1-2、友達と言うもの
「そういえば、俺達はいつも・・・随分と遠回りしてきたよな」
「あぁ、金も無いのに、あるフリをして親からも支給されない状況だった」
「きっと――、”後払い”しか考えなかったんだ」
「それもずっと、二人で話している内に―――、」
まだ、6歳の頃だった。近所のスーパーで美味しいお菓子が欲しくてよく、親にねだっていた頃があるという、子供らしい記憶が一切なかった。どちらかといえば親が忙しくてお金が無かった――。
『みちひこ―、宝くじ天神まんじゅうはおれのモンだぞぉ~』
『だって、たかひろ君がぼくのおまんじゅう、食べたからじゃ?』
親が遠い世界中を駆け巡っている間、道彦の家である臣子家のおじさん・おばさんの家によく、お世話になっていた。俺達二人はいつものように、欲しいものは欲しいといいなさい、と遠慮なくていいよ、と食べ物を分け与えて貰った事が在る。
だから無いものねだりをしていたり、要るものは欲しいと甘えて居たりして考えないように過ごすのが一つの生き方だと、臣子家の祖父母に教えて貰っていた。
『じゃから――、子供におやつばかりあげてはならんと――』
『よく言いますわぁ!私ぁ、飯も食えん時代によく、”生命理論”とは何か?と学んでいた頃、人体に栄養を与えた方がいいと――』
『ねぇ――、ごはんちょうだい~』
『おれも、早くおやつ食べたいよぉ~~』
食事を摂るよりも珍しい”お菓子の方が子供にとっては好きなんだ”と、臣子家のおじさん夫婦の祖父母はよく言い合いをしていた。なのに、俺達は塾の帰り道にもよく、スーパーを眺めては諦めるように帰っていった。友達というのは時と共に遊びと手加減でどうにでもなる、生き物なんだと感じさせられた。空気が冷たくてもだ。
『なぁ、みちひこ~おれの手、ちべたいだろう?』
『あ!・・・ひゃ、や、やめてよぉ~~・・・ふぅ、はぁ、つめたかった―――、』
『わははは。みちひこ、おまえの背中いつも赤くておもしろいな~』
『たかひろ君だってほっぺた真っ赤っか、だよお――?』
例えば、冬の寒空では雪かきをする老人や若い者が多く居た。しかしそれも人工生命体も無い時代だから、手持ちのロボットが代わりにやってくれる。俺が道彦の手を掴んで離さないようにと、アイツの言葉を取り紡いだ。すると道彦は言い訳するなと言って、掴んでいた手を離さないように”次の街へ行くぞ”と周囲の連中を巻き込んで居た、俺の話を聞こうとしなかった。
「もし、俺達が別の時代に居て、異なる物体だったらお前はどうする?最古の実験には生命体はおろか、星だって昇れていたのに諦めるように文明は崩れ去った、という訳だろう?」
「いや、彼等にも事情があったんだろう。逃げ場の無いような狭い惑星で生命の頂きを得られた時に、自由な言葉や考えだけで行動していた筈さ。でも、そこから囚われないように新たな道を選んできた―――」
時に詩人のように語る俺達二人に入るのは、必ずといって、いじめっ子か、同じクラスの女の子だったりする。それ程に俺達の態度や意見に気になる場面があるのか?と尋ねたりもした。
しかし実際はそうじゃなく、生命の本質という、繋がりが欲しくなる体温や心の籠った意志を尊重したくもなる訳らしい。
―――そう、偶にあるんだよ。
『たかひろ君、また、ただあき君がいじめに来た!』
『よ、お前達も勉強しているんだね。また、プロレスごっこするか?』
『ただあきかよ。おれ達はプロレスよりも考える事が好きなんだ!そこどけよぉ』
『へへ、ま~たそうやって抵抗してると、こっちが勝っちゃうぞぉ~そぅれ!』
このようにして力技で優しい言葉を語りかけてくるヤツこそが、俺達がいじめっ子と言っていた悪ガキだった。
道彦は言葉で言い返す方だったが、俺は力に負けない様に意志を示した。どこか懐かしい繋がりが欲しかったんだと感じて、負けた。負けたら頭が熱くてつい、泣きべそを搔きそうになっていた。
最初はお菓子だけを目的にスーパーに出掛けていた筈が、異なるイベントによってこうも逆に取られる。
生命の頂きとは友の友情をこうも引き裂けるものなのだろうか――。
親が居ても誰も教えてはくれない―――。
「なぁ、あの時だって俺達が負けたじゃないか。それでも俺達は負けない様に勉強ばかりをしていたんだが――、」
「孝弘、お前は力任せに相手にし過ぎるんだよ。面白く楽しければ何でも手に入るような気持ちにしても、あまりに力差があるから応用した方がいいと俺が教えた」
『ねぇ、臣子のおじさん、おばさんさ。おれ達はおやつが欲しくて生きてきたのかなぁ~』
『まだね、人類はおやつも無い時代に頭を使ってこの星から別の星を探索した。するとある生命の存在がある事を理解し、機械を操縦していたんだよ?』
『ほらぁ、たかひろ君はおやつ”ばっかり”食べるからお金の無いときに話をそらされるんだよぉ~』
『なんだ、道彦に孝弘。お前達はそんなにおやつを取り合っていたのか。まるで眩き太陽に膝を組んで居た様な・・・まぁ、それも同じ事か―――、』
『道彦に孝弘君、あなた達も大人に教える形を取れるのね?”訳あり親子・兄弟みたいな友情伝説”って本もあるんだけど、まだ難しいかしら?』
『またぁ~?』
道彦が頭脳を凝らしていたのに対し、俺は力任せに頼る癖があった。頭を使っておやつが欲しいとせがむように、周囲の大人は自らの力で家を建て、周囲の友達なんかと酒を酌み交わす。そして子供が困らない様に、と料理を振る舞っておやつを与えてくれる。俺達はそう思うと只の子供にしか見えない存在だったに違いない。
「親さえ居たら、あの時の俺達はいじめっ子と女の子の噂には惑わされずに、同じ場所へ行ってさ、道彦だって違うおやつを食べていただろう?敵わない力に抵抗しなかった」
「そう、俺達は勝つことばかりを意識して、同じものを分け与える事すらしない人類だった。それに孝弘、俺達は偶々、子供が居たから分け与える事を意識した」
だから俺達は親のお陰で知り合えたんだ。
でも、もっと遥か遠き世界から魂の繋がりを求めていたのだろう――
――あぁ、こうして生きているからな――
友よ、
同じ手をまた温めよう。
いつか―――




