表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神に楽しめと言われた。楽しみすぎて、神を超えた。  作者: issoh


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/67

第13話 初任務

# 第13話 初任務


## 任務の受領


 転生十二日目の朝。


 訓練を終えてから数日が過ぎた。


 セラは守護隊本部の隊長室に呼び出されていた。レイナード隊長がデスクに座り、手にした羊皮紙をゆっくりとめくっている。


「セラ、アリア。訓練の成果は上々だった」


「ありがとうございます」


「二人とも、基礎はしっかり身についている。それで、初任務を任せたい」


「初任務、ですか」


 セラの胸がドキリと鳴る。


(待っていた、という思いと同時に、指先が冷たくなる。訓練と実戦は違う。当然だ)


「森の西側をパトロールしてほしい。ここ最近、西側から不審な報告が上がっている。魔物の痕跡が見つかったとの情報もある。ただ、大規模な群れである可能性は低い。まずは状況確認だ」


「状況確認ですね」


「ああ。詳しい記録を取ってきてくれ。痕跡の種類、数、方向。できるだけ細かく。それが今回の任務の目的だ」


 セラは頷く。


(記録ならできる。訓練でも、観察の重要性は何度も教わった。何を見て、どう記録するか。守護隊の仕事の基本だ)


「セラとアリア、二人で行ってくれ」


「私たち、ですか」


 アリアが少し驚いたように目を見開く。


「はい。相性は抜群だし、何より連携が取れている。初任務には最適なペアだと判断した」


「……ありがとうございます、隊長」


 アリアが少し照れたように視線を落とす。


 セラも足取りが軽くなるのを感じた。アリアと一緒なら、安心だ。


「出発は正午。準備をする時間を十分に与える。水と食料は忘れないように」


「はい!」


「それと、万一の場合の連絡手段も忘れずにな。無理は禁物だ」


「無理はしません」


 セラが答える。無理はしない。でも、任務は全うしたい。この二つを両立させるのが、守護隊としての務めだ。


 任務書と地図を受け取る。表紙には「任務書」と太い文字で記され、中には詳細な指示が書かれている。パトロールルート、チェックポイント、緊急時の連絡方法。


(これが、初任務か)


 セラは手にした紙の重みを感じる。責任があるからこそ、力になれる。


「セラ、準備しましょう」


「ああ、そうだな」


 アリアに促され、二人は隊長室を出る。廊下に並ぶ隊員たちが、興味深そうな眼差しを向けてくる。ガトー教官が通りかかり、ニッと笑って頷いてくれた。テイオも「最初は緊張するもんだ。でも、お前らなら大丈夫だ」と声をかけてくれた。


「いけるかな」


「いけますよ。セラも私も、訓練で充分にやりました」


 アリアが強く言い切る。


(アリアさん、なんでそんなに自信があるのか。……いや、それがいいんだよな。こっちも安心する)


「アリア、怖くないのか?」


「怖いです。でも、セラがいるから」


「……俺も、アリアがいるから大丈夫だって思ってる」


「じゃあ、お互い様ですね」


 アリアがニッと笑った。


(お互い様、か。一人で全部抱え込むクセがあった。でも今は、本当の意味で「お互い様」だ)


「行くか」


「はい。行きましょう!」


 ロビーで装備を確認する。水筒には水を満たし、食料も三日分を用意する。応急処置キットも忘れない。


「杖、持ってますか」


「はい。短剣も」


「地図とコンパス……OK」


 二人は互いの装備を確認し合う。


## 出発


 正午を回し、二人は守護隊本部を出発した。


 制服姿のセラとアリアが、村の街道を歩いていく。


「緊張してますか」


「……少しはな」


「私もです」


 アリアが苦笑する。彼女の肩も、少し強張っているのが分かる。それが、逆に心強かった。


(二人とも緊張してるってことは、この感覚は正常だ。深呼吸して挑むのみ)


