清水社巫女×伊藤ルキ
ブクマよろしくお願いします。
目が覚めると知らない場所にいた。
ここはどこだろう? 辺りを見回すと何もない真っ白の部屋で、壁に文字が書かれていた。
壁に近づいて何が書かれているか良く見てみると
「2人揃うまで待て」
とあった。
後ろからドサッとした音が聞こえる。そっちの方を見ると、自分と同じ制服を着た少女がいた。彼女は見られていることに気付いたのか、私の方を見る。
社巫女「あの…ここはどこですか?」
普通なら向こうが私に聞いてくることだろうが、今はそんな余裕がなかった。
少女「…ん~?」
けだるそうな返事をして、こっちを見る。
少女「……。スマートフォン持っている?」
社巫女「スマホ?」
身体のあちこちをペタペタと触ると、いつの間にかスカートのポケットに知らないスマートフォンがあった。
社巫女「なにこれ?」
突いてみると、一つのチャットアプリが出てきた。アプリを開くと自分の名前が書かれている。
社巫女「あの…これは一体…」
聞いても何も答えない彼女。何も教えてくれないと思っていたら、急にスマートフォンの画面を私に見せてきた。
少女「このバーコードを写真で読み取って」
社巫女「読み取るとどうなるの?」
少女「……」
社巫女「……あの」
少女「早くして」
聞いても答えてくれない。とりあえずバーコードを取ると『伊藤ルキ』と表示された。
少女はそのまま操作すると、私のスマートフォンにグループへ招待されている通知が来た。
少女「入って」
言われるがまま入る。
そこには自分の名前を含めて12人の名前があった。
○○○
伊藤ルキ
△△△
×××
◇◇◇
☆☆☆
♡♡♡
清水社巫女
♧♧♧
♤♤♤
◎◎◎
▲▲▲
グループの方に新しくチャットが書かれていた。
伊藤ルキ『2人』
少女「あなたも私と同じ風に書き込んで」
社巫女「え?」
少女「いいから」
社巫女「はい」
清水社巫女『2人』
そうすると白い部屋にいたはずなのに、徐々に背景が変わっている感覚になったかと思うと、全く知らない場所にいた。外は真っ暗で高層ビルがいくつか並んでいる。
社巫女「は?」
突然の出来後に思わず声が出る。
少女「私は伊藤ルキ。これからよろしく清水」
社巫女「え? あぁ、はい。清水社巫女です。よろしくお願いします」
伊藤「敬語はいいよ。これから長い付き合いになるかもしれないし」
社巫女「…はぁ、よろしく」
伊藤「じゃあ行こうか」
社巫女「行くってどこに?」
伊藤「ここから出るために」
社巫女「……ごめん、何を言っているのか分からない」
先に歩く伊藤の後をついていく。この状況で、なんで平然としていられるのだろうか。
社巫女「…これは何なの?」
伊藤「私が知りたい。気が付いたら清水みたいにあの白い部屋に飛ばされて、気が付いたらこうなっていた」
社巫女「初めてじゃないの?」
伊藤「うん」
社巫女「グループメンバーの12人は何?知らない名前が10人いたけど」
伊藤「私も詳しくは知らない。清水と私の立場と状況はほとんど一緒だ。とりあえず今はここから出るために協力し合おう」
社巫女「…わかったわ」
とりあえず自分のやるべきことが分かった。彼女の言っていることを全面的に信用しよう。
社巫女「…どこだろうねここ」
高層ビルが沢山ありすぎて、上を向いても何かしらの建物が視界にチラッと映る。しばらく灯りのある方向に伊藤から一歩離れて歩いていると…前方から何かがドサッと倒れてきた。
何かと思い見てみると、そこには全身の皮膚がはがされた人の姿があった。身体が私より2周りほど大きいのを見ると成人だろうか。下半身の部分と胸部を見ると膨らみがあることから、女性かと思われる。
社巫女「っひ!」
