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咆哮

別視点が続きます。

 誰かが生活している跡が残っている。

 おそらく、彼がこの近くに住んでいるのだろう。

「見ての通り、まるで何かが生活しているような跡がある。最初は、この森で夜を空かした奴がいるのだと思った。だが、どいつに聞いてもこの森で夜を空かした奴はいない。だからこの森に人、もしくはそれに準ずる何かがいると思われている。しかし、今まで誰もそいつを見つけたことは無い。俺たちの間じゃ、『幻人(げんじん)』と呼んでいる。」

 戦士の方がそう言うと、周りの確認をしていた盗賊の方が近づいてきた。

「周りには何もいねぇ。ゲメナの旦那、休憩を取っても構わねぇか?」

「はい。では少し休んでから周りの調査を行います。みなさん、どうぞ。」

 そう言って私はアイテムボックスから水の入った容器を出す。

 それを見ていた4人は驚いている。

 それもそうだろう。アイテムボックスとは、何もない空間に物を入れることができるという、非常に便利な物だ。

 その便利性のため、冒険者や商人など、荷物を持ち運ぶ必要がある職種からすれば、喉から手が出るほど欲しがる物だ。

 アイテムボックスは、現在確認されているだけで6つしかない。

 6つ全てが迷宮の奥で見つかり、契約を行なった者だけが使える。未だ製造方法が一切解らないため、初めてオークションに出たときは、白金貨7枚の価値が付いた。

 それが眼の前にあるのだ。驚かない方が無理だろう。

 ちなみに、なぜ私がアイテムボックスと契約をしているかというと、今探している彼から、荷物持ちという名目で押し付けられたのである。

 私は驚いている4人に容器を渡すと、自分用に一つ取り出して喉を潤す。

 それを見ていた戦士の方が水を飲むと、他の方も水を飲みだす。

「すごい物をお持ちなんですね。」

 魔法使いの片方が話しかけてくる。

「えぇ。ですが、その為アイテムボックスを寄越せと脅されたことも何度かあります。」

 あまり思い出したくない出来事である。

 そんな雑談をしていると、森に魔物の咆哮が響き渡った。

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