新たなる戦士
ギルドの戦士になるため、ムラサメはギルドの戦士、ゴリマーチョと戦うことになった。霧を作り出すスキル、<クリエイトファントム>を使うゴリマーチョだったが、ムラサメは<イビルアイ>を使い、ゴリマーチョに勝利することができた。
戦いが終わった後、ムラサメはギルドの戦士になるための手続きを終え、リミスに近付いた。
「リミスせんぱーい!」
「誰が先輩よ!」
リミスは叫び声を上げながら、笑みを浮かべて近付いてくるムラサメを睨んだ。ムラサメは脅えることなく、笑いながら口を開いた。
「だってホントのことじゃねーか。リミスは俺にとっては頼れるパイセンだからなー」
「パイセンって言うのは止めなさい。それよりも、どうしても気になるのよ」
「何が?」
「ゴリマーチョが自分で自分を殴ったことよ」
「あー、そのことね」
ムラサメは自分の目を指差しながら答えた。
「俺のスキル、<イビルアイ>のおかげさ」
「あんたのスキル? 何かやったの?」
「催眠であいつを操ったんだよ。力を込めて、自分の顔面を殴るようにって」
「それで……」
納得した様子で、リミスは言葉を返した。そんな中、ロマクが手を上げてリミスに近付いた。
「リミス。今いいかい?」
「暇に見える?」
「僕にはそう見える。ウターンの隣町に凶暴なモンスターが住み着いて、そいつの討伐依頼を受けたんだ。よかったら、一緒に来てくれないかな?」
「嫌よ。これからこいつと依頼を受けるんだから」
と言って、リミスはムラサメの手を取って歩き始めた。いきなり手を握られ、歩き出したせいでムラサメは少し驚いていた。
「おいおい、いいのかよ。あのむっつり君、キョトンとした顔をしてたぜ」
「いいのよ。あいつ、何かと言って私と一緒に依頼を受けようとするの。はっきり言ってしつこいのよねー」
「ストーカーもどきか。人を助ける立派な仕事をしてるっつーのに、何考えてんだか」
呆れた様子のムラサメはこう言ったが、リミスはムラサメにこう言った。
「あんたもあいつと同類よ。スケベ」
「あんな奴と一緒にするなよ。俺は女好きだけど、ストーカーは絶対にしない。相手の子に彼氏がいたら、俺はちょっかいしないっつーの」
「どうだか」
リミスはそっぽを向きながら、こう答えた。
リミスに連れられたムラサメは、ギルドのロビーにいた。
「これから依頼を受けるわ。やり方は簡単。カウンターで話をするか、あそこの掲示板を見て、自分でできそうな依頼を探すだけ」
「そんな簡単でいいのか。へー」
ムラサメはそう言いながら、カウンターに近付いた。受付をしている美人がいる列にムラサメは並んだが、すぐにリミスがムラサメを捕まえ、掲示板の前に連れて行った。
「すぐに依頼を受けたいんだから、こっちの方が手っ取り早い!」
「へーい」
気の抜けた返事をしたムラサメは、掲示板に載っている依頼に目を通した。だが、途中でリミスが掲示板に張られてある紙をはがした。
「とりあえず、最初だから一番楽そうな依頼を受けるわ」
「どんな内容だ?」
「ゴブリン討伐。あいつらは群れで動くけど、結構弱いからあんたみたいな戦いに慣れてない奴でも、普通にできると思うわ」
「雑魚が相手かー」
「相手は雑魚だけど、あんたはど素人。私みたいに強くなりたければ、言うことを聞くことね」
リミスはそう言うと、ムラサメを連れて空いているカウンターへ向かい、依頼の手続きを行った。
ウターンの町の外に出たムラサメとリミスは、望遠鏡で周囲を見回していた。
「とにかく、どこからゴブリンが現れるか分からないから、常に注意すること」
「分かった」
そう答えたムラサメだったが、望遠鏡の向きはリミスの胸の方を向いていた。視線に気付いたリミスはすぐにムラサメに近付き、ムラサメの脳天にチョップを入れた。
「ふざけんじゃないわよ! 人が親切心でいろいろと教えてやってんのに!」
「悪い悪い。でも、望遠鏡がなくても状況は分かる」
と言って、ムラサメは<イビルアイ>を発動した。
「こっから北東一キロ先、そこにある草むらの中にゴブリンの群れが隠れている」
「<イビルアイ>ってスキル、そこまで分かるの?」
「ああ。だけど、遠くの相手だと見られる情報が少ない。あまり期待しないでくれ」
「いるってことが分かれば十分。先手を取るわよ」
と言って、リミスは魔力を開放して走り始めた。ムラサメはその後を追うように、急いで走り始めた。追いついたムラサメは、あることを想ってこう聞いた。
「なぁ、どうして俺をそんなに気にかけるんだ?」
「変だからよ。あんたみたいな変わった転生者、力がある私が見ていないといけないでしょ?」
「責任感が強いってか。大丈夫だ。俺はエッチなことは好きだが、曲がったことは大っ嫌いだからな」
「あっそう。でも、あんたみたいなスケベは女の子に何するか分からないわね」
「ちったー信頼してくれよ。おっと、そろそろゴブリンの隠れ場に近いぜ」
ムラサメの言葉を聞いたリミスは、すぐに近くの岩の後ろに隠れた。合流したムラサメは、これからゴブリンとの戦いだと思い、緊張していた。
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