「森の西側は、歩いたことないな」


「私もです。訓練で使った場所とは別のエリアですから」


「地図を見る限り、少し険しい地形してるみたいだけど」


 セラが手にした地図を広げる。西側は森の外れに近く、地形が変化している。木々の密度が減り、岩場や小川が増えるエリアだ。


「ここがパトロールのルートです」


 アリアが地図のラインを指でなぞる。


「本部を出て、北に曲がり。それから西へ進んで、最初のチェックポイントへ」


「最初のチェックポイントが、この大きな岩の場所か」


「はい。そこからさらに西へ、二つ目のポイントへ。それを繰り返して、最後に本部へ戻る」


「警戒しながら進みましょう」


「ええ。セラの右側、私が左側をカバーします」


「了解。何かあったら、すぐに声をかける」


「はい。セラも、無理せず声をかけてくださいね」


「……アリア、一つ確認していいか」


「はい、何ですか?」


「魔獣が本当に出た場合、逃げる選択肢もある。初任務なんだし」


「そうですね。でも、逃げると判断するのはどんな状況ですか?」


「明らかに勝てない相手、または大規模な群れ。あと、どちらかが重傷を負った場合」


「同意します。私もそう思います」


 二人は合意した。撤退の基準を事前に決めておく。「どこまでやるか」を先に決めておくと、判断が早くなる。


 二人は並んで歩き出した。


 最初のうちは、村の近くの開けた道を通る。守護隊の制服を着けて歩くのは、やはり特別な気分がする。


「あ、子供たちが手を振ってます」


 道端で遊んでいたエルフの子供たちが、二人に向かって手を振っている。「守護隊のお兄さん、お姉ちゃんだ!」と嬉しそうな声が聞こえる。


(守るものが。ここにいる)


 セラが手を振り返す。


 道が森の中へと入っていく。木々の影が濃くなり、足元の地面が少し柔らかくなる。


「静かだな」


「……そうですね。いつもはもっと小動物の気配もするのに」


 アリアがキョロキョロと周囲を見渡す。普段ならリスや鳥の気配がある森が、今日は異様に静かだ。それが、逆に警戒心を刺激する。


(腹の底がざわつく。この感覚、信じた方がいい)


「何かがあるのかもな」


「痕跡を探しましょう。最初のチェックポイントまで、あと少しです」


 最初のチェックポイントに到着した。大きな岩がそびえ立つ場所だ。地図通りだ。


「何もなさそうだ」


「私の側も、痕跡は見つかりません」


「記録しとくか」


 セラがノートを取り出し、日時と場所、そして「異常なし」と記録する。訓練で学んだ通り、詳細に記録を残す。


「次のポイントへ行きましょう」


「はい。気を引き締めて」


## 痕跡の発見


 二つ目のチェックポイントへ向かう途中、異変が見つかった。


 最初は小さな違和感だった。地面の土が少しだけ盛り上がっている。草が倒れている。


「セラ、これを見てください」


 アリアが地面を指し示す。


「これ、魔物の爪痕です」


 セラがかがみ込み、詳しく見る。確かに、鋭い爪が地面を引き裂いたような跡がある。大きさは約十センチ。深さは数センチ。新しい。


「大きさからして、中型くらいか」


「数は……三匹、いや四匹ですか」


「移動方向は、東から西へ。森の奥へ向かっています」


「東から西、か。つまり、村の近くから離れてるってこと?」


「……そうですね。でも、痕跡が新しくなっている。最近、活動が活発になっている証拠です」


 セラはノートを取り出し、爪痕の詳細を記録し始める。位置、大きさ、数、方向。一つ一つを丁寧に記述していく。


「写真も取っておこうかな」


 アリアが魔法で光を掌に宿し、爪痕を照らす。セラがその様子をスケッチする。


「深さも測っておこう」


 小枝を使って爪痕の深さを測る。


「三センチ、か。中型の魔獣ならありえる数値だ」


「方向は……西から南西に向かっています」


 セラが地図に×印をつける。


「ここから、西側のさらに奥まで痕跡が続いている。警戒が必要だ」


「はい。セラ、魔力も感じますか」


 ふと言われて、セラは意識を閉じてみる。魔力の感覚。周囲の魔力の流れを探る。すると、西側から微かな、不穏な気配が漂ってくるのが分かった。


「……確かに、あるな。西側から」


「私もです。少し濁ったような、冷たいような魔力です」


 アリアが眉を寄せる。彼女も感じている。


(空気が澱んでいる。静寂の奥に、何かが息を潜めている)


