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―3―畏怖の世界線「ジパン・バルラー」  作者: 醒疹御六時
一章、始まりの手ごたえ
3/37

3、弥氏の寺の祭りで

【この寺の由来は、赤一色を七色に輝かせることで、災厄を退ける事から始まるのです。過去に幾つもの商人が村人と共に、木々を伐採し、虹たる鉱石を発掘し、正方形に加工。そこへ虹の泥を塗りつけて12カ月の期間を5周期迎えた時に輝かせるという技法を行いました。それらの木々を囲い、象る様に三角四方形に細工する事で神々の末裔が降り立ったといういわれが示されたと言います。最後に、辰美愛玖たつみ・あいくという法師が祭る事で、ジパンの一角と云われるピラム・ビットの形を造り上げた事から、弥氏の寺と呼ばれるようになったのです。】

「拓美、お参りするのよ?」

「んん~~、どうやってぇ~~?」

「ほら、この前に在る賽銭箱さいせいんばこに1Rinを投げて」

「ンン――とい!」

“チャリン”


      ◇


 ――――異歴216年、弥氏の寺の一角に神社が設けられている。全高56メートルの山道に階段が設けられた寺。そこでは年末年始の祭りが行われている。神成家とその親族による神降しの願掛け用の道具が売られており、時には運勢占い、他の業者仲間による個店が設営されている。そこで集まる人々は各々の祈願に訪れている。

 毎年の行事なので神成一家にとっては大忙しであり、それもまた自然的な生命理論とよく似た動機にも思われた。だが、そこに“大いなる意志”の存在が強く集まることは未だ知る由もなかった。この世界での通貨もRinリンと呼ばれている事も在るので時折、その価格と異なる認識を持つ者も居たのだった。

“あ、巫女さんだ・・・!すみませ~ん、”

「思春期特有の健康成就の願掛けは500Rinとなります。一番小さな通貨が1Rinとなりますので、小銭であれば10、100、500Rin・・・紙幣は1000と1万Rinなのでお客様が100Rin持っておられるなら5枚、紙幣ではお釣りが出来ますよ?“リリィ―ン”」


 ――――だが、それは一方でも同じ現象の様に起きていた。まるで天使のリングが連なる様に、羽を広げた出来事が他所に渡り幾つもの世界を通り抜けていったのである。今一度、願いを叶えて欲しいのだと感じていたのは他でもない誰かであった。


“ジャリ・・・おい、待てよぉ”

「あなた、私があげたの落としただろ?アレ、お爺ちゃんから貰ったんだぞぉ~“ズイ”」

「そうよ“コロンッ”孝弘、君は14歳のままじゃないのぉ!少しは真里香、あ・・・っ」

「“ペッ―”俺はそんなガキじゃねぇって。もう――、居ねぇし17歳なんだ。コレ返す」

(こんな時にアイツが居ないのはとても不便だけど、事情・・・だよな・・・)


 ――――願いは、利便と不便を呼ぶ。お互いの事情を鑑査するように、Rinの音が鈴の願いを叶えるかの様な現象が起きていた。それも天候という形式的な宇宙の滞りによって寒波を狙っていたのである。


“ヒュウゥゥウウウ――――”

「寒い。俺はここで一体、それで何を学んでるんだ・・・―ん、これは光?虹か?」

(俺は、僕は・・・この雪も導かれて何処かへ向かうんだろうか・・・預言・・・)

――――冬の祭りは時として偉大である。

何故なら、太陽が隠れているからである。

 理想と言うべき理想を経て、固まる宇宙の遺伝たる虹が、再生と破壊を両立させたときには、大いなる遺伝なる意志が記憶の狭間の中で便りにする電報を期した。

 それは、神成家の長女であるリプラが孝弘と道彦の魂と交差したのは彼女が15歳の頃だった事と相成る。これはまるで同じ場所の生まれでその魂同志がぶつかり合うかのような現象である。

