期待しているが、カルアは何もしようとしない。

さらには最年少で帝剣を抜けたというのに遊んで暮らしているばかり。聖女を守る気がない勇爵家の落ちぶれ勇者と言われ、バカにされ続けてきた。それに変わって期待されたのがアーシャである。彼女はカルアと同じ年で帝剣を抜いたものの、聖女を完璧に守り続けてきた。そして彼女のことを人々はこう呼ぶ。

『聖光の勇者』

 と。

 事実、彼女が戦場に駆り出されるだけでエルリア王国の勝利は揺るぎないものとなっていた。

 アーシャも、エルナとの時間を守りたい、王国の平和を守りたい、その一心で王国の戦争に協力していた。

 時の国王は八善君主と呼ばれ、エルリア王国は最盛期を迎えていた。もちろん王子王女たちも優秀で、それぞれが国民を守る使命のもと、役割を果たしてきた。いずれは誰かが国王になるのだろうが、それを抜きにしても誰が国王になってもいいほどの功績を示していた。特に第二王子ののオスカー・フレイ・エルリアと第一王女のアイリス・フレイ・エルリアは抜きん出て優秀であり、国民はどちらかが必ず王になると論争を繰り広げていた。

 そんな中、オスカーはカルアと会っていた。彼らは幼馴染であった。カルアはオスカーにとっては数少ない友達であり、唯一砕けた口調で話してくれる存在であった。




「やぁ、今日もここでサボっているのかい?」

「さぼってねーよ。戦略的撤退中だっての」

「また追われているのかい?大人しく稽古すればいいのに」

「やだね。俺にはちゃんとした人生計画があるんだ」

「そのために逃げているとでもいうのかい?」

「そうだ。あんの馬鹿妹、なんで俺の壮大な夢を理解してくれない...」

「ははは、そっちも大変そうだね」

「馬鹿野郎!俺はいつも俺の夢のために必死なんだぞ!それなのにあのミスリルよりも固いアーシャは...」

 言いかけた次の瞬間。

「へぇ...私のことそう思ってたの?馬鹿ルア」

「お兄ちゃんと呼べ!」

「誰がそう呼ぶものですか!全くいつもいつも...なんで優秀なのにその力を極めようとしないのですか!」

「力を見せつけたら窮屈になるだけだ!俺にはな...!」

「壮大な人生計画があるのでしょう?それを叶えるための手助けになるはずですよ」

「嘘つけ!お前のスパルタ稽古はもう結構だ!」

「いやでもついてきてもらいますよ...」

「嫌だぁぁ!!助けてくれオスカー!」

「?!オスカー殿下。今日も御壮健で何よりです」

「堅苦しい挨拶はいいよアーシャ。目の前で兄妹喧嘩も慣れてきたからね。いつも通りの方法でいいよ。僕が結界を張っておくから」

 オスカーは結界魔法に特化していた。都市を囲えるほどに広大に、あらゆる貫通力のある攻撃も防ぐほどに堅固に結界を張れることから、第一王女に並び国王の最有力候補の1人として数えられている。またその派閥も広大で、王都周辺の都市を収める貴族、辺境で敵を迎え撃つ貴族たちからの支持を受けていた。

「さて、馬鹿ルア...覚悟はできてる?」

「お兄ちゃんと呼べと言っているだろ!あと覚悟などさらさらできてはいない!」

「稽古をサボった罰を受けなさい!裁きの光剣(パニッシュアルク)!」

 結界内が光に包まれる。

 光が収まったあと、出てきたのはボロボロのカルアを引き摺るアーシャだった。

「それでは、失礼します。殿下」

「堅苦しいよ、アーシャ。カルアみたいに砕けた口調で話してもいいんだよ?」

「そうはいきません、殿下。私が砕けた口調で話しては各地の貴族が殿下を軽視してしまいます」

「まあそういうことでいいよ。それじゃあ、また次の機会で」

「はい、殿下。それでは失礼します」

 そういうとアーシャは目にも留まらぬ速さで去っていった。

「...姉上もアーシャと話さなくても良かったのですか?」

「構わんだろう。私がきたらアーシャが萎縮してしまう」

 僕が守りに特化しているとあれば、姉上、アイリス殿下は攻めに特化していると言えるだろう。

 アーシャと同じく、戦場に立つだけで戦勢が有利になる人だ。欲深い貴族から支持を得ているが、姉上はその貴族たちをゴミを見るような目で見ている。姉上が王になれば、真っ先にその貴族たちが粛清されるだろう。だがそれくらい姉上の戦場での強さは圧倒的と言える。姉上が総数100の烏合の衆を率いるだけで、その戦力は10000に匹敵する。謀略も得意としているため、軍師も務まる。さらに政治にも精通しているため、国政にも口を出せる。まさに完璧とも言える才能を兼ね備えている姉上は、外見もいい。父上から公式に今の姉上に婚姻の話を持ち出すものは処刑するというほど愛されている。人当たりもいいので、姉上と仲良くする人は多い。僕とは戦場の得意分野だけは違うがよく似ている。

 だから僕は王座をめぐって姉上とは争いたくはない。

 僕は姉上の下で力を振るうだけでいい。それで十分。

「何を考えている?おおかた私に王位を譲りますだろうがな」

「ははは、姉上には隠し事はできませんね」

 姉上には隠し事はできない。それは誰もが知っていること。なぜか姉上には考えていることが見破られるのだ。だからこそ自身の部下に謀反や反乱、暗殺を引き起こそうとしている者がいても問題ない。すぐに見破り、追放できるからだ。

 そんな姉上を僕は尊敬している。そして、僕は姉上のそばで政治を行いたい。そう思うのだった。




「はぁ...どうしてお兄様はこんなに...」

 気絶したカルアを担ぎながらそうため息をつくアーシャ。

「お兄様がちゃんとしないと...私は...」

 口を紡ぐ。

「安心して...オスカーに告白できないじゃない...」

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