「報告が必要だな」


「はい。でも、まずはパトロールを完了させましょう。ルート全体を把握した方が、後の分析に役立ちます」


「そうだな。任務は全うしたい」


 セラは頷き、ノートを閉じた。記録は十分に取れた。


「次のポイントへ行きましょう。より警戒を強めて」


「はい。セラ、手、繋いでもいいですか」


「え?」


「魔力が、少し不安定です。触れていると、安定しますから」


 アリアが真剣な表情で言う。確かに、セラ自身も魔力の乱れを感じていた。不穏な気配に敏感になり、心拍数が上がり、そのせいで魔力も少し乱れている。


「……ああ。お願いします」


 セラが手を差し出すと、アリアがそれを優しく包み込んだ。温かい感触が伝わり、乱れていた魔力がゆっくりと落ち着いていく。


「大丈夫ですか」


「ああ、なんとかなる」


「なら、行きましょう」


## 魔物との遭遇


 三つ目のチェックポイントに近づいた時、異変は起きた。


 茂みから、カサカサという音が聞こえた。風の音ではない。何かが動いている音だ。


「セラ、右の茂み!」


 アリアが鋭い声を出す。


 その瞬間、セラは反応した。訓練で培った反射神経が、体を動かす。


「来るぞ!」


 黒い影が現れた。狼のような姿だが、大きさは倍以上。全身が黒い毛で覆われ、赤い目が不気味に光っている。魔獣だ。牙の間から低い唸り声が漏れ、地面を踏む爪が土をえぐった。


(複数の気配がする。落ち着け、焦るな。訓練通りだ)


「アリア、右! セラは左!」


「了解——光よ、矢となれ。敵を射貫け——ライト・アロー!」


 セラの掌から光弾が放たれた。狙い通り、魔獣の肩に命中する。


「ガァッ!」


「私も——光よ、矢となれ——ライト・アロー!」


 アリアの光弾が続けて魔獣の脇腹を捉える。連携だ。訓練で何度も繰り返した速攻が、体に染みついていた。


 魔獣が後ずさる。倒れてはいない。傷は浅いが、動きが鈍った。


「まだだ、続けろ!」


「はい! 風よ、刃となれ——ウィンド・エッジ!」


 アリアの声に鋭さが宿る。風の刃が弧を描き、魔獣の肩を深く切り裂く。暗い血がしぶく。魔獣が甲高い声で叫んだ。


「今だ——ライト・アロー! ライト・アロー! ライト・アロー!」


 セラが連射する。一発、二発、三発。それぞれが確実に魔獣の胴体をえぐっていく。


「ガオオオッ!」


 魔獣が怒り狂い、突進してくる。速い。地面を蹴る音が腹に響いた。


「避けて!」


 セラが横に飛び退く。魔獣の爪が空を切り、鼻先を通り過ぎる。一瞬の差だった。土埃が顔に当たった。


(速い。実戦の速さは訓練と全然違う)


