■第22話 化学準備室で
■第22話 化学準備室で
『昨日は、ちょっと感情的になりすぎた・・・サクラ、ごめん・・・』
朝イチで、リンコがサクラの元へ駆け寄りそう言った。
リンコになんて声を掛けていいものか、考えあぐねていたサクラ。
正直その言葉にホっとしていた。
『いや、あたしも。ほんと・・・ごめん。』
その後は、互いに若干気を使い合いながらも険悪な感じはなく
このまま元通りになれるような気が、サクラはしていた。
帰りのホームルームが終わり、放課後。
ハルキがリンコに声を掛けた。
『キノシタさん。ちょっといいですか?』
その瞬間、ピリリと空気が張り詰める。
呼び掛けられ、一瞬リンコがサクラに目を遣った。
そしてすぐ顔を逸らすと、ハルキに続いて教室を出て行った。
サクラはそのふたりの後ろ姿を、心配そうにじっと見つめていた。
『サクラー。2ケツしてっか?
サクラ?おーい、サクラー・・・?』
サカキの声だけが、空回って虚しく床に落ちた。
化学準備室にリンコを促した、ハルキ。
イスに深く腰掛けると、パイプイスを取り出して広げ、
リンコに座るよう勧める。
『サクラに。黙ってるように言ったのは、俺だから。
だから悪くないんだよ、アイツは。』
すぐさま本題に入ったハルキ。
いつもの”センセー口調”が抜けている事に、なんだか違和感を感じる。
リンコには嫌悪感すら感じるほどだった。
『家が隣同士で、親同士仲良くて、アイツが産まれた時から一緒だから
まぁ、ほとんど兄妹みたいなもんで・・・』
黙って真っ直ぐハルキを見ているリンコ。
『ガッコ側に”この事”言わなかったのは、
正直、面倒だったのと、変な勘繰りされんのが嫌だったのと、
あと。だから何?って思いと・・・』
リンコは無表情でまだ真っ直ぐ見つめたまま。
『俺は教師だし、それで金もらってるし、
一応・・・これでも分別あるオトナのつもりだし、
アイツを特別待遇する気なんか、ハナっから無いし。』
そのハルキの言葉に、リンコがやっと口を開いた。
『で、結局。
カタギリ先生は私にどうしろって言うんですか?』
キツめの口調に、ハルキがちょっと頬を緩めた。
『ん~・・・言いたいなら言ってもいいけど。
でも、言わないでいてくれんなら、正直、有難いかなー・・・』
『そんなに自分の保身が大事ですか?』
ハルキを睨む。
『あー・・・違う違う。』 頬を緩め、笑う。
『面倒なことになんのはアイツだから・・・
もし、仮に。仮にだよ?化学の成績上がったりしたら
まぁ、アイツ、バカだから有り得ないけど。
疑われんの、アイツだろ?
イチイチ、アイツがカワイソーんなんだろ?だから。』
リンコを真っ直ぐ見つめる、ハルキ。
『アイツのこと大事だと思ってくれてんなら、
アイツの為に、頼めないかねー・・・』
すると、その言葉を聞いてリンコが睨んで呟いた。
『・・・一番に、大事だと思ってます。』




