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Command Wand  作者: 赤茄子
第1章 Spread Spirits
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第19話 事情聴取

「なるほどね。それで霧が晴れたら、犯人は綺麗さっぱりいなくなってたと」


「そうっすね」


 田口の質問を陽斗が肯定する。


 陽斗と燐の知っていることを一通り話すも、田口は困惑した様子だ。無理もない。


「【束縛(バインド)】でぐるぐる巻きにされた人間が消えた、か。それにも忍者って……新手の愉快犯か」


「あっ、そうだ。それと、風に飛ばされそうだったので回収したんですけど、こんなものが」


「これは……」


 燐の取り出した透明袋の中には、一部が焼けて欠損した――


「……トランプ? うん、ハートの10だな。でも裏面は電子回路だ。ちなみに素手で触れちゃった?」


「一応取るときにハンカチは使いました」


「流石だね。それにしても、」


 用途も不明、使用方法も不明、回路も大部分が失われている。謎だらけのカードだ。


「ひとまずありがとう。俺はいったん事務所戻らないとなんだけど、あとでその、八代さんと次元君にも話聞きたいから、係長を通して連絡するよ。」


「分かりました」


「それじゃあ」


 そういうと田口は軽く地面を蹴り、そのまま宙に浮かび加速、あっという間に東の方角に飛び去って行った。

 第五階級魔法、風属性の移動系、【飛行(フライ)】だ。系統的には理巧がさっき使った【浮遊(フロート)】の上位互換に当たるが、緊急時意外に街中で使用するには届出が必要だ。


「ちゃんと飛行許可とっているのかしら」


「さすがにとってんじゃない? ちなみに取ってないとどうなんの?」


「改正航空法違反で捕まるわ」


「ひぇー」


      ―――――――――――――――――――――――――


「すみません。少しお話を伺いたいんですけど、お時間いいですか?」


 そう言って百華が女性に声を掛けて早三分、百華はしっかり女性と意気投合し、ガールズトークに花を咲かせていた。


「いやー結構伸びてきちゃって、今度私の髪切ってくださいよ」


「いいよ。それじゃ私の働いてるお店はねー」


「えっと、そろそろいいか。」


 那由多が呆れた顔でそう言う。本来の目的を果たしてもらわなきゃ困る。


「えー。盛り上がってきたところなのにー」


「そういえば、質問があるって言ってたわね」


 話が変わってしまって百華は少し残念そうだ。


「まーじゃあ私から聞きますね。私たち、そこの広場で起きたUFO騒ぎについて調査してるんですけど、そこの那由多が入り口で看護師さんと話している内容を聞いちゃったみたいで、」


 那由多が目を逸らして「すみません」と一言。


「あの日の話を聞きたいんだね。いいよ。私が知っている範囲で答えてあげよう。」


      ―――――――――――――――――――――――――


 私、山本香月(やまもとかづき)はいわゆるオタクだ。特に好きな漫画である『つれりあん』のアニメイベントは、それが発表されてから2ヶ月間そわそわしていた。


 その楽しみにしていたイベントで、その後10日間も入院することになるなど思ってもいなかったが。


 イベントの途中で生暖かい風が吹き始める。これが始まりだった。

 しばらくして空が数回輝き、少し遅れて体を震わせるような雷鳴が轟く。


 その最中、1人の少女が突然倒れた。


 赤い少女だった。一番最初に倒れたのは、あの赤い少女だった。

 物語の中で主人公、(あかね)が着たものと同じような、真っ赤なドレスを纏った少女だ。


 コスプレだったのだろう。不幸なことに最初に犠牲者になってしまったのだ。


 ぽつっと、何が頬に触れた。直後激しい雨が降り始める。

 イベントスタッフが慌てて対応する中、少女の周りにいた人が数人倒れる。


 さらに、その周りの人が次々に倒れる。全員が倒れるわけではなく、まばらになんとか立っている人もいたが、それでも頭や胸を痛そうに押さえていた。


 あぁ、私も呼吸が苦しいような気がする。


 そんなことを考えいると、コツっとケータイが地面に落ちる音がした。落ちたそれに目を遣ると、目の前の高校生くらいの男の子がその上に重なるように倒れた。

 そういえばそのとき、誰かに囁かれたような気がする。『次はお前だ』と。


 そこで意識が途切れ、気付いたら知らない天井を見つめていた。すぐ近くの病院に搬送されたようだ。


 腕に繋がれた点滴。意識のないまま丸三日経っていたらしい。私は特に症状が重かったようで、完全に回復するまで入院を余儀なくされた。本当に保険会社様様だ。


 それにしても、あの赤いドレスの少女は無事だろうか。病院では見かけることはなかったが。


      ―――――――――――――――――――――――――


「それでね、私の倒れた原因は雷雨喘息っていうらしいの。」


「――! やっぱり人が倒れた原因って雷雨喘息だったんですか?」


 やや食い気味に理巧が尋ねる。


「少なくとも私はそうだね。やっぱりって、報道とかされてないはずだけどどこで聞いたの?」


 陽斗と燐の仮説がほぼ確定になった。


「サークルメンバーにそういう仮説を立てた友達が、」


 山本さんはなるほど、と感心する。


「報道されてないのには理由があるんですか?」


 続けて那由多が質問する。


「なんか、報道規制がかかってるんだって。」


「報道規制ですか!? なんで、」


 百華が驚く。報道規制ということは警察などが捜査しているということだろうか。


「理由は分かんない。でも、こういう噂もあるの。上からの圧力だとか、脅されてるみたいな。」

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