「今だ! 風よ、刃となれ——ウィンド・エッジ!」


 アリアがさらに強力な風の刃を放つ。今度は魔獣の後ろ脚を狙った。鋭い刃が脚の腱を捉え、魔獣がバランスを崩してよろめく。


「その隙に!」


 セラが掌に力を込める。魔力を一点に集中する。全てを込めた一撃。光が奔り、魔獣の胸を貫いた。


「ギヒ……」


 魔獣が最後の息を吐き出し、倒れた。静寂が戻る。ただ、二人の荒い息遣いだけが聞こえる。


「……倒した、のか」


「はい。動きが止まりました」


 確認すると、完全に息絶えている。


「勝ったな」


「……はい。でも、まだです」


 アリアが周囲を見渡す。


「この魔獣は、先ほどの痕跡からすれば、群れの一部です。他にも、いるはずです」


「そうだな。警戒を続けよう」


 案の定、左側の茂みから、更なる音が聞こえてくる。一匹ではない。複数の気配だ。


「……来るぞ、複数だ」


「三匹……いや、四匹です」


「連携だ、アリア」


「はい。右は私、左はセラです」


「了解。行くぞ!」


 二匹目、三匹目の魔獣が姿を現す。前の一匹よりも大きい。牙をむき出しにして、左右から挟み込もうとしてくる。


「集中しろ。一匹ずつ仕留める」


(焦るな。順番だ)


「ライト・アロー! ライト・アロー!」


 セラが二匹目を牽制しながら連射する。直撃ではないが、動きを乱すには十分だった。


「風よ、刃となれ——ウィンド・エッジ!」


 アリアの一撃が三匹目の横腹を深く刻む。魔獣が怯んだ瞬間、セラの光弾が正確に頭部を捉える。


「やった!」


「まだです! 三匹目が来ます!」


 三匹目の魔獣がセラに向かって突進してくる。爪が眼前まで迫った。


(速い。避ける間もない——)


「光よ、壁となれ——!」


 とっさに掌を突き出す。


 その瞬間、何かが違った。


 光の膜が、ただの薄い壁ではなかった。掌から広がった光が、予想より数倍大きく、数倍厚く、まるで盾のように展開された。魔獣の爪がぶつかった音は、金属を打ち付けるような硬質な響きを立てた。


(なんだ、今のは——)


 腕が痺れた。消耗も大きい。でも魔獣は完全に弾き飛ばされ、二メートル以上後退していた。


 一秒かそこら、セラは自分の掌を見た。光の壁はもう消えていたが、指先が微かに白く輝いている。見間違いかもしれない。でも確かに光っていた。自分の意志で出した魔力とは、少し違う色だった気がした。


(……今、何をした? 俺は「壁になれ」と言っただけで、これほどの力を出すつもりはなかった)


「ナイス、セラ!」


「今だ! ライト・アロー!」


 怯んでいる三匹目に、光弾を連射。二発目で魔獣がよろめき、三発目で倒れた。


「残り一匹!」


「私がやります——風よ、渦となれ——!」


 アリアが両腕を広げる。周囲の風が応えるように集まり、渦を巻く。四匹目の魔獣を風の柱が包み込み、大きく宙に持ち上げた。


「ガオッ!」


 地面に叩きつけられた魔獣が動きを止める。その瞬間を逃さず、アリアが正確にライト・アローを放ってトドメを刺す。


「……終わりました」


 アリアが肩で息をする。四匹の魔獣が倒れている。


「やったな、アリア」


「セラも、すごかったです。防御、間に合いましたね」


「緊急しのぎだけどな」


(出てきた。あの瞬間、考える前に体が動いた。訓練が体に入ってたのか)


「魔力、残りは?」


「……三割くらい」


「私も、同じくらいです」


「なら、帰還だ。報告して、任務完了」


「はい。帰りましょう」


## 任務完了


 帰路につく二人は、戦闘の疲労を感じていた。


 魔力を消耗しただけではない。精神的な疲労もある。初めての実戦、初めての魔獣との戦闘。訓練とは比べ物にならない緊張感だった。


「……強かったですね」


「ああ。でも、勝てた」


「はい。私たち、強いです」


 アリアが少し誇らしげに言う。


(確かに、強かった。二人で連携し、魔獣四匹を倒した。これは自分たちの力の証明だ)


「アリア、怪我はないか?」


「はい、全然。セラは?」


「俺も問題ない。爪が掠りそうになったけど、ギリギリ避けた」


「見てました。あれはヒヤッとしました」


「俺もヒヤッとしたよ」


 二人で笑う。戦闘の後の、張り詰めた空気が少しほぐれる感じがした。


(緊張が解けた。この感覚、体が覚えてる。何かを成し遂げた後の、この感じ)


