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この世に一人だけの錬金術師~物作り好きのゲーマーが家族のためにアイテム革命起こします!~  作者: 鳥助
第一章

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25/99

25.治す薬はまだ作れないけれど……

「ファルス様、ルイ様。ようこそお越しくださいました」

「では、さっそく現場を見せてもらえるかな?」

「えぇ、こちらです」


 農家の家を訪ねると、家主は深々と頭を下げ、私たちを出迎えてくれた。そのまま案内されるまま家の裏手へ回り、畑へと足を運ぶ。


 次の瞬間、視界に飛び込んできた光景に、私たちは思わず眉をひそめた。


 畑の一角。本来なら青々と育っているはずの野菜が、無惨に食い荒らされている。葉は引きちぎられ、茎は踏み折られ、地面には掘り返された跡が点々と残っていた。


 間違いない。


「……ホーンラビットだね」


 ファルスお兄様がそう呟くと、家主は何度も頷いた。


「えぇ。その通りでございます」


 家主は被害の出ている場所へ歩み寄り、畑の外周を囲っている柵を指さした。


「ここです。この柵を壊して、中へ侵入してきました」


 近づいて確認すると、柵の一部が不自然に抉られている。木材は鋭く裂け、角で突き破られたような跡がはっきりと残っていた。


 その隙間は、ホーンラビットが体を捻じ込めば、無理なく通れる大きさだ。


「角で……こじ開けた、という感じだね」

「はい。夜のうちにやられたようで……」


 家主の声には、悔しさと不安が滲んでいた。このまま放置すれば、被害は広がる一方だろう。


 私たちは改めて畑全体を見渡し、頭の中で状況を整理する。侵入経路、被害の範囲、痕跡の残り方。原因ははっきりしていた。あとは、どう対処するか、だ。


 しばらく畑を見回したあと、ファルスお兄様が静かに口を開いた。


「ホーンラビットはね。一度ここに餌があると覚えると、簡単には諦めない」


 家主が、はっとしたように顔を上げる。


「一度入られた場所には、また必ず来る。味を占める、というやつだ。だから、今回きちんと対応しないといけない」


 ファルスお兄様は、壊された柵の前に立ち、しゃがみ込んで状態を確かめた。


「この隙間だね。ここを二重に補強しよう。内側にももう一枚板を張り付ける。強度を上げれば、角でこじ開けるのは難しくなるはずだ」

「二重、ですか……」

「うん。完璧ではないけど、侵入はかなり防げると思う。まずはそれで様子を見てほしい」


 落ち着いた口調だったが、言葉には確かな経験が感じられた。家主は何度も頷き、深く頭を下げる。


「ありがとうございます。すぐに手配いたします」


 その様子を見ながら、私は一歩前に出た。


「おじさん、安心して。私も今まで以上に、魔物の駆除を頑張るから! 被害がこれ以上広がらないように、周辺も見回ったりするよ!」


 家主は一瞬目を丸くしたあと、ほっとしたように表情を緩めた。


「それは心強い……。では、村の子供たちにも声をかけましょう」

「それはいいね!」

「えぇ。数の力は強いですからね。数を減らすためにも、ホーンラビット狩りをしてもらいます」


 畑を守るための動きが、少しずつ形になっていく。対策は一つではない。柵の補強と、駆除。両方が揃って、ようやく効果を発揮する。


 こうして、魔物の被害があった畑の視察は終わり、私たちは帰路についた。


 ◇


 だけど、道を歩き出すとすぐに変調が現れた。ファルスお兄様の姿勢が崩れ、歩く速度が遅れ出したのだ。


「あっ、ファルスお兄様! 疲れているなら、言ってくれないと!」

「えっ? いや、大丈夫だよ」

「そんなことない。辛そうに歩いている。だから、こういう時は道端で休む!」

「だけど……」

「監視員の私の言葉を聞かないと、くすぐりの刑だよ!」

「……それは怖い」


 腕組をして怒った顔を見せると、ファルスお兄様は苦笑いをした。そこで、ようやくファルスお兄様は道の端の草むらに腰を下ろしてくれた。


 少し呼吸が上がっているようにも見えて、私は背中を擦った。


「ファルスお兄様、大丈夫?」

「……あぁ、大丈夫だよ」

「一気にお仕事を進めすぎだよ。休みながら進めていけばよかったのに」

「あーいうのはすぐに答えを出した方がいいからさ」


 仕事に熱心なのはいいが、体に負担がかかるのは嫌だ。もしもの時のことを考えると、やっぱり無理はして欲しくない。


「肺はどうしようもないけれど、少しでも動かなかったら……体が訛ってしまうしね」


 そうなると、身動きが取れなくなって大変だ。だから、ファルスお兄様は意地になってでも、外に出る仕事を止めようとはしない。


 ファルスお兄様の肺を治す薬の素材は見当たらない。だから、すぐに治せることは出来ない。だけど、私の錬金術ならば何か力になれるんじゃないかと思ってしまう。


「ファルスお兄様が今欲しい物って何?」

「えっ、欲しい物? そうだな……動いても疲れない体かな。そしたら、肺がこんなのでも、多少は動けるようになるから。そしたら、領のみんなのために働けると思う」


 ファルスお兄様の体は肺が弱いため、あまり激しい動きが出来ない。そのためか、体の筋肉が衰えてしまっている状態だ。


 体を動かすとすぐに限界が来てしまう。どうやら、それが辛いらしい。


 今すぐ、肺をどうにか出来るとは思ってない。だけど、体の筋肉ならば、何か薬で出来ることがあるんじゃないだろうか?


 ファルスお兄様が無理なく動ける環境。それが整えば、ファルスお兄様のためにもなるし、家族のため、領民のためにもなる。


 うん、次のやることは決まった。


「ファルスお兄様の願い、私が叶えてみせるよ」


 次はファルスお兄様の薬作りだ!

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