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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第一章

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39/99

39.ポーションの効果

「ロザンお父様! ファルスお兄様!」


 私は扉を勢いよく開け、執務室へ飛び込んだ。書類に目を通していた二人が、揃って顔を上げる。


「いきなりどうした?」

「そんなに慌てて……何かあったのかい?」

「うん! アマリアお姉様の薬が出来たの!」


 その一言に、ロザンお父様は椅子を鳴らして立ち上がった。


「それは本当か!?」

「朗報だね」

「二人にも薬の効果を見てもらいたくて……一緒にアマリアお姉様の所に来てくれる?」

「もちろんだ。ルイの作った薬の効果、ぜひこの目で確かめたい」

「どれほど良い物が出来ているのか、楽しみだよ」

「じゃあ、今すぐ行こう!」


 二人は迷うことなく頷き、席を立った。私はそのまま二人を連れて執務室を出ると、アマリアお姉様の自室へと向かった。


 扉をノックして部屋に入ると、ベッドの上にはアマリアお姉様が横たわっていた。


「ルイ、来てくれて嬉しいわ。ちょうど暇をしていたところなの」

「傷の具合はどう? 痛くない?」


 私が尋ねると、アマリアお姉様は柔らかく微笑む。


「えぇ、大丈夫よ。今は特に問題ないわ」


 けれど、その言葉にロザンお父様が眉をひそめた。


「何を言う。あの傷で問題ないはずがない。まだ痛みはあるだろう」

「もう、お父様!」


 アマリアお姉様が少し強い口調で声を上げる。


「ルイが心配する気持ち、分からないの? わざわざ不安になるようなことを言わなくてもいいでしょう」

「むぅ……しかしだな……」


 父娘のやり取りを見て、私は思わず一歩前に出た。


「お姉様も、だよ」

「……え?」

「嘘はよくない。ちゃんと正直に言って」


 一瞬、アマリアお姉様は言葉に詰まり、視線を逸らした。


「……だって。ルイが、もっと心配すると思って……」

「心配するに決まってるよ! あんな大きな傷を負ってたんだから」


 私の言葉に、アマリアお姉様は小さく息を吐き、困ったように笑った。


「……迷惑をかけて、ごめんなさい」

「まぁまぁ、二人とも。その話は一旦ここまでにしよう」


 そう言って、ファルスお兄様が穏やかに割って入った。


「今、大事なのは別のことだろう?」

「別のこと?」

「ルイがね。アマリアのために、薬を作ってきてくれたんだ」

「えっ!? ルイが……私のために!?」


 驚いたアマリアお姉様は、思わず勢いよく体を起こす。


「……っ!」


 けれど、次の瞬間には顔を歪め、小さく息を詰まらせた。


「もう、アマリアお姉様。無理しちゃだめ」

「だって……ルイが私のために薬を作ってきてくれたなんて……」


 胸に手を当てながら、アマリアお姉様は震える声で続ける。


「嬉しくて……嬉しくて、じっとしていられなかったの」

「喜んでもらえたなら、それだけで作った甲斐があるよ」


 怒ったり、落ち込んだり、そして今は心から喜んだり。アマリアお姉様は感情の起伏が忙しい。


 だけど、そんなふうに感情を隠さずにいてくれるところが、私は大好きだし、大切にしたいと思っている。


「それで、どんな薬なんだい?」

「傷に塗る薬か?」


 ファルスお兄様の問いに、私は首を振った。


「ううん。飲んで、傷を治す薬だよ」

「飲む……?」

「うん。これ、ポーションっていうの」


 私は【素材保管】から、小さな瓶を取り出した。中には、淡く光を宿したポーションが揺れている。


「これを飲めば、一瞬で傷が痕も残さず消えるよ」

「一瞬で、痕も残さず……だと!?」

「それが本当なら、とんでもないことだよ!」


 私の言葉に、ロザンお父様とファルスお兄様は同時に声を上げた。無理もない。この世界には、飲んで傷を治す薬など存在しないのだから。


「絶対に効くって、約束する」


 私はアマリアお姉様をまっすぐ見つめる。


「だから……飲んでみてくれない?」

「もちろんよ!」


 アマリアお姉様は、迷いの欠片もない声で言い切った。


「だって、ルイが私のために作ってくれたんでしょう? 飲まない理由なんて、どこにもないわ」


 初めての飲む傷薬。内心では不安もあったけれど、それを押し流すような明るさで、アマリアお姉様は私から瓶を受け取った。


「待って。もし、ルイの言う通りなら……」


 ファルスお兄様が顎に手を当てて言う。


「傷口の糸は、先に取っておいた方がいいんじゃないかな?」

「そうだな。ポーションが本当に効くなら、縫合糸はむしろ邪魔になる」


 アマリアお姉様の傷は、まだ糸で縫われたままだ。癒える瞬間に糸が残っていれば、確かに問題になる。


 ロザンお父様はすぐに判断し、手際よく処置を始めた。


「……よし、これでいい」


 糸を取り終えると、穏やかに言う。


「アマリア。ポーションを飲んでみなさい」

「えぇ、もちろんよ」


 アマリアお姉様は瓶の蓋を開けると、ためらうことなく口元へ運ぶ。そして、一気に飲み干した。


