悪態
別視点です。
私は夢を見ているのだろうか?
彼に会うために案内役として雇った人たちが、たった一匹のゴブリンに殺されているのだ。
戦士の方は、あの戦争を潜り抜けた実力の持ち主だ。その彼が容易く負けたのだ。もはや私たちに勝ち目は無い。
そう思っていると、ゴブリンが私の方へと向かってくる。
残っている魔法使いの方を見ると、やはり勝ち目が無いと悟ったのだろう。攻撃を行う素振りはない。
ここで死ぬのか。
そんな思いが頭をよぎるが、彼といたときも何度もそんなことを思い、その度に生き抜いてきたのだ。
たとえ勝つことが出来なくても、魔法使いの方が逃げるだけの時間を稼ぐことぐらいしてみせる。
意を決して魔法使いの方を向く。
「君は逃げなさい。君たちを雇いこのようなめに合わせてしまった責任として、時間は稼ぐ。」
それを聞いた魔法使いは、少し迷った素振りを見せたが、ゴブリンを一瞥して、町へ向かっていった。
ゴブリンは、逃げ出す魔法使いを追おうとせず、一定の距離を保ち、近づいてこない。
私は魔法使いがいなくなったことを確認して、アイテムボックスから棒を取り出す。
私は彼に護身用として棒の扱いを叩き込まれている。
敵わないと分かっているが、それでも一撃くらい入れて見せる。
距離を詰め、心臓を狙って突く。
容易く避けられ、ハルバートの石突きで喉を狙われる。
避けられることも反撃を受けることも分かっていたため、それを避けて力の限り棒を振る。
狙うのは頭ではなく胴体。
頭は首を動かすだけで避けることが出来るため、胴体を狙うことを教えられた。
ゴブリンは喉を狙っていたため、重心が前になっており、避けることができない。
確実に当たると思ったその一撃を、ゴブリンは手で受け止めた。
「な!」
驚いて身体が止まってしまい、その隙に棒を引っ張られ、体勢を崩してしまう。
そのまま、待ち構えていた石突きに自分からぶつかる形で鳩尾を突かれる。
「相変わらずだな。クソボケメガネ。」
気を失う直前に、懐かしい悪態がつかれた。




