第十条
「好きにしていいですよ」
怠そうに口にした妹子様は、即座に眠りに付いてしまう。本当に寝ている訳じゃないだろうけれど。
さて、いつまで我慢して寝たふりを続けていられるか。
妹子様を今度こそ気絶させないように、理性を失わないように努力しないと。焦らし焦らして、妹子様を最高に気持ち良くさせて。
自分も最高に気持ち良くなって。
私はそんな方法を学んできたんだ。それを無駄にする訳にはいかない。
「痛く、しないで……」
後ろから抱き締めて妹子様の服の中に手を伸ばすと、高く細く弱々しい声で、消え入るような声で妹子様はそう言った。
それはきっと、口にするつもりのなかった声なのだろう。
可愛い、可愛い、可愛い、可愛過ぎるんだよ! 可愛過ぎるんだ。
もう既に理性を失って獣へと変わってしまいそうだったけれど、私はなんとか耐えた。どうせ苦しめるなら、苦しむその姿も楽しみたいしさ。
妹子様の笑顔は素敵だけれど、虐められて涙目になる妹子様は衝撃的なまでに可愛い。
「痛くないから大丈夫です。怖がらないで? 楽にして下さい」
安心させるように、私は妹子様の耳元で囁いて唇を落とした。
それだけで真っ赤になる妹子様は、本当にいつまでも子供のようなお方。
「そんなこと、言われても」
一生懸命我慢するつもりだったんだ。
そのつもりだったんだけど、胸元に太子の手が侵入してくると、その瞬間急に不安になっちゃったんだ。
いっつも、太子は優しくしてくれる。いっつもいっつも、太子は僕に優しい。
だからこそ僕は、性行為をするのが嫌なんだ。
太子と一つになれるのは、そのこと自体は勿論嬉しい。だけど優しい太子が欲望に塗れて、豹変してしまうのが怖くって。
受け入れてくれる太子が、僕は大好きなのに。
「妹子様、泣かないで下さい。そんなに嫌ならば無理しなくていいのですよ? 私が悪かったから、泣かないで下さい。やっぱり、やっぱり私は妹子様を汚したくありません」
いつの間にか、涙を零していたらしい。
それに気付いた太子が、僕の服の中から手を引いて、大きな体で優しく温かく包み込んでくれた。
わざわざ好きにしていいって、誘うようなことを言ったのに。それなのに、今更嫌だなんて欲求を溢れさせても仕方ないよね。
それでも我慢してくれるんだから、太子は僕を想ってくれる優しい人。
「今宵は添い寝して頂ければ満足です。ただいつか、共に夜を過ごせるようになって下さいよ? 私は待っていますから、無理しないでね」




