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心の距離  作者: 桜井雛乃
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十と二つ目

 もうすぐ倭に帰れる。確かに隋はいいところだけれど、やっぱり僕は倭が好き。正しくは、倭にいる聖徳太子と言う男が好き。彼と手紙でやり取りする日々も好きだけれど、実際に会いたいと思うの。僕にとって彼は、本当に大切な人だから、隣にいたいと思う。

 どうやらかなりのお偉いさんになることが出来たみたい。僕は無理難題を押し付けただけ、ただの冗談のつもりだったの。それでも彼は、本当に全てやってのけたみたいなの。びっくりだよ。


 話によれば、かなり美しさを求めている様子。だから僕も帰ったときに笑われないよう、美容に気を遣った。そしてその努力は、決して太子にはばれないようにした。ハードルを上げたくはないし、再会したときに僕のことを美しいと思って欲しいから。

 きっと、出発前よりは綺麗になっていると思う。あの頃も太子に振り向いて貰う為、一生懸命美しくいようとしていた。でも隋の美容はもっと素晴らしいからさ。でもそんなことがあるから、恋をすると美しくなるって言うんだろうね。ただ僕は、どう頑張っても太子くらい美しくはなれないや。


 遣隋使としての使命は、遂に終わりを迎える。この街から離れるのは多少心残りがあったけれど、これを倭に伝えて倭をこれくらいの街にすればいいだけ。僕と太子の手で、必ずね。

 その為に、いくつか隋の植物の種を貰った。育て方も詳しく示して貰ったし、珍しい石なんかも貰った。隋の文化を示すようなお洒落な衣装も貰い、僕は隋製の丈夫な船で倭へと旅立った。


 本当にいいところだった。五年間ずっと、僕に優しくしてくれた。いつしか僕は隋の言語を完璧に覚えた代わり、倭の言語を忘れていた。文字や文法なら、ずっと手紙を書き続けているから問題ないけどね。太子用の手紙と、倭に送る為の手紙。完璧だね。

 ただ、喋ったときに変な発音してたりしたらどうしよう。太子に笑われるのはとても嫌だし、他の人に醜態を晒すのは絶対に嫌。一応もう一度倭の言語も学び直しておこう。


 隋の船だから、安心して乗っていられる。揺れも倭の船よりも全然少ないし、良い船だね。僕は船の中で、隋で得た資料を纏めたり、倭についての本を見てみたりした。共に倭に戻る人と、談笑しながら隋での思い出を語り合ったりもした。

 隋では特殊な燃料が取れたりするらしい。世にも不思議な調味料や、果物などを持っていると言う人もいた。隋は広いもので、同じ隋と言えども全然違う。聞いていて面白かった。

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