朝倉理科×伊藤ルキ
ブクマよろしくお願いします。
最近変な人が図書館に来るようになった。
私がいつものように絵本コーナーで絵本を読んでいる時にその子は突然やってきた。
私から少し離れた場所に座り絵本を読んでいる。一瞬目があったが、すぐに逸らしてしまった。
その子は少し泣いていたように見えた。
気にせず絵本を読んでいると、学校で嫌な目にあったことを思い出して思わず涙を流してしまう。
涙を止めようとするが止まらない。困っているとその子が話しかけた。
話しかけられてので、答えなきゃと思うが言葉を出せない。
いつもこうだ。人に話そうとするとどうしてもつっかえてしまう。
なんとか振り絞って答えようとしたが出来なかった。隅に置いていたランドセルから鉛筆をノートを取り出し、文字にすることでその子に返事をした。
その子は戸惑った顔をしたが、私に無理に言葉で伝えろとは言ってこなくて、私の書いた文章を読むと、次に他のことを聞いてきた。
その子もどうやら学校でいじめられているようで少しだけ親近感が湧いたが、まだ言葉で話せるようにはならなかった。
私が文章を書いて、その子は言葉でやり取りをする。
話していると「友達ってなんだろう?」という耳が痛くなる話題になった。
その子の話によると、友達だった異性に告白されたが断った次の日からクラスで孤立するようになって嫌がらせを受けるようになったり、何らかの罪を擦り付けられることがあったようだ。担任の先生に助けを求めたが期待できないようだ。
教師も自分の仕事で手一杯なのは分からなくもないが、やはり助けがないというのは心細いものだ。味方がいないのもキツイが、敵しかいない方がよっぽどつらい。
そんなこんなでやり取りをしているとその子が突然あることを言った。
「いじめられている者同士、友達って何かを確かめる方法を一緒に探さないか?」
言っている意味が分からず、思わずその子の顔を見てみる。
瞳は揺れていて、口も無意識なのかパクパクと動かしている。
適当に言っているわけではなさそうなのは分かった。しかし…いきなりそんなことを言われても警戒してしまう…。
自分と同じ学校の人だったら、これで私が答えたことを流して揺する気かと疑ったが、違う学校の人だった。
他校の子ならそれほど警戒する必要もなさそうだが、それを確かめる方法なんてあるのだろうか…。
創作なら「私達って友達だよね」で大体片付くけど、現実で確かめる方法なんてあるのかどうか…。
悩んで私が出した結果は
理科「わかった」
恐らく答えの出ない問題。それでも確かめる方法があるのなら探してみたい。
その子の名前を教えてもらった。
伊藤ルキ
それが彼女の名前だった。
それから彼女との付き合いが始まった。
お互い小学校が違うから、会う時は普段通っている図書館で会うことにした。
時々、私が学校にいるのが辛くなって早退してここで時間を潰していると伊藤さんもサボってここに来ることがあった。
伊藤さんの姿を見つけた時は思わず笑ってしまうこともあったが、声を出して話すことはまだできなかった。
やはりまだ抵抗があるのだろう。伊藤さんもそれを分かってくれて私が書いた文章を、伊藤さんが呼んで色々なリアクションを取っていた。
笑ったり
むすっとしたり
しょぼーんとしたり
からかったらなんだと~って言って私の肩を揺さぶったり
肩をトントンってした後伊藤さんの頬に指を指すと、キョトンとした顔をした後私にやり返そうと何度も私の肩を叩いてきて、私が無視を続けると正面から指を指してきたり
一緒に絵本を読んであれこれと意見を交換したりした。
どういう流れか忘れたが、プレゼント交換をすることになった。
私はチュッパチャプスを、彼女は一冊のノートをくれた。チュッパチャプスを渡された彼女の表情はなんとも言えない顔をしていた。
なんでチュッパチャプス? と聞かれてこう答えた。