見たことのない気持ち悪さだったので、思わず伊藤の肩に触ってしまう。
伊藤「突然触るな。驚くだろうが」
さっきの口調と変わらず、鬱陶しそうに私の手を剝がそうとするが、私が力を入れ剥がされないようにする
社巫女「ねぇ、ねぇ!あれって…!あれって…!」
伊藤「落ち着け清水。ただの死体だ」
社巫女「死体!? 今死体って言った!? 嘘だよね!?」
伊藤「嘘じゃないよ。よく見てみろ」
社巫女「え!? なんで…そんなに…うっ」
思わず口を押えて、膝を地面についてしまい吐き出してしまう。
社巫女「ゲホ……ゲホ……はぁ…はぁ…」
大きく息を吸って吐いてを繰り返していると、伊藤が清水の背中を撫でてくれた。
伊藤「全部出しちゃいな」
また気持ち悪いのが込み上げると、吐き出してしまう。
社巫女「ガホ……オェェ……」
あれからどのくらい経ったのか分からないが、伊藤はずっとそばにいて撫でてくれた。
伊藤「少しは落ち着いたか?」
社巫女は何も言わず、首を縦に振るう。口の中が気持ち悪い…。ぬちょぬちょしている。
伊藤が立ち上がり、近くにあったお店の飲料コーナーに行き、ミネラルウォーター一本を私に差し出してくる。
伊藤「口ゆすいだら? 多分気持ち悪いでしょ?」
社巫女「ありがとう」
キャップを開けて口の中に流してくちゅくちゅとゆすいで、地面に吐き出す。吐いているところを見られているので、今更取り繕う必要なないと考えた。
実際には取り繕うとする余裕すらなかったわけだが…。
伊藤「…後5分したら歩こうか」
社巫女「うん…」
少し休んで歩ける程度には調子を取り戻した。
社巫女「他の10人も今の私達みたいなことがあったのかな…」
伊藤「さぁね。他のやつより自分の心配をした方がいいよ。死ぬかもしれないし」
社巫女「死ぬ? そうか死ぬか~。あはは、それは大変だね~……はぁ」
一体自分はどうなるのかという不安と恐怖。もしかしたら死ぬかもしれないと言われてプレッシャーがかかる。心臓が重い鈍器で殴られたように痛くて気持ち悪い。
伊藤「……清水、目を閉じて」
社巫女「…?」
伊藤「いいから、私が良いというまで目を閉じていて」
目を閉じると、自分の顔を触られた。
社巫女「ひゃっ!」
目を開けそうになるが、指示があるまで閉じていろと言われていたから目を閉じ続ける。
社巫女
あることに気付く。さっきまでの不安や恐怖が薄まっていくような感覚に陥る。
社巫女(あれ? さっきまであんな気持ちだったのに…薄れているような…?)
伊藤「いいぞ」
目を開けると伊藤がいて、彼女の額に汗が出ている。
社巫女「一体…何を…?」
伊藤「何もしてないよ。ただ目を瞑れと言っただけだから安心しな」
社巫女「そうなの…?」
伊藤「そうです、ほら行くぞ」
顎をクイっと先に突き出してポケットを弄っている。ポケットからはチュッパチャプスが一本出てきた。彼女は袋を剥がして飴を口に銜えたまま歩き出す。
こんな状況で吞気に飴を舐めている精神がすごいなとぼんやり思いながら後をつける。
20分くらいだろうか?途中途中休憩を入れながら、歩き続けた。
人が何人も血まみれで倒れて居たり、身体の一部がなくなっていたりしてそのたびに気持ち悪くなったが、最初の方で結構な量を吐いたからか、胃液しか出てこなくなった。
伊藤の反応はというと、とても冷静で私が倒れている人に何があったのか聞いても
伊藤「知らない。何って…死体だけど? それは…分からない」
本当に自分と同じ人間なのか?もしかしてこいつがここに倒れている人を殺したのではないかと怖くなる。
彼女から5歩程度離れて後をついていく。
そうこう建物の中に入ると奥の扉から光が漏れていることに気付く。
社巫女「ねぇ、あれって…」