「でも、本当によかった。無事で」


「うん。アリアが無事なのが、一番よかった」


「……セラが言うと、ちょっと恥ずかしい」


「なんで俺が言うと恥ずかしいんだよ」


「なんとなく」


 アリアが頬を少し赤くしながら視線を逸らす。


「アリアのおかげだな。風刃が頼もしかった」


「セラの光弾も、すごかったです。防御も、よかったです」


「互いに互いか」


「はい。……でも、嬉しいです」


「何が?」


「私たち、守れるんです。自分たちの力で」


 アリアの言葉に、セラの胸が熱くなる。守る。それが守護隊の役目だ。訓練で学び、技術を身につけ、そして実戦で力を発揮する。


「これで、守護隊として一歩踏み出せたな」


「はい。自信がつきました」


 本部が見えてきた。夜の帳が下りていた。星が瞬き、本部の窓から漏れる光が、道を照らしている。


 本部に到着すると、隊長室でレイナード隊長が待っていた。


「帰ったな。無事で何よりだ」


「報告します。西側パトロール完了。異常を確認し、記録しました」


 セラがノートを開き、報告し始める。爪痕の位置、数、方向。そして、魔獣との遭遇、戦闘の詳細。一つ一つを淡々と、しかし正確に伝える。


「場所は、ここから西へ三キロ地点の森の縁」


「爪痕は四箇所確認。中型の魔獣三、四匹によるものと推定」


「移動方向は西へ向かっていて、痕跡は新しく、数日以内のもの」


 アリアが補足して説明を加える。レイナード隊長が顎に手を当て、黙って聞いている。


「魔獣四匹、撃退か。上出来だ」


 レイナード隊長が満足げに頷く。


「記録も詳細で、非常に助かる。これを元に、今後の対策を練る」


「はい」


「お前たちの初任務、成功と言っていい。自信を持っていいぞ」


「ありがとうございます」


 二人が深く頭を下げる。任務完了の報告。守護隊としての第一歩を踏み出した証だった。


 本部を出ると、夜風が涼しく感じた。戦闘の汗が冷え、少し寒いくらいだ。でも、それは心地よい疲労だった。


「セラ、お疲れ様でした」


「お疲れ様、アリア。今日はよくやった」


「はい。……セラも、すごかったです」


「アリアもな。風刃、かっこよかった」


「……ふふ、ありがとう」


 アリアが少し照れたように笑う。その笑顔が、セラの胸を撫で下ろす。


「帰ろうか。家で、ゆっくりしよう」


「はい。お腹、空きましたね」


「ああ、腹減ったな。アリアの料理、楽しみにしてる」


(幼馴染の手料理が待っている。それが今は、一番ほっとすることだ)


 夜の街道は静かで、二人の足音だけが響いている。初任務を終えた二人の背中は、少し頼もしく見えた。


「……ねえ、セラ」


「ん?」


「私たち、守護隊、やっていけそうですね」


「ああ。やっていける」


「なら、これからもよろしくお願いします」


「こっちこそ、よろしくな」


 星空の下、二人は家路についた。


 初任務の成功。それは、新たな旅立ちの始まりだった。


「ねえ、セラ」


「うん?」


「初任務、どうでしたか?」


「……きつかった。怖かった。でも、終わってみると達成感がある」


「私もです。こういう感覚、初めてでした」


「俺も初めてかもな。仕事で達成感を感じることはあったけど、こんな感じじゃなかった」


「どんな感じだったんですか」


 セラは少し考えた。


「……疲れが報われた、という感じかな。でも今日のは違う。「誰かを守れた」という実感がある」


「それが守護隊の仕事ですね」


「そうだな。誰かを守るために動ける。それが今の自分だ」


「今はある」


「うん。今はある」


「楽しめ」


 ふと、以前聞いた謎の声が蘇る。


(全力で生きる。守るために生きる。それが「楽しめ」の意味だ。セラは夜空を見上げながら、確信した)


 これからも、全力で生きていこう。守るもののために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