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―3―畏怖の世界線「ジパン・バルラー」  作者: 醒疹御六時
一章、始まりの手ごたえ
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8、分解と再生

なァ・・・もし、俺が居なくなったらお前はどうする?


万が一、誰かに、何かに教えを受け生きたいときに如何に成立させる?


それは辛い事だろうが、温かな日々を過ごしてほしい・・・



【愛する子へ・・・父より】


      ◇


小父おじさん、生命って何です?」

「結論、決意、結局、そして理論なる原始だよ」


孝弘の父・治具流の遺言どおり、彼はリプラと結婚し二つの生命を宿し親となっていく。



“皆さま、熱い声援を有難うございました。これから私達、彌汲家一同なる、神成家との婚姻を花々しく式場にて迎え入れようと思います”



「結婚とは何だろう?」

「季節じゃないのか?」



“孝弘君、リプラさん、結婚おめでとう!君達が同じ生命学理論で結び付かれたという、実情に併せて私達は祝いの花束及び、挨拶を挙げたいと思います・・・では、皆さま乾杯の合図を!!”



「孝弘ォオ―――おめでとォォオ――――ッ」

「リプラァァ―――幸せになるのよォオ――――ッ」



“では皆さま、乾・杯・!!!”


―――

――


――――ォギャア―――ホギャアア――――


“彌汲さん、早く・・・ッ、元気な男の子がッ!!”


“リプラ、よく頑張ったな!俺達の子だッ!!”


“孝弘さん・・・私、頑張ったわ・・・”



―――“お前の名前は昌弘だよ”―――



きゃきゃっ、ちゅぱちゅぱ、あううゥ?


――“「広く唱える」と書いて、昌弘と名付けたぞ!”――


 リプラが巫女の力=大いなる(神の)意志でライト・オブ・ホールへと“変換”を求めたように、生命の愚かさを縮小させた。それと同時に孝弘がそのライト・オブ・ホールに巻込まれ魂の変容が始まると肉体的死亡と扱われる。それを理解した最初に産まれた孝弘とリプラの長男、昌弘は新たな理解者・臣子道彦へ導かれ、自らの家族へ試練を与えた。


「昌弘、生体の理屈は、天なる言葉に意見を介すことだ」

「おれには分からないよ、小父おじさん。父さんみたく博士になった訳じゃないからね、理解の殆どが語学の反対の自然生命体の理論に持っていかれるよ」

「それは、どうも・・・(孝弘、お前の息子は全く、理解よりも潜伏的だな)」


 再生が最初で、分解が次に始まると、母胎から始まる答えは宇宙でなく、前世の答えから来ていると語源が始まる。そういう由来が治具流の詩集に含まれていた内容によく似ていて誤魔化せない。

 例えば、倒れると息を吹くまで意識が弱まり体温が低下する。それまでに幾つものプロセスを含み、体が周辺の向かいに反応を示そうとするのに眠った様に答えが返せていない。数分すると「ご、あ、が・・・」と語源を呈して人が理解できるまでの時を重ね、ようやく目を覚ます様になる。それまで体液なる唾を吐いていた形跡があり、幾つもの打撲痕を残して居たり、脱力感に気付いてしまう。


 脳の中で数式を何度も答えては神経適応プログラムを始めて打つかのように態度を改めると、突如して再生と分解のための大気温度を上昇するのと同様である。マグマが吹き荒れて、外気に触れると急速に冷えて産毛から肉体が凍る様に、自然石に挟まれたように形を変えてしまう事もある。

元々、骨格を形成していたのに、微生物によって浸食されると、食べられるので動く事さえ出来なくなるのも同様に、再生と分解が始まる。そのようにして、昌弘は自然的に生命とは如何なる存在なのか、祖父であった治具流の遺伝たる粒子が記憶され、勉学に励むことが出来たのかも知れない等と、愚痴っぽく話す事もあった。

 ――――それ故、引籠る時間も沢山あったが、特に発言にも能率的にも問題はなかったようである。



「道彦小父さん、親父の云う天才って何だろう?」


「天才とはね、妄想なのさ。だから君はその疑問のとおりに、再生と分解を始めているだろう?」



 だが最後は次に生まれていた孝弘とリプラの長女、リグと同じく子供をリプラへ託し、その生涯を見送ると、ジパン・バルラーで道彦の孫・亞里亞=ALIRによる宇宙移民計画を見守ったのだった。それも過去に遡れば、幼い記憶に過ぎなかった。