伊藤「うん、出口だね。私もあそこに行ったらここから出ることが出来たよ」
社巫女「そうなんだ」
伊藤「なんか元気ないね」
社巫女「元気があるほうがおかしいと思うわよ」
伊藤「そういやそうだな」
伊藤が先に歩きドアノブを捻り、扉を開くと視界が光に覆われる。
気付くとあそこに来る前の白い部屋に戻っていた。
社巫女「戻ってこれた…?」
伊藤「おう、戻れたぞ」
壁に文字が浮かび上がる。
「清水社巫女にクリアボーナス。以下の選択肢から一つ選べる
1 シナリオに巻き込まれなくなる(ただしシナリオに関わるすべての記憶が消去される)
2 誰かを強制的にシナリオに巻き込む(巻き込まれた人が死亡した場合、その人の生前の記憶を引き継ぐ。最大6人同時に巻き込める。知っている人でも知らない人でも巻き込むこと出来る。)
3 今まであったすべてのシナリオそれぞれの参加者を確認出来る。
4 誰か一人の名前を言って、その人の赤目になった時の能力がわかる
5 誰か一人の名前を言って、その人の赤目になる発動条件がわかる
6 過去のシナリオのどれか一つ内容を知ることが出来る(選択者がそのシナリオに巻き込まれるわけではない)
7 シナリオで死亡した者を一人蘇らせる(ただし蘇った者は、死ぬ直前までの記憶は引き継がれない)
8 何もしない 」
社巫女「…ナニコレ」
伊藤「さぁ?私もこれがよくわからないけど、どれか一つ選ぶことが出来るみたいだぞ」
社巫女「……シナリオってなに?」
伊藤「さっきのこと全部だと思う。突然ここに来させられて、どこかに飛ばされて、ここに帰ってくるまでのことを指していると私は考えている」
社巫女「じゃあ答えは一つよ! 1を選ぶわ!」
そういうと、私の意識が落ちた。
目を覚ます。
身体を起こすととても体調が悪い。風邪だろうか?喉と胃が少し痛い…熱も少しあるかも?
怠い身体を起こして顔を洗いに行くと、両親の部屋から知らない男が裸で出てきた。
知らない男「あぁ、社巫女ちゃんか、おはよう」
世間一般でいうイケメンの彼は私にキリっと歯を見せて笑ってくる。
その男に何の反応もしないで、トイレに入り用を足す。その間玄関の扉が開いた音がしたから、あの気持ち悪い男が出て行ったのだろう。
トイレから出て手を洗い、顔を洗い始める。タオルで顔を拭き、鏡に映っている自分の顔を見ると
社巫女「……ひどい顔。なんでこんな疲れた顔をしているの…?」
リビングのソファーに腰かけて、体温計を脇に挟む。測定結果が出るまで何もせずボーっとしていると、ピピッと音が聞こえた。
脇に挟んでいた体温計を見ると「37.5」と表示されていた。熱があるようだ。
冷蔵庫から一口サイズのゼリーをいくつか食べてから薬箱を取り出す。薬を口に放ったあと、水で飲み干す。額に熱さまシートをピタリと付けて空の洗面器と一本のミネラルウォーターを持って行く。
フラフラする身体を壁に寄りかかりながら固定電話機まで歩き、学校に休む連絡をする。
担任の先生からは「お大事に」の一言だった。
自分の部屋に戻る途中、さっきの男が出てきた両親の部屋の扉が開いている。
隙間から中を見ると、母が裸で寝ていて、シーツが乱れていた。
社巫女「……」
何も言わず目に涙を溜めて扉を閉め、自分の部屋に戻る。飾ってあった熊のぬいぐるみを手に取りながらベッドで横になり、かけ掛け布団をかける。
社巫女「……お母さん」
泣き出したい気持ちを抑えて熊を強く抱きしめて目を閉じる。
少しすると一つの寝息が聞こえるが、寝返りを打ちながら時々苦しそうな声を出していた。
熊は腕から離れ、ベッドから落ちてしまった。顔を床にくっつけてしまい、どんな表情をしているのかが分からない。
今後もよろしくお願いします。