1
私は神様なんかに期待しない。
周りの大人は私が毎日祈りを捧げ、国の結界を維持することで国の平和が保たれていると言う。
だから私は国のために6歳からかれこれ10年祈り続けている。でも国や大人の道具になるのはもうやめだ。
私は今日、私を守るために家出する。
「そもそも、神様なんているのかしら」
私室のソファーでお茶を飲みながら私は吐き捨てるように言った。
「聖女であらせられるお方が何をおっしゃっているのですか」
夕食を運んできた侍女が呆れと少しの苛立ちを込めながらお説教を開始する。いつもだったら信仰心の塊のような侍女たちがいる前で、というか人前でこんな発言はしない。だが、少しでも吐き出さないとやってられないのだ。私は侍女にバレないように呟く。
「私が神様だったら聖女をたかが第二王子なんかと婚約させないわ」
私は今日我が国の第二王子と婚約した。噂では第二王子は仕事は部下に押し付け、自分は学友たちと遊び回っているらしい。王族としての責任感はカケラもないようだ。そして今日の顔合わせでの第一声は
「地味な女だな。だが、まあいいだろう。聖女であれば私に箔がつくだろうからな」
である。あの時は、必死に怒りを鎮め社交辞令を返したが思い出すだけで頭にくる。本当に、私が神様なら10年も祈りを捧げる聖女をあのようなクズとは結婚させない。あれと結婚させるくらいだ、教会は私のことを本当に道具としか思っていないのだろう。今までは一応育ててもらった感謝を持ち、雑な扱いにも耐えてきたがもう限界だ。
真夜中、人々が寝静まった時間帯。
机の引き出しから紙を取り出し置いておく。
私は静かに窓を開け、周りに人がいないかを確認する。そして、片方を本棚の下に差し込んで固定したロープを窓の外に垂らしロープをつたって外に出る。
『今までありがとうございました。家出します。探さないでください』