なんとなくだけどチュッパチャプスを舐めている姿が似合いそう
彼女は「それって似合うものなのか?」と首を傾げて
私も自分の言ったことが意味不明だと言うと、彼女は「なんだそりゃ」と苦笑いをした後に複雑そうな顔をしてお礼を言ってきた。
彼女からもらったノートは交換ノートにして日記を書いて相手に渡し、どこの部分で笑ったかを言って一緒に笑ったりした。
途中からは友達かどうかを確かめる方法のことを忘れて一緒に過ごす時間が増えてきた。
そうして月日が経ち、私も小学6年生になった。私は女子校に通うために受験勉強をすることになった。
伊藤さんも私と同じ学校に通いたいと言っていたが、彼女は勉強が嫌いで模試の結果はC判定だった。対する私の模試の結果はA判定。
肩を落としていたが、まだ挽回できると励まして彼女の勉強を手伝うことになった。
大体このあたりから少しずつだが、言葉でのやり取りをするようになった。家族以外で言葉のやりとりが出来たのが、彼女が初めてだった。
勉強を付き合うようになって、彼女の家に遊びに行ってみたいと言ったが拒否された。
照れているのかと思って少ししつこく言うと、初めて見せる冷たい声で「ダメ」と言ってきた。
理由が分からないけど、かなり嫌がっていた。
私も自分の家に遊びに来てほしかったが、両親にそのことを言うとうざったいほどからかってくるのが想像出来て誘いづらかった。
彼女の勉強も少しずつ身を結び、模試の判定もBになった。
体調を崩さないように気を付けて復習を中心に2人で勉強することが習慣になった。
ある日、伊藤ルキの友達と名乗る人が私に声をかけてきた。
その人は「伊藤さんがここに来てほしいと伝えてくれって頼まれた」と言った後、こちらの返事を聞かず去ってしまった。
そんなことを一言も彼女から聞いていなかったが、何かサプライズでもするためにこの人に頼んだのかと考え、その人が指示した場所に向かった。
指定された場所に向かうとパイプが沢山置かれている工場に着いた。
こんなところに呼んで一体何の用事かと思い彼女の姿を探すが見つからない。上から何か音がして見上げてみると、いきなり鉄パイプが沢山落ちてきた。
突然のことで何もすることが出来ず、そのままパイプに全身を打たれて倒れてしまった。
次に目を覚ますと病室にいた。近くの椅子に両親がいた。
目を覚ました私に気付いたのか、近づいてきた。
「私の声が聞こえる?」
聞こえているよと答えると、両親はすぐに係の医者を呼んでいった。
医者が飛んできて、軽い診察を受けると後遺症はなさそうだと言ってきた。
様子見で後数日入院することになったが、受験までには退院できるらしい。
両親も私もほっと息をつく。
両親が仕事に行っている時間、一人の少女が私の病室に来た。一体誰だろう…。
少女が声をかけてきた。
「大丈夫か?私が分かるか?」
私はこう言った。
理科「…だれ…ですか…」
そう言われた少女は目を見開いて、口を押えてブツブツと何かを言って後ずさりをしていた。
「嘘だよな…嘘だって言ってよ」
初めてみる人だが明らかに狼狽えている。
理科「…どこ…か…で……あ…い…まし…た…か」
基本家族以外と言葉でやり取りをするのが出来ないのだが、不思議と言葉で話すことが出来た。
少女は何も言わず病室から出て行った。
誰だったのかな…。
後で両親から聞いたがさっきの少女は私がこんな目にあった事件の関係者らしい。
彼女の知り合いが、彼女に嫌がらせをするために私を傷つけたようとしたようだ。
彼女は何も知らされておらず、加害者ではないこと。
彼女の通っている学校は、かなり荒れている子が多いらしくて彼女の素行も良くないらしい。
学校ではクラスメイトに暴行したとかで注意を受けていたらしい。
両親から聞いた情報だ。
間違いのないことだろう。
彼女は私と何か大切な約束をした仲だと言っていたらしいが、私には覚えがない。
