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霧都ヴァル・ロンドリア探偵事件簿ー怪物に戸籍のある街で  作者: 虫松
裸の王様

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第5話 揺れる証言

楽屋へ。


重厚なソファに腰掛ける監督の

チャールズ・ウィットモア。


アレクシスは看板の写真を差し出す。


「この広告看板の二重構造をご存じでしたか」


監督は目を細める。


「二重?」


写真を手に取り、しばらく黙る。


「……いや。私は正面のデザインしか確認していない」


「裏面が隠されていました」


「初耳だ」


声は落ち着いている。


だが、ほんの一瞬だけ視線が泳いだ。


「宣伝効果の演出だと思っていた。細工など、私の指示ではない」


断言。


だがそれ以上は語らない。



次に呼ばれたのは若手俳優の

オリバー・グラント。


先ほどよりも苛立っている。


「レオナルドは最低でした」


感情が漏れる。


「共演女優を弄び、裏では暴言、暴力。

気に入らない相手は徹底的に潰す」


「あなたもか」


オリバーは目を逸らす。


「……何度も殴られました」


レオナルドは王だった。


誰も逆らえない。


だが、王は嫌われていた。


嫉妬。

悪口。

陰口。


舞台裏は腐臭で満ちていた。


「死んで当然だと思っているのか」


アレクシスの問い。

オリバーは答えない。


沈黙が肯定にも否定にも見える。




静かな控室。


ヴィクトリア・ヘイルは青白い顔で座っている。


ミレイアがそっと寄り添う。


アレクシスは柔らかく問う。


「妊娠されていますね」


沈黙。


彼女の指先が震える。


涙が一筋落ちる。


否定はしない。


それが答えだった。


「相手は」


唇が動くが、声にならない。


そのとき


扉が勢いよく開く。


ドミニク・ショウが立っている。


顔色は怒りで紅潮している。


「これ以上、彼女を傷つけるな!」


空気が張り詰める。


「彼女は被害者だ!」


拳が震えている。


怒りだけではない。


守ろうとする本能。


「あなたはなぜそこまで?」


アレクシスが静かに問う。


ドミニクは一瞬、言葉を失う。


「……当然だろう。彼女はうちの主演女優だ」


だが、その目は仕事上のものではない。


距離が近い。

呼吸のリズムが同じ。

ヴィクトリアが無意識に彼の袖を掴む。


その仕草。

その沈黙。

アレクシスの視線がわずかに変わる。



廊下に出た後。


ミレイアが小声で言う。


「どう思われますか」


アレクシスは答える。


「守り方が、仕事ではない」


「……恋人のようでした」


「おそらく、そうだ」


静かな断定。


もし二人が関係しているなら。


動機は強い。


守るため。

隠すため。

終わらせるため。


だが証拠はない。

あるのは感情の揺れだけ。


舞台は華やかだ。

だが裏では、愛と憎しみが絡み合っている。


レオナルドは屋上から飛び降りた。

それとも、

彼、自身が逃げ場を誤ったのか。


アレクシスの中で、盤面は静かに整い始めていた。

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