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16. 学生だからこそ創り上げることができる、未だ誰も見たことのない世界

「ちょっとみんな見てこれ!!」


 そう言ってひかるがスマホの画面を見せてきた。

 おそらく生徒が撮影したであろう画角でかなり荒い動画だったが、先日行われた修了式でのライブ映像がSNSに投稿されている様子だった。


「生徒の誰かが載っけたみたいなんだけどね、一年生グループのステージが伸びに伸びてTikTakで100万再生超えてるの、、、!!!!」


「「「100万!?!?!?!?」」」


 有名投稿者でしか見たことのないような視聴回数に思わず腰を抜かす。


「最後思いっきり音外したのが100万人に見られたってこと、、、????終わった、、、」


 まだトラウマが抜けていない和也には大ダメージだ。


「いやいや、トランペットめちゃくちゃ褒められてるよ!ソロバトルかっこいいって!」


「あれは確かにカッコよかったですね。思わず横転しました。」


「ははは、ネットスラングかと思ってたらまさか隣で本当に横転する人が出てくるとは思わなかったよ。」


 どうやらまちるは舞台袖ではあったが本当に横転していたようだ。


「実はあれボクと和也のぶっつけ本番のアドリブだったんですよ〜!」


「「「ぶっつけ本番!?!?」」」


「あれは胃が痛くなるから今後は勘弁してくれ、、、」


 大宮はよほど楽しかったようで嬉々として話しているが、和也としてはもうあんな焦りは二度とごめんだ。


「梨江ちゃんあれ本当に完全即興なの!?末恐ろしすぎる成長スピードだね、、、」


 向日の言葉にひかるや由梨奈たちが目を見開きながら真剣な顔でうんうんと頷く。


「コーチこの間は文化祭に向けての実験的なコラボって言ってたけど、何考えてるんだろうね?」


 そういえば、、、といって和也と大宮が顔を見合わせる。


「この間の本番終わってすぐに、ボーカルで歌ってた軽音の芦屋川さんに2曲分の作曲お願いしてましたね」


「ボクたちが演奏した曲、芦屋川さんが作曲してアレンジもしてくれたんですよ!」


「あの曲オリジナルだったの!?完成度高すぎて何かのカバーか外注だと思ってたよ、、、」


 個人でレコーディングを行っている向日は普段から曲の細部まで意識して聴くことが多く、そんな向日だからこそ、和也たちの楽曲の完成度には目を丸くしていた。


 そうこう話しているうちに、文化祭の打ち合わせで吹奏楽部と軽音楽部、そして演劇部はホールへと集合がかけられた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ホールに全員が着席した様子を確認すると、嵐山コーチが舞台の真ん中に移動した。


「え〜〜〜〜〜諸君、、、、、バズったな!!!!」


 年齢不詳ではあるが、自分たち学生より一回り以上年上の女性の口から若者言葉が飛び出したことで、ホールが若干のなんともいえない愛想笑いで包まれる。


 もう既に動画がSNSで爆伸びしていることを知らない生徒はいないようだった。


「特に一年生グループが素晴らしい働きをしてくれた!私も想定外だったよ!そこでだ。次の文化祭はそれをスケールアップしようと考えている。具体的には吹奏楽部と軽音楽部の人数を二等分にして、2曲演奏してもらう。一曲目はオープニングを飾るに相応しい、バンドを含めたフルオーケストラでのクラシカルな楽曲。2曲目は件の一年生が演奏したような曲だ。どちらの楽曲もストリングスを付け足して、一曲目の方はコーラスも付けようと思っている。プロの現場でもなかなかできない超豪華なセッティングだから、私もどうなるか楽しみだ!作編曲は修了式の一年グループと同じく軽音の芦屋川にお願いしている。アレンジには私も協力し、同期音源の制作も私が行う。そして演出にはぜひ演劇部の皆さんにお力添えいただきたい。文化祭が終わった暁には、君たちが作りたいと言っている音源、ホーンとバンドだけとは言わずに私たちが全面協力しよう!」


 思ってもいなかった報酬に「おぉ!」と演劇部から歓声が上がる。


 和也たち一年生グループは、あの修了式の演奏をもっと大きいスケールで披露することができるという事実に胸の高鳴りを感じていた。


 向日やひかるたち2,3年生グループも、正直なところ一年生グループがあのクオリティの演奏を披露していたことを心の底から羨ましいと思っており、前回参加していなかった吹部メンバーも期待感を抱いていた。


「学生だからこそ創り上げることができる、未だ誰も見たことのない世界。この時代だからこそ、吹奏楽部の在り方や音楽界の発展に大きな影響を与えることができるかもしれない。いや、そうだと信じている!大変だとは思うが、ぜひ君たちの力を貸して欲しい!」


 コーチの熱い演説に大きな拍手が巻き起こった。


「あとちょっと演奏に関する打ち合わせがあるんで、演劇の皆さんは先に退席してもらって大丈夫だよ〜」


 ホクホク顔の演劇部員たちが軽い足取りでホールを後にする。


 ーー全員が退出したことを確認して、嵐山コーチがまた話し始める。


「よし、じゃあ君たち、、、、、、合宿するか!毎年コンクール期間は2泊3日で海沿いの施設借りて合宿してたんだって?せっかくだし今年も使わせてもらおうか!」


 コーチのその言葉に、一年生たちと軽音の顔が明るくなる。

 和也としても夢のようなイベントだ。


 合宿、、、ラノベではバーベキューや海水浴であんなことやこんなことが起こる、いわゆるご都合ライトノベル的展開が起こるイベントだ!

 和也はワクワクしながらふと周りを見ると、1年生とは対照的に、2,3年生たちの顔がやけに暗いことに気が付いた。


「ん、どうした?みんな楽しみじゃないのか?」


 嵐山コーチもその雰囲気に気が付いたようである。


「あー、、、。私たち、正直あまり合宿に良い思い出がなくてですね、、、。毎年コンクール直前に行われていたので結構雰囲気がピリピリしていまして、、、」


 部長は少し言葉を濁しながらそのように話す。


「なんだそんなことか!安心しろ!コンクールには出ないと決めたわけだし、そんなに朝から晩まで練習しろとは言わない。海にも行くしバーベキューもする。あと今回は軽音と合同だ。まぁなんだ、私がこう言ってしまうのもどうかとは思うんだが、みんなで遊びに行って気分転換に練習する感じだと思ってくれたらいい!」


 コーチの言葉に、部員からおぉっ!という歓声が巻き起こった。


(俺としてもこの吹奏楽部という環境で海水浴に行けるという事実を、神に感謝しながらしっかりと噛み締める所存だ。危ない、にやけそうだ。)


「和也、何ニヤニヤしてるんですか。気色が悪いですよ。」


 まちるのその言葉で一度目を瞑って深呼吸をし、妄想から現実世界に戻った。


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