 ――――それなのに3人とも別々の地にその身を置いているのだった――――。


「今日も涼し気ですね」

「俺は半袖しか着たくないんだ」

「でも、鈴が鳴りますよ?リリ―ン、と音が鳴る様にお腹も空きません?」

「いいの。俺はパン一個食べてりゃ、腹は空かないの」

「まぁ、悪戯に時間を過ぎ去るのに、それでも流の子孫のように隙間を埋めていると?」

「理解に乏しいな。やっぱり、眩しい筈の太陽が隠れてりゃ、アンタも只の少女だな。もう少し勉強しなくて生きればいいのによ」

「願い事はもう済みましたか?10Rinお願い致します・・・」


 弥氏の寺では時々、このような願い事を申し出る者も居る。唯々、話を聞いてくれとか、話題を盛り上げてほしいとか、どうでもいいから悩みを聞いてほしいとか、ありとあらゆる方向の無い方向性の話題の相談が尽きない場合がある。

 リプラからするともう少し、両の手を合わせて「願いを告げて欲しい」と言いたくなるような若き習慣だった。弥氏の寺が建設されて以来、変化を取入れると、どうも乱れる形を取る様になる。それは何処の地域も同じような形で行われているのだろう。


「冬以外の事ですね?かしこまりました・・・」


      ◇


・春の祭り

標識がある。

【弥氏の伝統で、卒業と入行という形があります。この弥氏の寺に設置された箱から祈願袋を購入する事で、祝い事を労うといった効果があることを、農をあらゆる災厄から育てるという意味で一つだけ叶えてくれるといった、路を作ってくれるという訳です。全100文字程の文章には、あらゆる祈願が書かれています。その意味を喉に通じる事で、祈願成就したことになり、それを箱の傍にある竹に縛る事で更なる、年貢を納めた効果となります。】

「ママ、今日も学校で100点満点取れたよ?」

「流石ぁ~私の子!愛して居るわ。ささ、手を合わせて――」

「親父・・・あの世はどうだ?オレはもう学校の専属講師になった。困っている人を助けたい一心で独学で学んだんだよ・・・」

「おばあちゃん、ぼく、さんすう、できました・・・せんせいから、ほめられました・・・ですよ?」


 そこには様々な成績を得た者達が訪れていた。それで神が喜んでいるのかどうか、といえばそうとは言い切れない。何故かというと、成果は己の為だけではなく他の者にも分け与えられるものだと、学びを得た結果から結論付けられたもので、それが災厄から守るとも言い伝えられているほどだ。皆、他人の様だったのに、いつの間にか家族のように接している。それも人類が同じ感覚で居られる時間が増えたからだと考えられている為だった。弥氏の寺では、成績よりも己自身の気持ちに沿った期待に応援をしている形を取っている。


・夏の祭り

貼紙がある。

【夏の伝統、弥氏の夏祭りがあり、互いの地域の交流の場として食を交えて、お互いの厄を焼き、吉を舐めるという行いがあります。焼くというのは意志を花火として灯を挙げる事を示し、舐めるというのはこの寺で配られた飴を舐め、互いを合わせ、魂を飲むという意味を指示します。これで雨に濡れたとしても、雷に打たれたとしても、その願いによって撥ね退けられるという糸を手にするというご利益があります。】

「げ、げぇ~~苦い・・・ぺっぺ、」

「コラ、厄除け、吉寄せをしている最中に飴を吐き出すんじゃない!苦いからこそ味がすると思って舐めろ!」

「これを息を吸いながら薬草に煎じて飲むと、違法コピーを不正アクセスさせずに乗っ取られる事は無くなるという・・・脱見さん、本当ですかね・・・」

「遠木よ・・・若いと乗っ取られる時に、白が黒になる。誤魔化せない表裏によって見過ごすわけにはいかん・・・飲め、」

「お爺様、我が家の家計は安泰です。今年こんとしも雨に濡れては配達に行きますよ。それに雷には車を使います・・・」


 正義と悪。それ等を見分けるのは農災が起きると、実りが来ないから秋の収穫が遅れるという話もあった。そうならない様に、時を止めて欲しい、天候にも負けたくない、納付が送れない様に付箋を貼って止めて置く等の“対処”を可能にする祈願も併せられていた。それ等を未然に防ぐのにも、この屋台の数は子供にとって楽しくも面白い出来事に相違なかった。

