ゴブリン
別視点が続きます。
その咆哮を聞き、休んでいた全員に緊張が走る。
「今のは?」
魔法使いの片方の問いかけに、盗賊は首を横に振る。
しかし、戦士の顔色が悪い。
「どうしたんですか?」
もう片方の魔法使いが戦士に問いかけるが、その答えより先に回答が来た。
身の丈3メートルを超える巨体。漆黒の皮膚。豚の顔に長く伸びた牙。
「オーガだと。」
先の戦争で最も有名だった魔物の登場に、全員にさらなる緊張が走る。
オーガ。その黒き皮膚は弓も剣も通さず、人並みの知識を持ち、その一撃は岩をも砕く。
最も魔族に近い魔物と呼ばれ、もしも一人で出会えば死は免れず、少なくとも十人でかかる必要があると言われている。
かつて英雄と呼ばれた者たちは一人で倒した言われている。
事実、彼はとある理由でオーガ20体相手に無双していた。
だが、ゲメナの眼にはオーガなど写っていなかった。
「みなさん、あれはオーガではありません。認識阻害の魔法がかかっています。あれはただのゴブリンです。」
「ゴブリンだと!? 冗談はよしてくれ。」
「本当です。」
ゲメナの声に戦士が声をあげる。
「偽りの姿を晒す者よ、真の姿を明かせ。」
魔法使いが認識の魔法を唱えると、オーガの姿が消え、ゲメナが言ったようにゴブリンが姿を現す。
「本当にゴブリンだったのか。」
盗賊が驚いて声をあげる。
「ですが、ゴブリン程度なら問題ありません。」
魔法使いがそういうと、手にしていた杖の先をゴブリンに向ける。
「炎よ、我が敵を焼き払え。」
詠唱と共に打ち出された炎の玉は、真っ直ぐにゴブリンに向かっていく。
炎が爆発を起こす。
全員がゴブリンは死んだと思い、盗賊の男は死んだ魔物から取れる魔石を取ろうと、ゴブリンがいた場所に近寄っていく。
そして、何かが風を切る音と共に、盗賊の首が跳ねられた。




