■第21話 相談
■第21話 相談
夕飯後、ハルキの部屋の前に立ちドアノブに手を掛けて、一瞬留まったサクラ。
大きくドンと1度、拳でドアを叩き『センセーエ。』 声を張り上げる。
すると、すぐドアは開きその隙間から顔を出したハルキが、不思議そうに見る。
ヨレヨレのTシャツにパジャマズボン姿のサクラ。
『なん? ”センセー” はガッコに置いてきてっけど。』
そう言って、ドアを大きく開放したハルキもまた、
気の抜けた部屋着のTシャツとハーフパンツ姿で。
サクラが背を丸めて、ダルそうに足を踏み入れた。
ハルキのベットの上に、うつ伏せで寝転がり不機嫌そうに
バタバタとバタ足するサクラ。
それを横目に、ハルキはイスの背もたれを抱えるように座って、
キャスターをクルクル回転させている。
『どした?』
バタ足に疲れたサクラは、死人のようにうつ伏せのまま動かない。
『なに?なんかあった?』
クルクル回転するのを止め立ち上がると、ベット脇に腰掛け
覗き込むようにサクラの様子を伺うハルキ。
『見たってさー、ハルキを・・・。ウチに入るの。リンコ、が。』
『ありゃ。』 ハルキが呑気そうな声を上げる。
『めっちゃキレられたー・・・
なんで隠してたのよー!って・・・』
ハアァァ・・・ 溜息が毀れる。
『てか、さ。
あたしが悪いの?ねぇ・・・
元々はハルキでしょ?
・・・それも違うか。
教育委員会?かどっかに文句ゆえっつーの・・・
おまけにさ、
中途半端な態度が悪い。だか
なんかイミフな事までゆわれてさー・・・だから。』
散々文句を言って、サクラがガバっと起き上った。
『だから?』
『リンコに優しくしてやって。』
『・・・は?』
『ちょびっとだけ、ちょびっとだけ他の子より
優しくしてあげればいいんだってば・・・』
『え?なに。全然イミ分かんないんだけど。』
『ゃ、意味とかいいからさー・・・』
『いや、つか。そんなこと教師がしちゃダメだろ。』
『そーだけどー・・・分かってるけどー・・・だってさー・・・』
『だって?』
『だってー・・・』
『だって、なに?』
『いや。あの、多分・・・好きなんだよ、リンコ。
・・・ハルキの事・・・。
だから、隠されたことめっちゃ怒ったんだよ。
それ以外ないっしょー・・・』
口を尖らし、ベットの上に胡坐をかくサクラを、まじまじと見つめるハルキ。
『お前、それ。本気でゆってんの?』
『だって、他にどーすれば・・・』
『例えば。
ほんとにキノシタが俺に好意があったとして、
お前に言われたまま、
俺が他の子より優しくしたとして、
で。なに?それからどーすんの?
てか、それでキノシタが喜ぶの?』
『知らないよー・・・そんなの。あたしに訊くなよ』
『お前は母ちゃんの腹ん中に、
デリカシーっつうもんを忘れて来たのか。』
ハルキの強めの言葉に、頭をうな垂れてふくれっ面のサクラ。
『だって・・・あたし、どうしたらいいのさぁ・・・。』
ベットの上で体育座りをし、細く小さい体をコンパクトにまとめたサクラ。
膝がしらに額をぴったりくっ付け顔をうずめ、表情は見えない。
『まぁ、取り敢えず。お前はなんにもすんな・・・
つか、むしろ、しなくていーから。』
そう言って、手を伸ばし、サクラの後頭部をガシガシと乱暴に撫でた。
体育座りの膝にうずめた小さな頭が、コクリとわずかに頷いた。