 大人だって恋人を連れたり、光学フォンを使用してのトーク交換を行う者まで居る程なのに、無理を押して介護車で送迎して貰う等の措置を取る者まで居る程に、人気を博した祭りは、どちらかと言えば夏の方が多かったのは言うまでもない。だが、この弥氏の寺で願うのは正義と悪の真ん中である。それ故に純粋さが貴重とされるほどである。


・秋の祭り

のぼりがある

【枯れ木から落ちる、落ち葉を親子と老孫がほうきで掃き集め、弥氏の寺の神樹へ納める事で、“冬を越す”という祈願成就を差し表します。祈願の由来は、脳を肥やすための堆肥を集めると、次代の農を更なる成長へ遂げられ、春には花が咲くという輝かしい季節が在ったから、かき集めると農が肥やされ、美味しい幸せがやって来るのを助けるという事からです。】

「今年の実りは順調でした・・・浮隙うきすきさんの所は塩梅、よろしか?」

「ええ、脳を使いました。孫からトレーニングと言われましたが、肥料の組み合わせがこの寺の祈願によって守られたん、初めてですわい」

「冬になると、個人情報を扱う業者が沢山来ますよね・・・わたしのアパートはセキュリティが厳重でどうにか大丈夫でしたけど・・・」

「セキュリティ・ホールを抜けてくる輩が増加するって聞いていたけどね。でも僕のマンションじゃあ、ジャンクパソコンでも起動できて、取り換え可能だから」

「宝くじが当たった、それも100万Rinも!」

「銀行、閉じとけよ。あんたの所、田舎だからいいけどね噂が多いでしょ?」


 子供からお年寄りまで、本年度の祈願の収拾を着ける事に安泰を持ち込む者も多かった。そのようにして脳と、農を組み分けて随分と願いを叶えて来たり、寺に願い事を告げ直したりして、奇妙な現象からも己の身を防ぐ手段を狙う者も居る。そのようにして解決から解消へと時を掛けて、ようやく次の年を越せそうだと冬にお参りにやって来る。

 いたずらに穏やかに、愛せる時を長引かせたいと生きている以上は願うからだ。この弥氏の寺には様々な効果が現れると有名になったのは、巫女の祭りのお陰だったといい出る者も居る程だ。


      ◇


「・・・と色々と効果が現れると、あなたの道筋を単調なく、着き進めるといいます。間違いありませんよ、リリ―ン」

「アンタ、なんでそれだけ覚えられるんだ?」

「神の懐に聞いていただければ・・・チリリ―ン」


 弥氏の寺では巫女が説明をするし、祭り事にも踊りを披露する。決して派手ではないものの、それは地域の住民たちを喜ばせる祈願なる一つの事柄である。そこには性別、年齢、国籍も関係ないとされている。

 体の弱い者は人工生命体との移植手術が完成するまでに、どうにかこの世を全うすること以外は方法が無く、祈願をする由縁すら無かった。だが、訪問祈願という形を取ったという、世界で注目されている事例も少なからず在ったのだった。

 ――――例えそれが不運だったとしてもだ。


一方、ニュースでは・・・

≪今季の事件勃発は、未遂に終わった事を報告いたします・・・他国との競売競争に、本国との密売関係に終止符を打ったことを、ナシコク大統領は・・・≫

≪お互いの誤解が招いた結果として、警視庁では仲裁期間を設けると夫婦仲が穏やかになったといいます・・・≫

≪年齢的差別のじつは、ジェネレーションギャップと申されまして、相手を尊重し、お互いを認め合い、自由を手にするという解消の気持ちがあるのです・・・≫

≪高速道路のジャンクションで火災が発生する事も無く、追突も免れて、どうにか安全且つ安心の出来る年となりそうです・・・≫

挿絵(By みてみん)

“リリ―ン”

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