依頼
司書さんに資料を返して礼を言って1階へ戻り、先ほどよりも空いてる掲示板を見て護衛の依頼料を調べる、1日あたり1人1大銀貨で経費別か日当1万円で護衛って安くないか? 護衛で有る以上命が掛かってるのに何でだろう・・・
「その護衛依頼はDランク用だからまだエイジアさんには受けれませんよ?」
唐突に後ろから声を掛けられたが、振り向くとメルルがにっこりと笑って立っていた。
「いえ、ちょっと前に知り合った商隊の方が私をこの町まで護衛してくださったんですよその謝礼を約束していたので、料金的にいくらなのかなーと思いましてね」
「そうでしたか、専属の護衛と言うよりは同行なのかな? まぁ、1日あたり大銀貨1枚以下でも十分だとは思いますよ? あと、昨日言い忘れていたのですが、新米冒険者の為の講習会が季節毎の初日に行われるので、依頼を受けてない場合は可能な限り参加してくださいね、今回は明後日ですが、朝7時にギルドの鍛錬所に集合となっています」
「わかりました、明後日の7時ですね、それじゃ用がありますんでこれで」
そう言ってギルドを出て表通りを南に移動しつつ、道すがら商店を覗いていく。
程なくして南門が見えてきたあたりで「小鹿の面差し」亭を見つけて中に入り、ウェイターをつかまえてロンダさんに取り次いでもらうと、丁度外出からもどってきたロンダさんが私を見つけて声を掛けてくれる。
「おはようございますエイジアさん、ギルドへは迷わずにいけましたか?」
「おはようございます、はい、ギルドで冒険者登録もすませてきました、その節はありがとうございました」
朝も9時を過ぎていて、有能な商人がこんな時間まで宿でのんびりしてるはずが無く、下手をしたら無駄足になるところだったと反省しつつ、昨日の報告と礼をする。
「昨日はありがとうございました、これは些少ですがお納めください」
「礼を言われるほどのことはいたしておりませんが、今後のお付き合いもありますし、ありがたく頂戴いたします」
あらかじめ小分けしておいた大銀貨3枚を入れた小袋をロンダさんに手渡し、改めて礼を言い頭を下げる。
「あれからギルドで地図を見せてもらったりしたのですが、実家に連絡を取るのは少々困難なので、しばらくはこの町で冒険者として活動しようと思います」
「そうでしたか、何か役立てることがあればいつでもご相談ください、私どもは明後日の朝にはファーレンに戻りますが、ファーレンに立ち寄った際には私どもの店にお越しいただければ、色々と便宜を図ることもできますので」
「重ね重ねありがとうございます、ぜひお店の方にも寄らせていだたきますね、あ、あとハンス君にもお礼を言いたいのですが、今どちらにいらっしゃいますか?」
とりあえず謝礼は受け取ってもらえたし、今後の繋ぎも向こうから申し出てくれたのであとはハンス君への口止めをしなくてはと、ハンス君の居所を尋ねてみる。
「ハンスは北の地区にある商家へ用を言いつけておりますので、夕方にならないと戻らないのですが、それ以降は宿に居るようにさせましょうか?」
「いえ、そこまでのことでは無いのです、お世話になったので一言お礼を言っておきたかっただけです」
ハンス君への口止めはできたら程度に思っていたので、お伝えくださいとだけ言って、暇を告げる。
ギルドへ向かいながら今後の予定を考える、当面の生活費は大丈夫とはいえ生きていく為には稼がなくてはならない、さしあたってはギルドで依頼を受けてお金を稼ぐ、町の外は草原と森が見えてたので、そこで薬草採取をして市場へ出しても大丈夫なレベルに劣化させたポーションを作って露店を出す、これで資金は稼げるとしてレベルアップをどうするかだが、なるようにしかならないから保留しよう。
考え事をしながら歩いていると、焼けた肉の良いにおいがする、見渡すと露店で肉の串焼きが売っていた、小腹が空いてたのでお昼ご飯兼用に多めに買い込み1本をその場でかぶり付く。
「ん、美味しい、今朝食べたシチューのお肉と同じのだけど、何のお肉なんだろう?」
塩胡椒で味付けされたシンプルな串焼きは、ジューシーで噛むほどに肉のうまみが出てくる、牛肉のような食感で野生の味がする。
「ああ、そいつは草原に居るグラスモールの肉だよ、旨いだろうこの辺じゃ良く獲れるんだよ」
肉ばっかりの串だと栄養偏りそうだな、野菜焼いた串とかも売ってくれたら良いのにと思いながら露天を後にしようと振り返ると、10代前半ぐらいの犬耳の少女がよだれを垂らさんばかりにこっちを凝視していた。
