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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第三章

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77.説得

 久しぶりの家族団らんの食事の時間。本当なら和気あいあいとした空気が流れるはずなのに――。


「わ、私以外の人と一緒に素材採取をしていただなんて……。ど、どうして言ってくれなかったの!? 言ってくれたら、すぐにでも飛んできたのに!」


 王都であったことを話すと、アマリアお姉様の態度が険しくなる。やっぱり、こうなったか……。


「いや、でも……アマリアお姉様は忙しいし。それに、一緒に来てくれた冒険者さんはとても頼りになる人だったんだよ。素材採取だって手伝ってくれたし」

「素材採取……素材採取の手伝いが出来ないと、ルイの役に立てないのね! だったら、私だって出来るようになるわ! 今度は絶対に他の人に任せたらダメよ!」

「お、おいおい、アマリア。それだと、ルイはいつまで経っても交友関係が広まらないじゃないか」

「だって、まだ大人になったばかりなのよ! 悪い人に捕まったら、ルイが食べられちゃうかもしれないじゃない! 始めは慎重になるべきよ!」


 ロザンお父様が助け舟を出すが、アマリアお姉様は調子を崩さない。


「大丈夫だよ。ルイはちゃんと王都でもやれたよ」

「お兄様はそういうけれど、まだ見守りは必要だわ! だって、ルイは非力なんだから、何かあった時に傍で守る人がいないと!」


 ファルスお兄様の援護でも、アマリアお姉様は頑なだ。本当にこの調子で魔物と戦うことを許してくれるかなぁ。


 私が不安そうな顔をしてファルスお兄様を見ると、苦笑いをした後に表情を引き締めた。


「だったら、ルイにも力があればアマリアは安心するんだろう?」

「まぁ、それは……」

「ルイには錬金術がある。それで、悪い人も魔物も倒せると思うんだけどな」

「錬金術で? でも、薬を作る魔法技術でしょ? そんなので、悪い人や魔物を倒したりは……」

「大丈夫、出来るよ!」


 ファルスお兄様が上手く誘導してくれた! ここからは、私の番だ!


「錬金術は薬を作るだけじゃないの。色んなアイテムを作ることが出来る。それこそ、悪い人を退治したり、魔物を倒したりすることも出来るんだよ!」

「……本当に?」

「これを見て!」


 私はレシピ帳を開いて、アマリアお姉様に見せた。そのページには指輪の絵と文字が書かれてある。


「この指輪が錬金術のアイテム? 普通の物に見えるけれど……」

「ただの指輪じゃないよ。それは魔力を魔法へと変換する『変換の指輪』」

「えっ……!?」

「な、なんだと……!?」


 私の言葉に、アマリアお姉様だけでなく、ロザンお父様までもが目を見開いた。


「冗談では済まされんぞ。魔法は選定の儀で選ばれた者にしか扱えない。それ以外の者が使えるはずがない」

「そ、そうよ。魔力は誰でも扱えるけれど、魔法は別物……それを、この指輪一つで覆すというの?」


 二人の言葉は、この世界の常識そのものだった。


 魔力は誰の中にもある。けれど、それを魔法として発現できるのは、選ばれた者だけ。だからこそ、魔法は特別であり、価値がある。


 だからこそ――もし、それを誰でも使えるように出来たら?


 それは常識を覆す力になる。そして同時に、私自身の可能性も大きく広がる。


 魔法が使えれば、魔物とも戦える。行動範囲は広がり、手に入る素材も増える。錬金術師として、出来ることが一気に増えるはずだ。


「この指輪を再現できれば……私でも魔法が使える。つまり、魔物とも戦えるようになるってことだよ」

「むぅ……理屈は分かる。だが、それが本当に可能なら……とんでもない代物だ」

「で、でも……そんな夢みたいな話……」


 二人の疑念はもっともだ。けれど。


「大丈夫。錬金術なら、それが出来る」


 私は迷いなく、そう言い切った。もう、レシピも作ってある。後は素材を集めて、作るだけだ。


 ロザンお父様は腕を組んで難しい顔をしながら口を開く。


「本当に作るというのか? 常識を覆すアイテムを」

「もちろん! だからさ、私をヘルメルト山脈に連れて行って欲しいの」

「ヘルメルト山だと……?」


 ロザンお父様の表情が一瞬で険しくなる。


 辺境の外れに連なるヘルメルト山脈。鋭く切り立った岩肌、足場は悪く、天候は急変しやすい。加えて、人里から離れているせいで、強力な魔物たちの巣窟となっている。


 牙と爪を持つ獣型の魔物はもちろん、岩に擬態するものや、毒を撒き散らす植物型の魔物まで確認されている。下手をすれば、熟練の冒険者ですら命を落とす場所だ。


 その危険性ゆえに、許可なく近づくことすら許されない、いわば死地だった。


「どうして、そんな場所に……?」


 アマリアお姉様が戸惑いを隠せない声で尋ねる。私は、にやりと笑って答えた。


「決まってるよ。あそこにしかない素材があるから」


 ヘルメルト山は危険なだけの場所じゃない。錬金術で使える素材の宝庫だということが、薬師協会の資料室で分かったのだ。


「変換の指輪を作るなら、普通の素材じゃ足りない。特別な素材が必要なの。それが、へルメルト山」


 そんなものが手に入る場所は、限られている。


「つまり、ヘルメルト山しかないってことか。だが、そんなところにルイを連れていくのは……」


 ロザンお父様がそう言い切ると、部屋の空気が重く沈んだ。こ、これは……あんまり良い雰囲気ではない?


 すると、アマリアお姉様がテーブルをバンと叩いて立ち上がった。


「そんな危険なところにルイを連れていくことは出来ないわ!」


 やっぱり、そう来たか。だけど、そう簡単には諦めきれない。


「じゃあ、どうしたら連れて行ってくれるの?」

「それは、ルイがちゃんと魔物と戦えるようになってからよ。そうじゃないと、絶対に連れていけないわ!」

「……分かった。じゃあ、魔物と戦えるアイテムを作る。それで、問題ないでしょ?」

「ま、まぁ……それだったら……」


 よし、約束は取り付けた。だったら、まずは魔物と戦えるアイテムを作る!

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