「……傷口は?」


 誰ともなく呟いたその言葉に、全員の視線がアマリアお姉様の脇腹へと集まった。


 次の瞬間――切り裂かれていたはずの肌が、まるで時間を巻き戻すかのように、ゆっくりと動き出す。


 裂け目の縁が引き寄せられるように近づいていく。肉が盛り上がり、皮膚が重なり合い、傷だった境目が次第に分からなくなっていく。


「……塞がっていく。これが、ポーションの力……?」


 ファルスお兄様の声は、驚きで震えていた。


 縫い跡も、赤みも、かさぶたさえ残らない。ただ、滑らかで、何事もなかったかのような肌が現れていく。


「凄い……。こんな回復……聞いたことも、見たこともない……」


 ロザンお父様は、目を見開いたまま動けずにいる。やがて、最後に残っていた薄い線すら消え去った。


 そこには、傷など最初から存在しなかったかのような、綺麗な肌だけがあった。


「……嘘」


 アマリアお姉様が、震える声で呟く。


「本当に……何も、残ってない……」


 恐る恐る指先で触れてみても、違和感はない。硬さも、引きつれも、痛みも――何一つ。


「アマリアお姉様、調子はどう?」

「……痛みが、全くないわ」


 一拍置いてから、アマリアお姉様の顔がぱっと輝く。


「凄い……本当に凄いわ! これが、ルイの作ったポーションなのね! ルイ、あなた……本当に凄い!」


 感極まったように、アマリアお姉様は私をぎゅっと抱きしめてきた。


「こんな薬を作れるなんて、さすが私の妹よ! ルイはね、やれば何でも出来る子なの!」

「ぐっ……あ、アマリアお姉様……苦し……!」

「ありがとう、ルイ! 本当にありがとう!」


 喜びの勢いそのままの抱擁は、正直かなり苦しい。必死に耐えていると、横からファルスお兄様が苦笑しながら割って入った。


「こらこら。抱き潰したら元も子もないよ」

「あ……ご、ごめんなさい。つい嬉しくなってしまって……」


 アマリアお姉様は名残惜しそうに腕を離す。


「それにしても……もう、そんなに動けるんだね」

「えぇ。体に力を入れても、全然痛くないの」


 そう言って、アマリアお姉様は軽く腕を動かし、腰をひねってみせる。


「まるで……怪我をする前に戻ったみたい」


 私をぎゅっと抱きしめられても平気なほど、回復している。それが何よりの証拠だった。


 とにかく、ポーションが期待通りの効果を発揮してくれて、本当に良かった。


 それまで黙っていたロザンお父様が、深く息を吐いた。


「……いやはや。これは、とんでもないことだ。傷が一瞬で塞がり、しかも痕も残らないとは……」


 呆然とした様子で、もう一度アマリアお姉様の脇腹を見つめる。


「まるで回復魔法をかけたかのようだ。神の奇跡……それ以上かもしれん。正直に言おう。こんな光景は、長年生きてきて初めて見た」


 そう言ってから、私へと視線を向けた。


「ルイ。お前は本当に、とんでもない物を作ったな。今までの薬も十分に驚かされたが……これは別格だ」

「え、えっと……」


 急に褒めてきて、思わず口ごもってしまった。やっぱり、この世にない物を作ったから?


「そんなに凄いかな? ちゃんと効くように、考えただけなんだけど……」

「それが凄いんだよ」


 今度はファルスお兄様が、くすっと笑って口を挟んだ。


「ちゃんと効くように考えたら、誰も見たことのない薬が出来た。それを、凄いと言わずして何と言うんだい?」

「う……」


 言われて、言葉に詰まる。


「ルイは、本当に大したものだ。家族として、これほど嬉しいことはない」


 笑顔で頭を撫でられた。家族に褒められるのって、案外照れるものだ。


「そうだわ! せっかく元気になったんだもの、お母様にも知らせないと!」


 アマリアお姉様は、ぱっと顔を輝かせる。


「ルイがどれだけ凄いことをしたのか、いっぱい話してあげるわ!」


 そう言うや否や、ベッドから飛び降りて、私の手をぐいっと引いた。


「えっ、ちょ、ちょっと……いいよ、そんな……」

「いいえ、ダメよ!」


 アマリアお姉様は振り返って、きっぱりと言い切る。


「ルイが頑張ったことなんだから。お母様だって、絶対に知りたいはずよ」

「そうだな、知らせてやろう。どれ……みんなで行くか」

「賛成だね。家族みんなで、ルイを褒めないと」


 どうやら、イザベルお母様のもとへ行って、そろって私を褒めるつもりらしい。


「もう……大げさだよ……」


 そう言いながらも、引かれる手を振りほどくことはしなかった。胸の奥が、むずむずと落ち着かない。恥ずかしいけれど――本当は、とても嬉しい。


 私の作ったポーションが、アマリアお姉様の体を癒し、そして今、家族みんなの表情を明るくしている。


 それだけで、もう十分すぎるほどだった。手を引かれながら、私は小さく笑う。


 この温かさを守れて、本当に良かった。

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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~

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