そのことを両親に伝えると、もしかしたらまた私に危害が及ぶかもしれないと考えて彼女の面会を拒否するようになった。
無事に退院して受験まで勉強したところを復習する日が増えて、普段行くことが多かった図書館に行く回数が激減した。
入試だ。
配布された問題を見る。
大丈夫。分からない問題もあるけど、基本的に出来る物ばかりだ。
焦らず解こう。
チャイムが鳴り「解答をやめ」と試験官が言うと、ペンを置く音があちこちから聞こえる。
全ての科目を受けて家に帰る。手ごたえはあった。きっと合格できただろう。
合格発表。
自分の番号を探して張り出された番号を見る。あった。
良かった。合格できた。しばらく呼吸を忘れ全身に熱が籠るような感覚になり、自分の番号を見続ける。
家に帰って両親に受かったことを伝えよう。
校舎から出ようと校門に出ると誰かとぶつかってしまった。その子の口から短いプラスチック棒が落ちる。
彼女の顔を見ると、彼女もこちらを見た後急いで落としたプラスチック棒を拾いどこかに去ってしまった。
なんだったのか…。
家に帰り両親に受かったことを伝えると、私以上に喜んでいた。
その日の夕食は豪華で、沢山食べすぎて後でトイレに籠ってしまった。食べすぎに気を付けなきゃ…。
そこから入学式まで少しの時間が出来て、暇つぶしに部屋を大掃除しているとあるノートが出てきた。
こんなノートを持っていたかな?
中身を見ると既視感があった。私の字で書いてあるページと、私の字ではない字で書かれたページがあった。
どこで?いつ?
思い出そうとしていると、台所から昼ご飯が出来たと声がかかり押し入れの奥に放り投げた。
前からずっと通っていた図書館にも行った。
一人で本を読んでいると受付の人から「今日はあの子と一緒じゃないのね」と言われた。
あの子とは誰かを聞くと、何かを考えるような仕草をして、何かを思い出したような顔をして「なんでもないわ。おばさんの勘違いよ」と言って奥の本棚に行ってしまった。
ついに入学式だ。
大きめの制服を買ったのに、少しきつく感じる。これはまた近いうちに新しく買うことになるかもしれない。最近身体の成長が著しく、身長もかなり大きくなった。
学校に着いて入学式を開く場所に行くために教室で簡易的な背の順を作り背の順になる。
私は最後尾になった。前の子の頭が低い場所にある。
上級生の方をみると、上級生の方に並んでも後ろから3,4番目になるくらいの身長だ。
私が1年なのにあまりの高身長だからか、普段以上に人目を集めてしまった。
複数の人数が一斉に自分を見ている感覚が嫌で顔を下に向けてしまう。
長ったらしい校長の話を聞き流す。
教室に戻り、今日は解散になった。
直ぐに帰ろうと思って、カバンを持って出て行こうとすると気の強そうな女子3人組に声をかけられた。1人はどこかであったような感じがあったが、どこで会ったか分からなった。
一緒に遊びに行かないかと誘われ断ろうとすると、私が何かを言う前に私の肩に腕を回して背中を押して教室を出た。
学校を出て、薄暗い路地裏に連れてこられた。
どうにかして振りほどこうとしたが、さすがに3人がかりに抑えられた状態を振りほどくのは困難だった。
拘束を解かれると、突然既視感のある1人に言われた。
「お前のせいで私は大変な目にあったんだ」
何のことか分からず、聞き返そうとしたが言葉が出てこなかった。
壁際に追いやられる。1人はカバンから何かを取り出すと、ガラスの破片のようなものを持っているようだ。
助けを求めようと悲鳴を出そうとするが、残りの2人に背中側から口を押えられてしまった。
理科
もうどうしようもできないと思っていると、前から来ていた1人の顔に何かが当たって横に倒れてしまう。良く見ると血が地面についている。結構な出血量だ。
何かが投げられた方向を見ると、そこには口に何かを銜えた少女がいた。
自分と同じ制服を着ている。今日は新一年生のみの登校だから、同級生だろうか。
