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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第二章

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75.錬金術の一歩

 改良した風邪薬のお披露目は、大成功だった。


 既存の風邪薬を上回る効果。加えて、その生産工程を見直すことで、安定して質の高い薬を作り出せるという証明。理論だけでも、実演だけでも足りない。けれど今回は、その両方を揃えた。


 だからこそ、有無を言わせる隙はなかった。これは提案の形をした、改革だ。それを、あの場にいた全員に認めさせた。


 お披露目が終わった後、あれほど声高に反発していた人たちは、誰一人として文句を言わなかった。いや、言えなかったと言うべきだろう。証拠はすべて揃っていたのだから。


 ……でも私は、分かっている。今回の成功は、決して私一人の力じゃない。すべてを見越して、先回りして、道を整えてくれた人がいる。ファルスお兄様だ。


 反論が来ることも、その内容も、どうすれば納得させられるかも。全部を最初から想定して、準備していた。私はその上で、成果を見せただけに過ぎない。……本当に、敵わない。


 けれど同時に、その背中があるからこそ、私は前に立てた。そして改革は、そこで終わりじゃない。むしろ、そこからが本番だった。


 新しい体制は、すぐに動き出した。まず手を付けたのは、素材採取の現場だ。


 冒険者たちに対して、素材ごとの最適な採取方法を教え、無駄を省き、効率を引き上げる。どの部位を、どの状態で、どう扱えば品質を保てるのか。


 それまで感覚に頼っていた部分を、私の鑑定で導き出した知識を使って浸透させた。最初は戸惑いも多かった。けれど、成果はすぐに出た。採取効率は上がり、何より持ち帰られる素材の質が明らかに変わったのだ。


 次に、素材の管理。劣化を防ぐための保存方法、運搬時の注意点、保管環境の整備。細かい部分まで徹底することで、素材は使える状態のまま維持されるようになった。


 そして、加工工程。ここで、一般の働き手を雇い入れた。薬師でなくともできる作業を切り分け、手順を単純化し、誰でも一定の品質で作業できるようにする。


 最初は、正直に言って手間取った。ミスも多く、やり直しも発生した。けれど、人は慣れる。


 繰り返すことで精度は上がり、やがて彼らは薬師と遜色ない働きを見せるようになった。むしろ、単純作業においては、専門の薬師よりも安定している場面すらあった。


 その結果、薬師たちは本来やるべき仕事に集中できるようになった。素材の調合。配合の最適化。品質のさらなる向上。雑務から解放されたことで、技術そのものを磨く時間が増えたのだ。


 そして生まれるのは、当然の結果。より質の高い風邪薬。


 以前とは比べ物にならないほど安定し、効果も高い薬が、継続的に生み出されるようになっていった。


 ただの風邪薬の改良だった話が、薬の在り方を変えた。そして、それが浸透していくと、錬金術の名も同時に広まっていった。


 ◇


「ふー。これで、ポーションと総合治癒感冒薬の調合が終わり」


 納品する二種類の薬を作った。そう、ようやく錬金術で作ったアイテムを売れることになったのだ。それもこれも――。


「やぁ、ルイ。調合が終わったかい?」

「あっ、ファルスお兄様! うん、各百本、作り終えたよ」

「お疲れ様。こっちも話がまとまったよ。ちゃんとルイの作ったアイテムはお店に並ぶことになる」

「本当!? わーい、やった! ファルスお兄様、色々と面倒な事をやってくれてありがとう!」

「全然構わないよ。僕もルイの作ったアイテムの素晴らしさを知って欲しいって思ったからね」


 笑って私の頭を撫でてくれる。子ども扱いされているようで、ちょっと複雑だけど、嬉しいからまーいっか!


「それで、どれくらいの値段になったの?」

「ん? 二つとも十万デル前後かな」

「じゅっ、十万デル!? そんなに高くして大丈夫なの!? 売れる!?」


 ま、まさかそこまで吹っ掛けてくるとは思ってもなかったから驚いた。


「錬金術師は一人しかいないからね、作れる量は決まってくる。ルイの作る薬は貴重なんだよ。だから、その希少性を値段に落とし込んでみたんだ」

「そ、そんなので売れるの!? めちゃくちゃ、高くない?」

「高くないよ。それだけの価値があるんだから」

「で、でも……文句とか言われない?」

「言われないよ。それだけ、効果があるものだったしね。それに、ちゃんと分からせてきたら安心して」


 わ、分からせてきた? また、ファルスお兄様は何をしてきたの?


「今後、何か新しいアイテムを売り出したい時は僕を通してね。適正に売って見せるから」

「そうなの?」

「うん。ルイには錬金術に集中して欲しいしね。面倒事は任せて」


 さ、流石ファルスお兄様! 私一人では不安だったから、ファルスお兄様が手伝ってくれるのは本当に助かる。


「あっ! 売ったお金は領地の事で使って!」

「えっ? いや、売ったお金はルイのものだよ。これから必要な物が出てくるし、そっちで使ってもらった方が……」

「私だって大人の仲間入りしたんだから、家族の役に立ちたいの! だから、領地にお金を入れさせて!」

「……ルイ、ありがとう」


 ウチは貧乏だから、いつか自分の働いたお金を入れてみんなの役に立つのが目標だった。これで、立派な大人の仲間入りだ。


「じゃあ、ありがたくこの納品の一部のお金は領地のために使わせてもらうよ。それで、これからどうするんだい? まだ、王都にいる? それとも、領地に帰る?」


 その問いに私ははっきりと答える。


「作りたいものがあるの! だから、薬師協会の資料室で素材を探さなきゃ!」

「へぇ、もう次の作りたいものが決まったの? ちなみにどんなものを作ろうとしているの?」

「今回の事で私も戦えるようになったら、素材採取がぐんと楽になるなって思ったの。だから、魔物と戦う手段をアイテムで手に入れるつもり」


 錬金術になら、攻撃用のアイテムだって作れるはずだ! それを作れば、魔物討伐はぐんと楽になるし、素材採取にいける地域も増える。


 だけど、私の言葉にファルスお兄様は困ったように笑った。


「そ、それは……アマリアがなんていうか……。きっと、ルイを心配して許さないかも……」

「だ、大丈夫だよ! きっと、説得すれば、許してくれるはず!」

「う、うーん……。そう簡単に許すとは……」


 アマリアお姉様は過保護だから、私が率先して戦おうとすると怒ると思う。でも、いつまでも守られてばかりじゃ、色んな所に行って素材採取は出来ない。


 だけど、説得するのはきっと骨が折れる……。やはり、ここは一人で説得するのは無謀だ。ファルスお兄様を見ると、パンと手を合わせた。


「お願い、ファルスお兄様! アマリアお姉様を説得するのに協力して!」

「で、出来る限りのことはするよ。でも、あまり当てにしないでね……」

「ありがとう、ファルスお兄様!」


 良かった、一人では心細かったところだ。絶対にアマリアお姉様を説得して、魔物との戦闘に参加してみせるんだから!

第二章完


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