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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第三章

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83.ヘルメルト山脈へ

 ヘルメルト山脈への素材採取が許可されると、私はすぐに準備へと取りかかった。


 まずはポーションの作成。怪我や不測の事態に備え、出来る限りの数を揃える。さらにショック玉もありったけ作り、少しでも魔物討伐の役に立てるようにしておく。


 それから野営道具や着替えの準備。本来であれば、それらはすべて手で持ち運ばなければならない。けれど、私には【素材保管】の魔法がある。


 素材を自由に収められる異空間。試しに道具を入れてみると、問題なく収納できた。どうやら素材の定義は、私の想像よりもずっと広いらしい。


 このおかげで荷物は最小限に抑えられ、身軽なまま探索に集中できる。これは大きな利点だった。


 そうして、一週間かけて準備を整え――ついに、出発の日がやってきた。


「ルイがとうとう旅に出るのね……」


 私はイザベルお母様の下を尋ねた。私の旅装束を見て、感慨深いように下から上を眺めた。


「ロザンも昔、儀式が終わるとそうやって旅に出ていったわ。血は争えないわね」

「へー、ロザンお父様もその頃には旅に出ていたんだ」

「ふふっ。昔のロザンとルイは似ているわ。やんちゃなところがそっくりで、こっちがハラハラさせられる」


 そ、そんなにロザンお父様と私って似ているかな? まぁ、小さいころから森を駆け回っていたし、やんちゃって言えばやんちゃだけど。


「だけど、ルイは錬金術師なんだから、無茶はしちゃダメよ。ちゃんと、アマリアのいうことを聞くと。いいわね」

「うん、分かった」

「それに、ちゃんと食事を取ること。お腹が減ったら動けないからね。それに、しっかりと睡眠をとって――」

「も、もう! そこまで子供じゃないよ!」


 心配してくれるのは嬉しいけれど、そこまで子供じゃない。なおも口を開こうとするイザベルお母様の口を塞ぐと、困ったように笑った。


「ごめんなさいね。旅に出るって聞くと、心配で仕方がないの。ちゃんと無事に帰ってくるのよ、いいわね」

「うん、ちゃんと帰ってくる。だから、行ってきます!」

「行ってらっしゃい、ルイ」


 最後に抱きしめると、イザベルお母様も抱きしめ返してくれる。しばらくそうすると、少しの名残惜しさを感じながら離れた。


 ◇


 屋敷の外に出ると、そこには家族と使用人が集まっていた。


「準備は出来たか?」

「うん、バッチリ!」

「忘れ物はない?」

「昨日、しっかりと確認したからないよ」


 ロザンお父様とファルスお兄様の問いに元気に答える。それから、使用人と少し会話をすると、アマリアお姉様に近づく。


 アマリアお姉様は一頭の馬を連れている。この馬に乗ってヘルメルト山脈まで移動するつもりだ。


「ルイ、本当にいいのね? 旅は厳しいし、大変だし、辛い目に合うかもしれないわよ」

「大丈夫! もう、王都で経験してきたから!」

「くっ……! どうして、初めての経験が私とじゃないのっ!?」

「ご、ごめん……」


 心底悔しそうにしているアマリアお姉様を見ると、少しだけ胸が痛んだ。それでも、旅に出る気持ちは衰えない。


「とにかく、ルイは私が命を賭けて守るわ」

「じゃあ、私もアマリアお姉様を命を賭けて守るね!」

「そ、そんなことしなくてもいいのよ! ……でも、その気持ちは嬉しいわ」


 私の決意を伝えると、アマリアお姉様は狼狽した後に嬉しそうに微笑んだ。本当にアマリアお姉様の反応は面白い。いや、面白がっている場合じゃない。


「じゃあ、行きましょう。おいで、ルイ」


 馬の横まで誘われ、その場所に立つ。すると、脇に手を入れられて、持ち上げられる。すると、ストンと馬に乗せられた。


 次にお姉様が軽やかに乗馬して、すぐに手綱を握る。慣れている姿を見ると、その姿がカッコよく映る。


「アマリア、ルイの事を頼んだぞ」

「二人とも、気を付けてね」

「みんな、行ってきます!」

「ルイは必ず守るわ。行ってきます」


 お別れの言葉を言うと、アマリアお姉様は馬の腹を蹴った。すると、馬が動き出す。屋敷を出ていつもの道を進むだけなのに、気持ちが高揚する。


「じゃあ、しゅっぱーつ!」

「あっ、手を上げたらバランスを崩すわ! 危ない!」


 馬上でもアマリアお姉様は過保護だ。今回の旅は心から頼れる人が近くにいて、とても楽しみだ。


 ◇


 ヘルメルト山脈まで馬に乗って三日。のんびりと周りの景色を楽しみながら、馬の背に揺られて道を進む。


 久しぶりにアマリアお姉様と一日中いる貴重な時間。色々な話をしながら進んでいくと、あっという間に夕日が落ちてきた。


「じゃあ、今日はこの辺りで野営しましょう。あの木のふもとが良いわね」


 そう言って、アマリアお姉様はいくつかの木が生えている草むらに近寄った。馬を木に繋げると、私の出番だ。


「じゃあ、【道具召喚】!」


 馬の前に水桶と飼い葉桶を作り出す。水桶には【水召喚】で水を入れ、【素材保管】から飼い葉を出す。すると、馬が待ってましたと言わんばかりに食事を始める。


「ルイの魔法はとても便利ね。本当に助かるわ」

「役に立って良かったよ。じゃあ、次は私たちだね」


 私は【道具召喚】から野営に必要な道具を出す。アマリアお姉様が野営の準備を進めている間に、私は食事の準備だ。


 焚火を起こし、鍋を火にかける。そこに、肉や野菜を入れて、【水召喚】で水を入れてから味付けをして煮込む。そうして出来たスープに家で作ってもらったパンを添えれば夕食の完成だ。


「アマリアお姉様、出来たよ!」

「わぁ、凄いわね。ルイは家のお手伝いもしていたから、家事能力が高いのは助かるわ。私は料理が出来ないから、野営では干し肉とか固パンで済ませちゃうから」

「こういうことなら任せてよ! なんだったら、アマリアお姉様の野営にも呼んで!」

「ルイが私のお仕事の手伝いをっ……! 本当に良い子なんだから!」 


 ギューッと抱きしめられると、褒めてくれているみたいで嬉しくなる。それから、アマリアお姉様はとても美味しそうに食べてくれた。


 仲の良い人との旅がこんなにも楽しいだなんて、もっと早くに知りたかった!

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