彼女は私の方に走りこんで、私を組み付いていた1人に飛び蹴りをする。
ドミノ倒しのように隣の1人も倒れる。彼女は私の腕を引いて走り出す。
私もつられて走り出す。
しばらく走ると私の家の近くまで来ていた。彼女は走る速さを落として、歩き始める。
私の方を見ないで手を放して、何も言わず私の元を去ろうとした。
理科「待って!」
彼女の肩がピクリと震えるが、自分で一番驚いた。
何に驚いたかというと、言葉でこうもあっさりと言う事が出来た事だ。
彼女は私の方に振り向こうとしたが、横顔だけ向けた後逃げるように走り去ってしまった。
翌日学校に行くと、私のことで話題が持ちきりだった。
私を誘ってきた3人は期間までは分からなかったが謹慎を受けたみたいだ。
私に詳細を教えろと言う人が多かったが、案の上話すことが出来ず黙ってしまう。
私が黙ったことで、嫌な部分を触れてしまったと考えて引いた人と、無視をしていると思った人がいた。クラスの反応は前者後者半々に分かれた。
前者の人とノートに文章を書いてやりとりをしていると、隣のクラスも1人謹慎を受けたようだ。
名前を聞くと「伊藤ルキ」という人らしい。
初めて聞いた名前のはずなのに、なぜか懐かしい感覚になった。
担任に聞いてみると、伊藤さんが3人に暴行をしたからという話だった。
私が3人に襲われたことを朝教室に行く前に職員室に呼ばれて話したが、もう1人いるのは知らなかったので、その人のことを聞いてみると伊藤さんということが分かった。
お礼を言いたいから、住所を教えてほしいと伝えると他の人には言わないという条件で教えてもらった。
放課後、書かれた住所に向かう。表札を見ると伊藤と書かれていた。
理科「ここか…」
インターホンを押すと昨日の少女が出てきた。
少女は私に目を合わせず「どうしたの?」と聞いてきた。
理科「昨日の…お礼を…した…くて」
なんでこの人には言葉で話せるのか気になった。
私の記憶が間違いでなければ、昨日が初対面のはずなのに…。
少女「気にしなくていいよ。早く帰りな」
理科「あの…朝倉理科…です。ありがとう…ござい…ました」
ぺこりと頭を下げる。
少女「いいってば…」
手をブンブンと払いのけるように動かしている。なぜか分からないがこの人と話さなければいけないと感じた。理由は分からない。普段人と全く話せない私がどうしてこの人にここまで拘るのか自分でも分からなかった。
理科「あの…少し…だけ…話せませんか…」
少女「…なんで」
少女はこちらの顔を見ず、背中を見せている。
理科「…伊藤さんと…話を…したいから…です…」
少女が息を吞む音が聞こえる。
理科「だめ…ですか…?」
少女の後姿を見る。
少女「…わかった。どうぞ」
扉を大きく開けて中に入るように促してきた。
少女「そこのソファーに座っていて。飲み物取ってくる」
言われたソファーの下にカバンを置いて座る。家の中は生活感がなくて、置かれている物が少ないように見える。壁を良く見ると、穴が空いている箇所、剝がれている箇所、なぜか少し赤いシミがある箇所があった。
理科「……」
少女「はい」
お茶が目の前に置かれる。
少女「話って何を話したいの」
決してこちらの顔を見ず、湯飲みに話しかけるようにしている。
理科「…なん…だろう…。あ、伊藤ルキさん…で…あって…いますよね?」
少女「うん、私が伊藤ルキだ」
理科「え、えっと…よろしく…お願い…します」
伊藤「よろしく」
理科「…」
伊藤「…で?」
理科「えっと…、趣味は…なんですか…?」
伊藤「本を読むこと」
理科「好きな本は…何ですか?」
伊藤「☆☆とか」
理科「それ! 私も…すき…です」
伊藤「そうなんだ」
理科「…好きな…食べ物は…なんですか…?」
伊藤「これ」
そういって伊藤さんはポケットからチュッパチャプスを取り出した。
理科「飴が…好きなんですか?」