「お肉、おいしそう、、、」
私の買った串焼きの袋を凝視してクンクンと鼻を鳴らしている、衣服もボロボロで髪も体も汚れがひどく貧民街の子供かと思ったが、首輪がされているところを見ると奴隷なのだろう、きゅるきゅるとお腹が鳴いているが気にした風もなく串焼きを見ている。
「ほら、これやるから食えよ、飼い主に見つからないようにしろよ」
買ったばかりの串焼きを袋ごと少女に持たせてやると、驚いた顔をしていたが空腹に負けてすぐさま頬張りだす。
汚れてはいるが銀髪に黒のメッシュが入った犬耳を見ていると、実家で買っていたシベリアンハスキーを思い出し、思わず串焼きを全部あげてしまったが懐はまだ暖かいから良いかと思って歩き出す。
「あ、ありがとうございます、美味しかったです、ありがとうございますっ」
礼を言う少女に照れくささを感じ、振り返らずに手だけ振って返しそのままギルドへ向かって歩いていく。
お昼前だがギルドホールよりも酒場の方が込み合っていて、お昼ご飯を食べる冒険者達で賑わっていた。
串焼きで小腹は満たしていたので、とりあえずFランクで受けられる依頼を探してみるが、町の小間使い的な仕事が大半でモンスター退治とかはEランクからのようだ、基本は街中で出来る仕事と、近場で取れる薬草採取が大体の依頼のようだ。
「すみません、この依頼を受けたいのですが」
依頼は『音鳴り草 20本 5銀貨 追加1本2銅貨 期間は3日』
薬草採取の依頼書を手に受付の厳ついおっちゃんの所へ持っていくと、薬草の採取のしかたや見分け方注意事項を丁寧に教えてくれる、見掛けに反して凄く親切でぶっきらぼうな口調ではあるが優しさが垣間見える良いオヤジのようだ。
「ありがとうございます、では行ってきます」
「おう、気をつけていけ、無理はするなよ」
西門を抜けて北方向に行けば草原が見えてくるからそのあたりに生えているらしい、行きしなに買った採取用のスコップや籠とお弁当を持って草原へ歩いていく、この辺にはモンスターが出ることはめったに無いらしく安全に薬草採取ができ、先ほど食べたグラスモールが稀に姿を見せるので、倒せれば肉や毛皮が売れるそうだ。
「いやぁ、今日も良い天気だ、草原地帯に着いたしお弁当食べてから採取しよう」
蒸かした芋とパンに野菜と肉を挟んだサンドイッチもどきを食べて一息ついたので、早速採取を始める。
「では早速「知る者」起動、対象回復効果のある物」
見渡す草原に知識に沿った名称がポップアップするのだが、どんな草にもそれ相応の薬効があるのか見渡す範囲にポップアップが多すぎて、依頼の薬草が分からないので、薬効成分の高さを指定してポップアップを減らして行き目的の草を見つける。
「さて、それでは端からよさそうな草を全部摘んでいこう、依頼分は別の袋に詰めて籠一杯を目指して、ふぁいとー!」
リポDのような掛け声をかけてひたすら籠に詰めていく、ひたすら詰めていく。
夕暮れ時になるまで休憩を挟みつつ採取をして、途中から籠が一杯になったのでストレージに依頼の草と同じものを取れるだけ詰めていたが、そろそろ帰らないと町に着く頃には夜になると思い、固まった背筋を伸ばして足早に町に戻る。
日が完全に落ちきる前にギルドへ戻ってこれて依頼報告をしているところなのだが、依頼数の20本と+20本で40本納品したらかなり驚かれた、どうやら3日掛けて20本探すのが普通らしいが私のチートスキルだと見える範囲にあればポップアップでお知らせしてくれるから、解っているものであれば探索は楽なのでやりすぎてしまったらしい。
「では報酬の5銀貨と追加分で4銀貨の9銀貨のお支払いです、ご確認ください。 あとこの依頼は常時依頼なので本数が2回分あったので、依頼達成回数は2回にしておきますね」
「ありがとうございます」
報酬を受け取ってついでに夕飯をここで食べて行こうと酒場へ向かう、6時を回っていてテーブルは冒険者達がほとんどを埋めている、今日の依頼は終わって酒を飲み旨いものを食べ明日への活力を補充しているのだろう。
せっかく報酬が入ったので、美味しいものを食べて明日への鋭気を養おうとメニューを開くのであった。
依頼の報酬額を決めるのが悩みますね、Fランクだから町の小間使いをして、あいてる時間に薬草を摘んで、それで漸く一日が暮らせるぐらいのお金が手に入るようにと思ってるのですが。
次回は週明けには投稿できるようにがんばります。