3-3、ヒカリノキョウカイ
誰しもが通る門として設立された、生命学理論の掟とされる学園であったが、それが何時しか研究所兼会社として成り立った。ある学生は「ここでは人体実験をされるから気を付けろ」と言っていたら「言及すればボーナス30%の32万Rin貰える」と資金調達を思慮すると「生命医学研究所として旗分けできる」等と将来的に程遠い夢を叶えようとしている。
「草分け作業ならいつでもできるから、お前達も執拗に詮索するのはよせよ」
「は、はぁ・・・」
そんな中、19歳の彌汲孝弘と臣子道彦が入社を祝い、再会した事は近しい夢の様な感覚であった。将来的な希望や願望を尋ねた相木俊郎という上司が面接官として起用されたので、二人はやや、落ち着きのない態度を見せていた。それでも彼等を新入社員として迎え入れる事を彼は「運命の歯車だ」と言って、社長へ直談判したのである。
「時と共に新たな世代がやってくる。私もまだ若いし充分、若者についてゆける」
「それは、社長・・・いえ。当然、幸せでしょうね」
それ程にまで最古の文明から導かれた意志がこのようにして再来を期するとは神なる宇宙をも凌駕した事だろう―――。
生命学理論を基に、様々な研究テーマが作成された。そこで孝弘と道彦の二人の直属の上司となった俊郎は、他の部下と同じようにまず、数式と科学について根本から内容を訂正するよう求めた。
それは研究と実験のデーターの更新の繰り返しになる事も含め、”超自然界”とされる宇宙から取り入れた光線の元素記号であったり、地上から発掘する生命の原理であったりと先ず、「人は何故に新たな体を求めるのか?」を協議して再びその対象へ生命の頂きを呼び覚ませばいいのか、と考えさせる日々を送るよう、指示していた。
一言目には「課題練習は次の日にやればいい」と語り、
二言目には「人工生命体というのは――」という話を持ちかけ、
最終課題に「なに、給与は変わらんから気にするなって」と極論を述べる。
勿論、二人も年を重ねる内にも時が刻まれ、徐々にその業務のスタンスを支えるのか、一から学ばされて繰返すごとにまた、同じような手順で生命学における根本を叩きこまれる。
それでもめげない孝弘と道彦の態度に感服するようにした俊郎は、時折と食事に誘ったりもした。会社の理念として”部下を思いやり、自らを与える”という信念こそが”後の時代に恵まれるであろう科学だ”と評して、紹介しているのであるが、それも新たな部下を従える内に「変化するのだろう」と、俊郎は言っていた。
「生命における薬品と手術技法・科学変化は、ほぼ同等のモノと考えていい」
「なるほど、同等なのですね。時に相木先輩、今日は飲まれますか?」
「そうそう、飲みましょう!・・・俺達は奢れませんよ?」
「ははは。お前達も益々、ヒカリノキョウカイに慣れて来たなァ」
”無理して働くことはない”と相木俊郎は業を打つように二人だけでなく、部下にも同様に語っていた。それも社長の方針に何ら神秘性を窺えなかった俊郎だからこそ、生命医学理論に「製造・開発」という項目が目に入って以来、退社を考えるようになった。
そんな時に、自然生命理論を重きとした阿彌陀学園を卒業した神成リプラが20歳という、やや遅れた年齢で入社してから新会社設立を目標とする事にしていた。つまり「足掛けが足りない」という意味でだ。
◇
「君が――、神成リプラさんだね?」
「はい―、私が神成リプラです・・・」
「君は、阿彌陀学園卒業前に巫女で働いていたと履歴データーに載せて在るが?」
「私はかつて、宇宙の神、スタヴァ―・マーズ現象を目撃したのです」
「あの、光の束による災厄とも記載しているが・・・それは何かな?」
「自然生命学理論に則ったライト・オブ・ホール。これを予見しました」
「詳細は、16歳だったと在るが、この論文は面白くも無いね」
「お褒めに戴き光栄です・・・」
「よし、社長に取り合おう。そのまま君は待って居てくれ」
後に彌汲孝弘の婚約者となる神成リプラは物腰怖気ず、前を向き凛としていた。それは誰にも選ばれなくて選ぶべきして、その方向を信じるという理念を植え付けられた彼女には、仕事と家庭の両立は巫女の仕事で覚えた、生命の在るべき姿としての学論が備わっていた。
以前はリプラの相方として動き続けていた17歳となったばかりの妹コトリは今や高等大学学園に、立役者の補佐として動いていた中学生で15歳の弟アプセ自身も間もなく企業の社員立候補となっていく。
彼女自身、これまで家族に囲まれてきた時代も、今や新入社員として生命学理論の一助となるのである。そのようにして孝弘と道彦の部下となってゆくのだった。
「相木先輩、一体どうしたんです?」
「既に新会社を建築しているところだ。お前達も来ないか?」
「いえ。私は今もヒカリノキョウカイの社員ですが、何かご不満でも?」
「同じ志を持つお前達を現・社長から引き離したい」
「ん?先輩、腹でも壊したんですか?俺なら大丈夫ですよッ!」
「大丈夫。他の部下も呼んである」
これまでの社訓や方針から、生命学理論が取り残されそうになったから、次は人工生命学理論に則った研究をしようと言い出したのは、他でもない相木俊郎だった。
つまり、ヒカリノキョウカイは世間からは大企業とされているのに、世界からは見放されていると首を横に振ったのも相木俊郎自身であった。
「な!社長にはもう、事業展開・分業の為に退社扱いとして辞表を出しているんだ。いいだろう?」
「でも、辞表を提出するという事は、一切の援助も支援も受けられないという、一からのスタートになるのと変わらないじゃないですか?」
「そうだよ。どうしたんです?先輩らしくありませんよ。なぁ、道彦にリプラ、お前達も何とか止めてやれよッ?」
「相木先輩・・・私は一応、巫女をしています。何やら宇宙の頂きに昇れない焦りを感じてしまいます。取り残されると言いましたね?つまり、現・社長を退かせたかった、付合い切れない、という意味ではないのですか?」
「俺は戦場に出掛けた頃から、生命医学の根本を学び直そうとしました。それが今や相木先輩の人柱となりそうです。今後の展開は見込めるんですよね?」
「流石、俺の部下だよ。あぁ、その通りさ。もう後ろには振返れないんだよ」
「先輩・・・」
こうして一人、二人、数十名と株式会社ヒカリノキョウカイを去っていく事となった。当然、相木からは社長にこれまでのお礼と、お詫びを告げていたのだが、宇宙はそれを生暖かく見守っていた。それが最古の世界線、ブレトルの分身で器質とも呼んでよい程の態度だった事には相違なかったのだ。
【テレビ】
≪あの、大企業と誇られた株式会社ヒカリノキョウカイは―――≫
【インタビュー】
「名前の由来は、弥氏の寺の儀式から、”光の導き”として与えられたのですよ。ふぅ、あの頃が懐かしい・・・」
―――その後、ヒカリノキョウカイは親会社から倒産申請書を与えられ、他の業界によって拾われては見捨てられ、大企業から小規模事業所として、相木のビジネスパートナーの一環として働きかける事になったのは、相木の記憶に新しいものとなった。
「いいんですよね、これで・・・」
「そうだ。俺のチームは完璧だ」