伊藤「飴自体はそこまで好きってわけでもない。ただこの飴が好きなの」
初めて伊藤さんが私の目を見てきた。
理科「かわいい…ですね」
伊藤さんは少しがっかりした顔をしてため息をついてまた顔を逸らした。
伊藤「…」
理科「…」
会話が無くなってしまった。
伊藤「そろそろ帰って」
理科「あ…はい」
確かに長居しすぎたかもしれない。
カバンを持って玄関に向かうと伊藤さんはお茶を台所に持って行った。
理科「お茶…ありがとう…ございます」
伊藤「ん」
靴を履いて扉を開けようとする。
理科「…また話しに来てもいいですか…?」
伊藤さんはとても驚いた顔をした。
理科(いきなりこんなことを言われたら気持ち悪がられるのも無理ないよね…)
理科「やっぱり…」
伊藤「いいよ」
理科「え?」
伊藤「また来な」
理科「……うん」
伊藤「…またね」
扉を開けて外に出る。後ろを振り返ると扉に身体を隠して、顔だけ出してこちらを見ている。
試しに手を振ってみると、伊藤さんは少し戸惑いながら小さく手を振り返していた。
相変わらず顔をこっちに見せなかった。
家に帰って自分の部屋に戻る。
どうして伊藤さんのことがこんなに気になるのかな…。
不思議と頭に思い浮かぶのは伊藤ルキさんだった。
なんでだろう…。何故かを考えても答えは見つからなかった。
次の日。放課後になり伊藤さんの家に向かう。彼女は昨日よりも少し嬉しそうな顔をして扉から顔だけ出していた。
家の中に入れさせてもらい適当に話す。伊藤さんとなら両親と話すとき程スムーズとは言わないが、ちゃんと話せている。
どうしてだろう…。もしかしてこの人も自分と似たような体験をしているように感じて親近感が湧いたのかな…。
次の日もまた会って、次の日もまた会って話をした。
そして伊藤さんの謹慎が解けたようで、学校に登校してくるようになった。
学校でも話かけてみようとすると、無視された。
最初は聞こえなかったのかと思い、もう一度伊藤さんに話かけようとすると
伊藤「学校では私に話しかけないで」
突き放すように言ってきた。理由を聞いても答えてくれなかった。それから学校で話すことはやめて、放課後伊藤さんの家で話すことにした。
伊藤さんの家に通い始めてから一か月以上経つと伊藤さんと一緒に遊びに行きたくなった。今まで誰かと一緒に遊びに…しかも自分からなんて…思いもよらなかった。
伊藤さんの返事は
伊藤「…分かった。どこに行く?」
理科「遊園地とか…どう…?」
伊藤「ふふ…」
理科「え? 何?」
伊藤「いや別に」
理科「そ…う」
日時を決めて遊びに行く約束をした。
その日がやってきた。
両親には「少し出かけてくる」と言って家を出た。
待ち合わせ場所に行くと、既に伊藤さんがいた。相変わらずチュッパチャプスを舐めている。
理科「おま…たせ~」
伊藤「おう」
理科「その服…似合って…いるね…」
伊藤「ありがと。そっちも似合っているぞ」
理科「そ…う?」
その場を360度くるりと回る。
伊藤「うん、似合っている」
無表情で言われても説得力ないな~と思って良く見てみると、口元が僅かに緩んでいる…ような気がした。
伊藤「じゃあ行くぞ~」
改札に入り電車に乗り込む。
電車を乗り継ぎ、目的地の遊園地のある駅に降りる。
2人並んで歩く。
理科「何に…乗る…?」
伊藤「メリーゴーランドとか?」
理科「なるほど…」
伊藤「後はお化け屋敷とか?」
理科「なる…ほど」
伊藤「観覧車も良いな」
理科「な…る…ほど」
伊藤「お前はなるほどしか言えないのか」
理科「実は遊園地初めてで…あはは…」
伊藤「私も初めてだから安心しろ」
理科「安心…?」
伊藤「初めて者同士だから緊張しなくて良いってこと」
理科「あはは…なにそれ…」
笑っていると少しムスッとした顔をした伊藤さんに胸をドンと強く飛ばされて数歩後ろに下がる。足場が無いと思った時には重力に従って身体が倒れる。
ゴロゴロゴロゴロ!
