接触1
「大介、彼女たちのことはよく知っているんだろう。お前ならどんなバンド編成でやりたい」
と実が後方から切り出すと、
「そうだな、今までにない男女混合バンドの形として考えたら、パーカッションとサイドギターを加えたら面白い音楽が出来るんじゃないか」
と強い口調に実は、
「パーカッションにサイドギターを加えるのか?」
と戸惑いながら横のユキチに対して、
「今の意見どう感じる」
と投げかけた。すると彼女は、
「女性のパーカッションとサイドギターが加わるのはビジュアル的にも珍しいし、大介とユカのコントラストにもいい影響があるかもしれねえ。ただ、この編成でどんな音楽をやりたいか、を明確にする必要がある」
「どうだろう?」
と隣のユカにも実は問いかけた。
「うん、悪くないんじゃない。ただ問題はやる音楽よ」
他のメンバーの表情を追いながらさらに実は、
「その辺は何か考えがあるか、大介」
「そうだな、端的にいえばサザンやsuperflyやSCANDALのいいとこ取りさ。センターにユキチを置いて、あとは男と女の特色を生かして少しハードにリズムを厚くしたロックを目指すんだ。ギターは俺が洋子に教えるから、謙二が説子にパーカッションを指導してほしい」
「あら、私がパーカッションをやるの?」
とスットンキョウな表情の説子を横にして謙二は、
「曲によっていろんな楽器に挑戦してみるのもいいんじゃないか」
と見つめながら、
「あらそう?中途半端にならないかしら」
と戸惑いを隠せない説子?
「あくまでもメインはパーカッションさ、歌もうたいたいんだろう」
と提案する謙二に応えて、説子は一呼吸おいて、
「1から教えてもらえるかしら」
と謙二に確かめる。
「俺も勉強しながら教えていくよ、見本はサザンオールスターズのパーカッションの野澤秀行さんにするといい。別名毛ガニって呼ばれて尊敬できる人さ」
「あら!食べるのは好きだけど、どんな人か知らないわ」
「俺がライブDVD持ってるから貸してあげる」
「見かけによらず優しいのね」
との言葉に嬉しそうな表情の謙二は、
「見かけは余計、仲良くやっていこう」
「ありがとう、そういってくれると嬉しいわ。こちらこそよろしくね」
と笑顔で返す。
そんな成り行きを見守っていた実が大介に、
「お前、ギターはストラトしか持ってないのか」
と聞くと大介は、
「レスポールのコピーモデルを持っているから洋子にくれてやる」
思わず、
「大介と一緒にできるの」
と喜びを隠せない洋子。
その言葉を聞いて実は少しオーバーなジェスチャーで、
「おお、それじゃあ、決まりだな。謙二、お前はボンゴを持ってたよな」
「うん、それにコンガやマラカスなんかもすぐに貸せるよ」
と応えると、
実は周りを見渡して、
「どうだろう、俺たちがこれから進むべき音楽的方向性として他に意見のある奴はいないか」
と確かめる。少し間をおいて考え込んでいたユキチは、
「サウンド面はやはり実のセンスに頼るしかないと思う。切り口として大介の考えをどう捉えているのかな」
「うん、いい線いっているんじゃないか。新しいエッセンスを織り込むには従来にはない概念を持ち込む必要がある。加えてバンドカラーをアピールするには斬新な方がいいに決まってる。その点でもこれまでにない流れを作れるかもしれない。あとはそれぞれの個性をどう引き出すか、またサウンド的にどう表現するかにかかっているんじゃないか」
「勝算はあるのか」
「ユキチ、まだ俺の頭の中で具体的ではないが、いいフィーリングが芽生えている。ダンサブルでみんなが一緒にノレルようなハードロックがあってもいい。ユキチの熱いヴォーカルに独特なエッセンスの歌詞、そして他のメンバーもただの演奏者じゃなく、個性的なアーティストへ変化できたら、きっと性別に関係なく惹きつけられるコアなファンもいるだろう。まずはそんなバンドカラーを目指して努力してみようじゃないか」
「よし、じゃあ今度の合宿でやることが多いな」
ユキチの呼びかけにメンバーの意気が上がった。