「リグ小母おばちゃん、遊びと手加減って何?」


「それはね、細かい事と、理解に追い付く礎となる栄誉ある形なのよ?」

「う~ん、例えば?」

「あなたのお父さんみたいに、沢山の関りを持つことなの。そこから人助けをしては、誤りを直すとか、そういう意味に近いのね」


「ふうん、大したお爺ィだこと・・・」


 リグは道彦の科学によって起きた小型ライト・オブ・ホールの実験車両によって偶然、事故を起こした。しかしその体に眠る、虹色の意志が備わっていた為に砕けた肉体のまま保存されていた。

 それなのに偶然、道彦の手術治療によって研究対象であった人工生命体の母体となって蘇り、成長を続けて子供を産んだ。


「そういえば、わたし達は姉妹と同じなのね」

「意味、分かんない。お爺ィはプログラム自体は消去したと言っていたけど、何かの間違いじゃないの?」

「認知不足か・・・それも亞里亞ちゃんらしくていいね」


 その様にして理解した亞里亞だったが、自らの体が祖父、道彦から与えられた人工生命によって、身体記憶能力が上昇している事を“分解と再生”として示していた事に気付いたのは、術後からであった。体に侵入した微生物が、新たな体で分解され、出来た傷が再生するまでに数分ほどで蘇った。


 ―――全く創もなく、障害もなく、元通りとなって居た―――。



 それから暫くして、機械生命体と成ったのは、人類の存亡と希望によって発明と開発に携わってからだった。自らの人工生命体のみでは寿命が追い付かず、新たな部品なるとなる人工的に造られた臓器・骨格を移植して己の細胞に定着する小さな手術を受けていた。


 “人工生命体移植手術”、――――それは大掛かりに切開するのでなく、内視鏡と虹の鉱石なる細胞隔壁を使用して新たなる機材や、他の人工生命体の原動力となる、エネルギーを送信するための媒体として理由付けられた為だ。


「何?呼んだ??」

「宇宙の第一革命者となるのだぞ、ALIA。希望なる存在よ・・・」


 そう言い残して、数年の時を過ごした道彦は、彼女を見送って世を去った。核融合生命体を非核融合生命体として自らの孫を科学者達へ提供したのである。

 その魂と意志を記憶して、宇宙から飛来した生命理論を完結したのはその時だけではなかったが、別次元の宇宙の科学技術によって受け継ぎという形で完結に向かって行った。


「宇宙の一流いちるとなって彷徨った時は不安でした。ですが、仮説にあるワープを体験すると、どうも体のすべてが分解し、別次元の宇宙に辿り着いた時には再生を促されていたのです。お陰で記憶が戻り、意志と魂の分離のような体験も書面的に活用することが出来ました」


    ◇


 光速よりも速い、拘束を体験する事を魂達は「彷徨ったのだ」と勘違いさせた。それは幽体離脱に似た、形式で動いていたのだが、まるで苦痛を感じないというのが多く在った。幾つもの次元と未来を受継いでやってきて、長い旅を受継ぐようにその帰りを待っていたのだから、当然、話を聞きたくなるのも「魂の役目だろう」という事を、前世や後世に語るに違いないと言い切りたかったのだ・・・。


“それは大変な旅だったね。もし、孝弘が生きていたら『俺も体験したかった』等と言っていたに違いない”



はかなき夢、愚かにも等しい赦し。


それでも分解を始めるサインは常に適当だ。


短い時間で再生を促すためのコールにも鈍感だろう。


 しかも、それ自体が現実なのだから、「致し方ない」等と謳う者も居たほどだった。鮮やかに宇宙が微笑むように人類はあの頃とまた、異なる生命の在り方で変容を遂げた生き物だと推論付けていた。


「ところで、ALIAも体現したように、結婚とは何でしょう?」

「一説によると、ミクミ・ジグルという人物が居てね・・・」


    ―――


こうして預言書とされた“詩集”は伝記となった。

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