階段を転げ落ちてしまう。全身が痛い。顔を上げると伊藤さんが青ざめた顔をしている。通行人も騒ぎ立てている。
痛みで立ち上がることが出来ない。伊藤さんが私のすぐそばまで来て涙声で謝っている。
そこで私の意識が落ちた。
目を覚ますと病院にいた。
なんだが既視感を覚える。
目を覚ますと両親がいた。
目を覚ました私を見ると飛び跳ねた。急いで係の医者を呼びに行く。
医者が来た。検査を受けると数週間入院が必要だと言われた。
両親は手続きを済ませて、私に言った。
「もう二度と伊藤ルキに近づかないこと」
そう言われた。理由を聞くと彼女が約束を破ったからだそうだ。とても怒っている。
ここまで怒っているのは初めて見る。理科を傷つけようとした人達に怒りを示すことがあったが、その比ではない怒り具合だった。娘の私を睨むほどに伊藤さんを怒っている。
無事に怪我が治り、両親の目を盗んで伊藤さんの家に行く。
インターホンで伊藤さんに話しがしたいというと
伊藤「私はもうお前と話せない」
理科「なん…で」
伊藤「お前の両親にもう二度と理科と話すなと言われたからだ」
理科「どう…して…」
伊藤「実はお前と遊びに行く前に、お前の両親とある約束をしたんだけど…それを私が破ったから…それですごい怒ってもう二度と理科と関わるなって言ってきた」
理科「そんなの…私…知ら…ない」
伊藤「だろうな。お前を抜きにして話をしたからな。だから…もう私と関わるのはやめな。私から約束を破ったから、私が悪い…。お前は何も悪くないよ」
理科「そん…な…」
伊藤「帰れ!」
インターホン越しに耳がキーンと来るほど強く言ってきた。
理科「もう…話せないの…?」
伊藤「…」
理科「ねぇ、伊藤さん…」
インターホンが切られた。会話をすることが出来なくなった。扉をじっと見続けた。もしかしたら私を試しているのかもしれない。ここですぐに帰ったら本当に話せなくなってしまうのでは…。
そう考えて扉を見続けていると私の腕が凄い勢いで引っ張られる。
理科「うわ!」
振り返るとそこには怒っている母がいた。
母「何しているの。伊藤と関わっちゃだめよ。あなたのためなの」
私が何かを言う前に強い力に対抗することが出来ず家まで引っ張られた。
両親にあれほど伊藤と関わるなと注意された。
次の日学校で伊藤さんに話しかけようとしたが、私が近づくと伊藤さんが距離を取った。
裏から忍ぶように近づいても気づかれて距離を取られる。
廊下の角に待ち伏せて話しかけようとしても無視されて、腕を掴むと引きはがされる。
一度も目を合わせてくれなかった。
そのうち伊藤さんに接しても無駄だと感じた私は伊藤さんに接するのはやめた。
接するのをやめて適当に学校生活を送っていると一年が経っていた。
4月からは2年生だ…。
クラスにも居場所が無くて、正直教室にいること自体が苦痛になってきた。
いつの間にか私はいじめの標的にされて上履きを隠されたり、物を無くされたり、身体を殴られたり…。全然学校が楽しくなかった。助けてくれる人はいなかった。
ある日誰かが私に話しかけてきた…けど…何を話したんだっけ?
あれ…?
そういえば誰かのことを忘れているような…。
まぁいいや、こういうのって思い出そうとするから思い出せないものだし…。
はぁ…学校つまらないな…。
今後もよろしくお願いします。




