接触2
実は幸先のいい滑り出しを受けて、
「よし、まずまずいいんじゃないか。それじゃあ合宿はどうしようか?山中湖で決まりでいいかな」
というと、
「他にアテがあるのか」
とユキチが仏頂面で発言する。そんなときふと大介が、
「軽井沢にしたら女性が喜ぶんじゃないかな」
と閃くと、
「えーー、なんかめちゃくちゃ興味があるんだけど」
と大声を上げたのは雰囲気に弱い説子だった。
「大介、発言に責任を持てよ」
と実が戒めると、
「うん、どうせ行くならロッジを一軒借り切ってスタジオと兼用にしたら環境的に抜群だし、部屋が多いから女性たちのプライバシーも保てるだろ。大部屋の意見も悪くないけど、女の子の気持ちを考えたら誰にも知られたくないことがたくさんあるんじゃないかと思ってね」
「さすが大介、だからお前のことが好きだよ」
この言葉に一番驚いたのは洋子でも大介でもなく、ユキチ本人だった。
「あ、いや、なに、大介、肉好きだったよな」
「ああ、特別ってわけじゃないけど」
「あれ?そうだっけ」
と話すたびに思考回路が壊れていくユキチ。
しかし、救いの手を差し伸べたのはダークホースの洋子だった。
「大介のお母さんが作るハンバーグ絶品なんです」
「ほらみろ、そんなこと聞いた記憶があってさ、いいよな親の手料理がうまいと。あたいが作ったらすごいぞ、塩と砂糖を間違えて親父にぶっ飛ばされたこともあるんだから」
その発言に実は、
「誰もユキチに料理なんか期待してねえぞ」
「おっ、なんだよそれ。一様女なんでよろしく。傷つくこともあるんだからな」
「嘘だろ!」
と思わず叫ぶ謙二に、
「おめえら黙って聞いてりゃ」
とユキチが本性を露わにすると、
「みんな助け合いの精神を忘れずにいこうじゃないか」
と実がフォローするものの、誰もこれ以上この件について言葉を発する勇気はなかった。
そこで大介が機転を利かし、
「どうだろう、みんな他に行きたいとこがあるか?」
「軽井沢もいいけど、条件さえ合うんだったら信州もいいわ」
とユカがいうと、
「じゃあ、北海道に行ってみたい」
と洋子が珍しく積極的に発言する。そこで実は
、
「話がややこしくなってきたな、みんなが好きなことをいい出したらまとまる話もまとまりゃしないぜ。じゃあ、大介のロッジという案に賛成の者は」
「ハーイ」
と実以外全員手をあげて、
「それじゃ場所は?」
「軽井沢でいいじゃん」
と謙二がぼそっといい、
それに対してユキチが、
「ロッジだとドラムが問題だな。他の機材もどこで手配するか、を考えないといけないから距離的には軽井沢が限界だな」
「それでいいよ」
とユカ。
その流れに実が、
「じゃあ、霧島くんと大島くんで軽井沢のロッジを調べてもらおうか。機材は俺が受け持つよ」
「実、バイトはどれくらいやる予定なんだ」
と大介は思い出したようにいうと、
「おー、それそれ。日給は初めてでも9000円以上貰えるらしい。4日もやれば3万6000円かける7で、ざっと25万円になる。あとはロッジの予算次第だな、そのあと予算を振り分けようじゃないか」




